CD「Beyond Words」WALTER RODRIGUES, JR――からっと、明るく前向きに
YouTubeで見つけたので、この人のことをネットで調べてみた。ブラジルのサンパウロ出身のジャズギタリストで、父親が牧師という以上のことはかわからなかった。
「My Favorite Hymns Vol.1」という全曲賛美歌・聖歌のギター・ソロ・アルバムを出しているのだが、こちらはすぐには入手できなかったので、前作の「Beyond Words」を取り上げる。こちらにも「Psalm 150」「Amazing Grace」といった信仰的なタイトルも並んでいる。
サンバ、ボサノバ、ゴスペルを聴いて育ったというWALTER RODRIGUES, JRらしい、ブラジリアン・ジャズのアルバム。ラテンパーカッションや、サックス、フルートなどが入ったラテン・バンドサウンドで、からっとした明るさが心地よい。かつての、エイブラハム・ラボリエルらのKOINONIAなどにも共通するラテンの楽天的、開放的なサウンドだ。最後の「Amazing Grace」はギター・ソロ。この曲は日本では一般的に本田美奈子の歌が有名だが、この人の演奏には、そのようなしっとりとしたのとは違う、ラテン的な明るさがある。後半に多いスローテンポの曲でも、湿り気のない、からっとした明るさが特徴だ。気持ちが軽くなり「何とかなるさ」と思えてくる。
能天気とさえ思えなくもない明るさなのだが、Jazzとして、しっかりインプロビゼーションがあって、知的さも兼ね備えている。
このアルバムを聴いていて、知人の女性を思い出した。介護事業を始めて多額の借金があっても、明るく「神さまがいるから、何とかなるわよ!」と本当に明るく受け止めている。かつて交通事故にあったりしたときも、全く変わらず同様な様子だったので、本当にそう思っているんだなと思う。信仰があれば誰でもそうだというわけでは決してないが、信仰にはそういう一面もあるのだろうと思う。信じていればすべてうまくいくわけでないのが現実。それでも、「神さまがいるから大丈夫」という楽天さも、信仰のもう一方の面だろう。WALTER RODRIGUES, JRの明るい演奏は、そんな、信仰のいい意味での楽天的な面を思いおこさせられる。
前向きな気持ちにさせてくれるアルバムだ。 【柳 聖生】
YouTubeのチャンネル:http://www.youtube.com/user/sevensharpeleven