エイプス(類人猿)と人類の共存を願うシーザー(右)とマルコムなのだが… ©2014 Twentieth Century Fox

ピエール・ブールのSF小説『猿の惑星』を原作にシリーズ第1作「猿の惑星」が映画化されたのは1968年。本作は、そのプリクエル(前日譚)として2011年に製作された「猿の惑星:創世記」の続編。改良された新薬で知性を獲得したエイプス(類人猿)のシーザーたちが、「エイプスはエイプスを殺さない」を掟にコミュニティを築いている。

人類は自ら開発した悪性ウィルスが世界中に蔓延し滅びた。その10年後、エイプスのシーザー(アンディ・サーキス)は、天性のリーダーシップとたくましさでコミュニティを統率している。妻コーネリア(ジュディ・グリア)との間に青年期の息子ブルーアイズ(ニック・サーストンブルー)がいて、コーネリアは新しい生命を身ごもっている。

一方、人類は全滅してはいない。抗体を得たわずかな人々が生き残り、サンフランシスコの市街では、ドレイファス(ゲイリー・オールドマン)をリーダーにしてコミュニティをつくっていた。だが、燃料が残り少なくなり安定した電力を必要としていた。

森の奥の水力ダムの状態を調べに来たマルコム(ジェイソン・クラーク)たち。調査メンバーの一人カーヴァーが、ブルーアイズと友達の出現に驚き出会いがしらに友達を射殺。銃声を聞いて集まったマルコムたちは、多数のエイプスに取り囲まれる。いきりたつ勇者のコバ(トビー・ケベル)を抑えて、シーザーはマルコムたちを町へ追い返した。

シーザーが人間の言葉を理解し、しゃべったことにマルコムたちは驚愕し、町に帰るとドレイファスたちに報告。対応を考える間もなく、シーザーを先頭にしてエイプスの大群が町に押し寄せていた。シーザーは「人間と戦う気はない。だが、戦わねばならない時はいつでも戦う。人間はここ。山はエイプスの領域。二度と来るな!」と宣言して立ち去る。

動揺する人間。人間がエイプスを支配すべきだと考えるドレイファスは、武器庫の銃を手入れして戦闘態勢をとるよう命じる。だが、マルコムは、戦う前にダムの調査と修理できるよう交渉し、戦いより共存を主張する。まず、交渉のために森に入ったマルコムたち。だが、人間の実験のために体中傷つけられ苦しめられてきたコバは人間を信用していない。コバには、科学者ウィルに育てられ言語と信頼のコミュニケーションを訓練されたシーザーの考え方が受け入れられない。シーザーとコバの確執は、人間とエイプスの共存か戦いかの動向を大きく左右する。

エイプスのコミュニティを統率するシーザー ©2014 Twentieth Century Fox

前作「猿の惑星:創世記」は、人間の思い上がりと、その裏腹でもある恐怖心・敵がい心が引き起こす滅亡への悲劇が描かれていた。本作でも、その人間の罪性ともいえる視点は引き継がれている。シーザーとマルコムは、エイプスと人類の共存を望み、戦いを避ける努力を惜しまない。

だが、その願いと努力を押しのけるように、恐怖を武力で解決しようとする力の論理。こうした関係は、現代の世界の平和を防衛する考え方とも通じるのだろう。そして「エイプスはエイプスを殺さない」という高潔な掟を守ってきた’猿の惑星’にも、悲しい’夜明け(Dawn)’がしらんできた。原題(Dawn of the Planet of the Apes)の意味が、さまざまに響きあい語りかけている。 【遠山清一

監督:マット・リーブス 2014年/アメリカ/115分/2D・3D/原題:Dawn of the Planet of the Apes 配給:20世紀フォックス映画 2014年9月19日(金)よりTOHOシネマズ日劇ほか全国ロードショー。
公式サイト:http://www.foxmovies-jp.com/saruwaku-r/
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