ルームシェアしている男の子からも「27歳は若くない」と言われてしまうフランシスだが © Pine District, LLC.

なんとも瑞々しい、ウィットとユーモアに富んだ会話がおしゃれに飛び交っていく。それでいて、どこか何かが噛み合っていないフランシス。27歳という微妙な年頃の女性の生活感覚と心理を描きながら、不確かなようにみられる自分だが、大丈夫ありのままであってもいいのだという妙味な安心感が伝わってくる作品だ。

大学時代からの親友ソフィー(ミッキー・サムナー)とルームシェアしながらプロのモダンダンサーになるのをめざしている27歳のフランシス(グレタ・ガーウィグ)。ボーイフレンドから同棲しようと持ち掛けられるが、ソフィーとの契約を解消できないと告げて別れてきた。ところが、ソフィーは、フランシスになんの相談もせずに敷居の高いトライベッカへ引っ越すと言い出した。
しかたなく、シェアできるソフィーの友人レヴィンとベンジーの家に引っ越し、きままな暮らしを続ける。
ソフィーは彼氏パッチとの生活を真剣に考えているようだ。パッチが日本に転勤することになると、ソフィーもいっしょについて行ってしまう。一方のフランシスは、あてにしていたクリスマス公演の出演者に選ばれず、ギャラが入らなくなりシェアールームの分担金も支払えなくなる。しかも、所属事務所の責任者からは、研修生ではなく事務職でないと残れないと聞きたくもない話。なにごともうまくいかないフランシスは、傷心の思いを内に秘めてカルフォルニア州サクラメントの実家へ行き、しばし家族との暮らしに癒される。だが、やはりニューヨークへと…。

ソフィー(左)との共同生活は毎日が自由気ままで楽しいが… © Pine District, LLC.

同い年のソフィーが、結婚相手を意識し出し真剣に自分の人生と結婚を考え行動し始めると、それまで楽しく共同生活してきたフランシスは取り残され、大人になり切れていない自分に嫌でも気づかされる。それでも、フランシスは半人前の生き方を続け夢を追いかけるのか、それとも…。

フランシスのピュアな思いと行動が、デヴィッド・ボーイのダンスナンバー「MODERN LOVE」やポール・マッカートニーの「BLUE SWAY」など10数曲の80年代ポップス音楽に乗ってかろやかに青春を走っていく。現代のニューヨークでの物語であるのに、なんとモノクロームの画面がフィットしていることか。観る人の年代やカラーがそこに映し出されているようで美しい。 【遠山清一】

監督:ノア・バームバック 2012年/アメリカ/86分/モノクローム/原題:Frances Ha 配給:エスパース・サロウ 2014年9月13日(土)よりユーロスペースほか全国順次公開。
公式サイト:http://francesha-movie.net/
Facebook:https://www.facebook.com/francesha?fref=ts

2014年ゴールデン・グローブ賞コメディ/ミュージカル部門・主演女優賞(グレタ・ガーウィグ)ノミネート作品。