発売元:いのちのことば社ライフ・クリエイション、全7曲発、2,100円税込
発売元:いのちのことば社ライフ・クリエイション、全7曲発、2,100円税込

アーティストは自身の分身ともいえる作品を送り出し、どこか心に響いたさまざまな老若男女の人たちに支えられていく。そんな感謝を音楽活動10周年記念として2010年11月にリリースされたベストアルバム「Misa’s Song Book」。そこでは「レース」「一日一生」の新譜のほか数曲を再収録して17曲にまとめ上げた。

前作のベストアルバムから1年後の昨年クリスマスにリリースされた「Live for someone」。10年のけじめからの新たな一歩。何か変わった。幾度か聴きながら最初に感じさせられるのは、歌詞から伝わってくる’温もりの深さ’か。これまでの楽曲に込められてきた、詞の背後にある大きな存在を感じさせながらも身近な言葉を紡ぎ、織りこめられる日常性と空の表情。’等身大のゴスペルシンガー’とか’祈りを捧げるシンガー’と評されるゆえんだろう。

その身近さに’温もり’という心のつながりを、より一層感じさせられる。その兆しは、08年にリリースされた「その涙が渇くとき」の楽曲に輝いていたもの。「一日一生」(Misa’s Song Book収録)を経て一つになった感がある。

アルバムのタイトル「Live for someone」(誰かのために生きる)想いは、最初の楽曲「Song for you」の’いつまでもそばにいると言っても 24時間はそばにいられない/だから せめて この歌を贈るよ’の一節からも伝わってくる。「夢のカケラ集めて」「タイム」などのアップテンポな楽曲の後に、「あいにいくよ」から「祈っています」へのつながりは、’祈り’という静謐さと心の労わりをもって寄り添える力の源泉を聴かせてくれる。いわば、真珠の指輪の珠玉な輝き。
「あいに行くよ」は、「Misa’s Song Book」の発売ライブではバンドヴァージョンで演奏し、’こんなに小さな僕だけど 君のために何かできるかな/終わらない争いの海へ 会いにいくよ あいにいくよ’と、祈りの’熱さ’を感じさせられた。それが、このアルバムでは、ピアノとストリングスで’篤い’祈りにしっとり仕上げている。そして「祈っています」で’眠れない午前3時 君は今日も戦ってる/約束を果たしたいよ もう一度会いにゆくよ’と、真夜中の不断の祈りへと誘う。

楽曲を愛され、支えられてきた’歌いびと’は、いま’歌うことも、生きることも、誰かのために捧げたい’と願う。昨年の東日本大震災で愛するものを突然失い、深く傷ついた被災地の人たちの所へ幾度も駆け寄り、傍に寄り添わずにいられなかった想いが、このアルバムの7曲(Song for you/夢のカケラ集めて/タイム/Deep/あいにいくよ/祈っています/夜のレインボー)に込められている。 【遠山清一】