インタビュー:神山みさ(ゴスペルフォークシンガー)――’自分のもの’の執着を手放したとき開かれたメジャーデビュー

プロフィール:栃木県宇都宮市出身。牧師家庭に生まれ育ち。小さい頃から讃美歌に親しみながら育つ。高校時代はバンドでベースと作詞作曲を担当。高校卒業後に結成したフォークデュオ’lot’で「1998年モスバーガーX’mas song」コンテストに、自作の「クリスマスソング」で出場しグランプリを獲得。今回のニューアルバム「月の雫」には新録で収録されている。全12曲の編曲・プロデュースは岩本正樹が担当した。©クリスチャン新聞

ゴスペルフォークシンガーの神山みさが、10月16日リリースのアルバムCD「月の雫」(全12曲、2,500円税込、ウェブクウ発売=品番WKCL-3055=)でメジャーデビューする。高橋真梨子などに作曲・編曲を数多く提供している岩本正樹のプロデュースをきっかけにして思わぬ展開に。10月19日には、東京・汐留のBlue Moodで発売記念ライブが開かれる。
公式サイト http://kamiyamamisa.com/

メジャーデビュー
アルバム「月の雫」

ゴスペルフォーク系シンガーソングライター歴15年目にしてメジャーデビューを果たした。メジャーデビューとは、簡単に言えば’大手流通機構を経て全国のCD店などで販売できる正式なレコード会社から作品が発売される’ということ。iTunes Storeなど大手ネット配信サービスからもダウンロード購入しやすくなった。
そのメジャーデビューCD「月の雫」の発売記念ライブを数週後に控えての取材。「ライブ直前で、こんなに平安でいられるのはほとんど初めてかな」と、新たに所属した事務所オフィス瀬戸のスタッフワークやバンドマスターも務める岩本さんら’プロ’らしい手際の良さに感嘆と感謝の言葉しきり。
高校卒業後にモスバーガーのクリスマスソングのコンテストで優勝したのがきっかけで、インディーズ系の事務所に所属してスタートした。’04年にテレビ朝日系「ストリートファイターズ」に出演し人気投票全国1位も獲得したが、それでもメジャーデビューへの道はなかなか開かれなかった。
シンガーソングライターとして作ってきたたくさんの楽曲。アーティストの仲間とチームを組んで編曲し、ミニアルバムなどに仕上げてきた宝物のような楽曲。それでも、前に向かってチャレンジしていきたいというアーティスト気質が、「今までとは違う方向転換をしてみたいなぁ」という思いを沸立たせた。
「東日本大震災が起きてから、押し出されるようにして東北へがむしゃらに行きました。ライブハウスからのお誘いもお断りしているうちに、お声がかからなくなってきて、ん!? 私はどういう方向で音楽をやろうとしているのかなぁと…」(笑)。それでも、東北の被災地を訪ねているときは「大切な時間を共有できた、迷いはどこかへ飛んでいた」。だが、さすがに「今年は、去年できなかったことをやろう!」と、CDづくりに取り掛かった。

メジャーデビューアルバム「月の雫」(全12曲、2,500円税込、ユニバーサルジャパン販売、ウェブクウ発売=品番WKCL-3055=、いのちのことば社ライフ・クリエイション取扱い)

 

出会いの輪が
新曲作りにも

今回のアルバム全曲を編曲しプロデュースした岩本さんとの出会いは、’10年のCD「God Bless You」のvarious artistsヴァージョンに参加したとき。岩本さんは編曲を担当し、妻の国分友里恵さんもアーティストとしていっしょに参加していた。
その後、日韓のクリスチャンアーティストらが協働で東日本大震災復興支援アルバムを制作するのに参加した時、岩本さんが神山さんの曲「光」を編曲する準備が進められた。結果としてこの計画は実現できなかったが、「岩本さんから『イメージはできているよ』、と聞いていたので、もったいないなぁ、形にしたいなぁ。でも、(アーティストとして)位置が違いすぎて、恐れ多いなぁ」(笑)。それでも、当たって砕けろ。今回、収録されている「光」と「戦場のクリスマス」の2曲を持って相談にいくと、編曲を引き受けてくれた。それだけでなく、「アルバムにしてみない?」と…。
キーボーディストで作曲家としてもミリオンセラーを持ち、高橋真梨子ら数多くのアーティストの楽曲を編曲している岩本さん。いわば、「方向転換した自分を見てみたい」と飛び込んできた神山さんに、「いままでのサウンドとは違うけれど、大丈夫?」と、アーティストとしての気遣いも見せたという。神山さんは、事務所所属の話も「岩本さんの紹介だからというつながりだけではなく。私の歌唱と声を評価していただけたことがとても感謝で、信頼してアルバムつくりに取り組めました」。
今回のアルバムには、復興支援活動で出会った韓国のアーティストの曲に作詞した「Nukumori」やイスラエル大使館’ゆるキャラ’キャンペーの最終予選で落選した者同士で制作したキャクター絵本の主題歌「Loose Planet」など、普段なら出会えない人たちとの出会いから生まれた新しい楽曲も収録している。アルバムのタイトル曲になった「月の雫」は、8年ほど前に作った楽曲でライブでもよく歌ってきたがCD収録は今回初めて。ギター弾き語りでなく、ピアノのイントロから入る月の光のつつまれるような編曲は、’神さまの力で私を変えてください’というメッセージを印象深く聴く人の心に届けてくれる。
「私の身体を使って神さまを伝えていきたい」というのは、神山さんのアーティストとしての原点とも言えるポリシーだ。
だが、「人に頼って、人のせいにしないやり方で、音楽活動したい」という思いをインディーズ事務所も理解して’10年春に独立してからは、CDの自主制作、ワンマンライブも自分ですべて手はずを付けていた。今回、事務所所属の話がきたとき、一つのチャレンジは、自分でつくり自分で売っていく音楽活動をしているうち、「いつのまにか、自分のCDという思いが強くなっていた」。自分のCD1枚手放せない自分がいる。その執着から解き放たれて、「自分から手放せば神さまは自由に使ってくださる。’自分のもの’ではなく、神さまに手放していきたい」と、新たな一歩を踏み出した。
神さまに向けて手放せたニューアルバム「月の雫」、どう羽ばたいていくのか楽しみだ。 【遠山清一】

アルバム「月の雫」収録曲
1.光 2.You are special 3.戦場のクリスマス 4.あなたは生きて 5.Nukumori 6.悲しみのスクリーン 7.クリスマスソング 8.Loose Planet 9.Stay with me 10.ふるさとのうた 11.月の雫 12.Sleep in heavenly peace
(全12曲、2,500円税込、レーベル:ウェブクウ 品番WKCL-3055)