事件現場を確かめに行く映像作家のジスン(中央手前)とウヒョク教授(左)、ギョンシク刑事。 ©2011 Noori Pictures
事件現場を確かめに行く映像作家のジスン(中央手前)とウヒョク教授(左)、ギョンシク刑事。 ©2011 Noori Pictures

痛ましい殺人事件が、未解決・時効成立していることに、多くの人はやりきれない思いを心のどこかに貼り付けられたような感覚を覚えさせられる。日本では、1995年(平成7年)4月27日以降、国内で発生した未解決の事件のうち、法定刑の最高が死刑にあたる犯罪(殺人罪・強盗殺人罪など)の時効成立を取り止められた。長期の専属捜査は継続され、容疑者発見・逮捕への道が開かれている。それは、ほとんど顧みられなかった被害者遺族の痛みや心情に対するある種の社会的な受け止め方でもあるのだろう。そして、正義はいつか現実として表れてほしいという切なく苦しい願いでもある。

韓国には、時効はいまも存在している。’三大迷宮入り事件’として知られる事件の一つ「カエル少年失踪殺人事件」をモチーフに作られたこのサスペンスには、そのような遺族の悲嘆と苦しみ、たとい時効後に真犯人が現れても逮捕されることのない憤りがにじみ出ている。

1991年3月26日、統一地方選挙の日。大邱(テグ)近郊・臥竜山(トアプ山)のある麓の村。赤い布をマント代わりに着けて、裾が地面に触ると自分は死んでしまうと言って走り続けて遊ぶ小学校低学年のジョンホ。ジョンホら同じ小学校の男子生徒ら5人が、「カエルを捕まえる」と言ってトアプ山のほうへ行き、行方不明になる事件が発生した。

夕方から捜索が始まり、次第に規模は大きくなりのべ30万人を動員したが見つからなかった。数年がたった。視聴率と作品の評価を高めるためならなにもいとわないMBS放送のカン・ジスン(パク・ヨンウ)が、受賞作品にヤラセ撮影の嫌疑がかかり大邱支局へ飛ばされてきた。事件を暴いて特ダネをスクープしようとするジスンは、今も子どもたちの行方を必死になって捜しまわるパク・ギョンシク刑事(ソン・ドンイル)と親しくなる。ある日、 心理学的に事件を分析し推理するファン・ウヒョク教授(リュ・スンリョン)の記事を読み、飛びついていくジスン。ついには、ジョンホの父親(ソン・ジル)が犯人と疑われ、 子どもたちの親たちをも巻き込みながら、思わぬ方向へと展開していく。。。

©2011 Noori Pictures
©2011 Noori Pictures

2002年9月に子どもたちの遺体が発見されたこの事件は、06年3月25日に時効が成立している。実際に起きた出来事を丹念に追いながら、遺族である親たちの苦しい心情が静かに丁寧に描かれていく前半。後半は一転して犯人像を執拗に追い掛け、追いつめていくスギョンの推理とジャーナリスト魂がサスペンスフルに展開する。
映画は娯楽だが、片田舎の村につつましく暮らす子どもと親たちの命、人生をもてあそぶかのような犯罪に対する正義感を存分に表現するイ・ギュマン監督。社会的な視点を取り扱う韓国映画の醍醐味がここにもあふれている。  【遠山清一】

監督:イ・ギュマン 2011年/韓国映画/132分/ 配給:コムストック・グループ 2012年3月24日(土)よりシネマート六本木、4月28日(土)よりシネマート心斎橋にてロードショー。

公式サイト:http://www.cinemart.co.jp/theater/special/kaerusyounen/