[全文クリスマス メッセージ ]光は闇の中に輝いている 遠藤勝信 東京女子大学教授 聖書 新改訳2017翻訳編集担当理事
寒さ、不安、恐れの中
心躍らせる息子の姿
クリスマスを翌日に控えたある冬の日、妻と私は当時3歳になる息子を連れてボストン市街に買い物に出かけました。その日はとても寒く、気温はマイナス20度まで下がっていました。天気予報では夜から大雪になるとの報道で、私たちは出来るだけ早く買い物を済ませて家路に着く予定でした。
ところがボストンの街中、交差点に差し掛かったところで車のエンジンが止まってしまいました。突然に動かなくなったポンコツ車目がけて、容赦なく、横から後ろからクラクションが鳴らされました。慌てて近くのガソリンスタンドに飛び込み、数名の店員にチップを握らせてどうにか路肩に車を移動させました。公衆電話から呼んだ牽引トラックが到着する頃にはすでに夕方となり、予報通り雪もちらつきはじめました。巨大なレッカー車に引かれ、連れて行かれた先は人里離れた怪しげなガレージでした。寒い待合室に何時間も待たされたあげく、いかつい修理工がやってきて、「修理にだいぶ金がかかる」と脅されました。そこは辺鄙なところで、電車もバスも通っていませんでした。20年も前のことですから携帯電話などありません。雪はますます本降りとなり、冬の寒さが身に染みました。
深く肩を落とし、不安と恐れで心をいっぱいにしたときでした。ふと、どこかにとても暖かな光のようなものを感じました。その光の出所をたどって行くと、息子の光り輝く笑顔に行き着きました。なぜ彼がそんなに輝いていたのかと言うと、絵本で見てきた憧れのレッカー車が突然目の前に表れ、しかもその助手席に座る特権にあずかったからでした。そして、どうもこれからイエローキャブにも乗り、電車とバスを乗り継いで行くようなのです。突然に開かれた夢のような未来にひとり心躍らせていたのです。
私と妻は希望に満ちあふれた息子の輝きに救われました。寒さと、恐れと、不安とで、凍死寸前であった私たちの心は少年の笑顔に温められ、溶かされて行ったのです。
「いろいろ考えると不安もあるけれど、今夜ばかりはこの子の希望の光に委ねることにしよう」
妻もその提案に大きくうなづきました。いったんそう決心すると、先ほどまでの不安はうそのようにかき消され、むしろ何だか幸せな気持ちにもなりました。冷静さも取り戻し、ひとつひとつの問題と課題を解決して行くことができました。
誰かが〈希望の光〉に
2017年の歩みを終え、新しい年を迎えようとしているこの時、残念ながら私たちの目に耳に飛び込んでくることは、おおかた残念なニュースばかりです。
世界情勢は混沌とし、各国のリーダーたちはいたずらに緊張をあおっているかのようです。政治不信はますます募ります。〈ポスト真実〉という新語が人類の諦めと嘆息のうちに既成事実とならないことを祈ります。そのような意味で、この世はその暗さを増し、寒くなるばかりです。
しかし、そこで、皆が暗い思いに沈んでいたのでは良い道筋を見い出して行くことはできません。誰かが暗闇の中に〈希望の光〉をしっかりと見つめ、そこに〈在り続ける〉ことの意義深さを覚えます。
神様はクリスマスの夜にイエス・キリストを通して〈希望の光〉を輝かせてくださいました。この時、もう一度、それがどれほど尊く、動かぬ希望であるのかを聖書のみことばに確認したいと思います。
「光は闇の中に輝いている」(ヨハネ1・5、聖書 新改訳2017)と聖書は語ります。暗闇は光を覆い尽くすことなどできず、神様が渾身のわざとして生み出された希望の光は決して失望に終わることがありません。その事実を携えて、私たちひとりひとりが暗き世にあって〈希望の光〉となり、周りを温め、また励ます存在となって行きたいと願います。
メリークリスマス!
クリスチャン新聞12月24・31日合併号巻頭メッセージから。
《週刊『クリスチャン新聞』-12月24・31日号ヘッドライン》
*本紙とは見出しの異なる場合があります*
= 1 面 =
★メッセージ「光は闇の中に輝いている」 遠藤 勝信(東京女子大学教授)
★熊本県益城町仮設住宅でキャンドルイベント--小さくても心の癒しに
= 2 面 ニュース=
★アジアンアクセス50年--教会増殖とリーダー育成に傾注
★ラグビーW杯、東京五輪に向け準備活動
--日本国際スポーツパートナーシップ(JiSP)
★故郷の家東京 開設1周年--金星煥チャリティーコンサート開催
★米軍ヘリ部品落下--教会附属保育園嘆願 バプ連理事会抗議
★<落ち穂>安藤忠雄氏の教会建築
= 3 面 =
★良き訪れをたずさえて~地域の福祉を担う[40] 記・井上貴詞
★日基教団戦責告白から50年 その意義を再確認
★久米小百合、本田路津子、Kishiko レジェンド3人一夜限りコンサート
★<情報クリップ>催し情報・放送伝道ハイライトほか
= 4・5面 回顧と展望 =
= 6・7面 写真で見るこの1年 =
= 8・9面 日本福音主義神学会全国研究会議 =
= 10 面 関西だより =
★親友2人で力合わせて開拓--西宮・ゴスペルチャーチみことば教会
★宣教と福祉のビジョン継承--淀川栄光教会で牧師按手式
★「光野さん、ありがとう」--OCCホールでお別れの会
★救世軍ニューヨーク・スタッフ・バンド大阪公演
--世界最高峰のブラスの響き
= 11 面 =
★「インデジタス」来日(下)--現代の日本の若者に届く方法模索
★N・T・ライトの神学とは[89] 第6章 イスラエル
= 12 面 年末年始の映画特集 =
★「ヒトラーに屈しなかった国王」エリック・ポッペ監督に聞く
★「ユダヤ人を救った動物園-アントニーナが愛した命-」
★「5パーセントの奇跡~嘘から始まる素敵な人生~」
★「ライオンは今夜死ぬ」
= 13~15面 長崎特集 =
★映画「沈黙」の舞台を訪ねて
★二十六聖人記念館前館長 レンゾ神父講演
★ルーテル、カトリックが共同記念礼拝
--「迫害」「被爆」の地で一緒に宗教改革500年記
= 16~17 面 ICANノーベル平和賞受賞を受けて =
★シャロームの実現を求めて 西南学院宗教局長・西南学院大学神学部
教授 松見 俊
★被爆経験者の声 寄稿・「希望の光があるから」 天野文子さん
★被爆経験者の声 「人から人へ」出会いが変化に 近藤紘子さん
= 18・19 面 クリスマス特集 =
★こころがポッとなる空間を--キャンドル作家 丹 裕子さん
★群馬県沼田市でひと足早く
--猿ヶ京キリスト教会 ゴスペルクリスマス
★「万国橋・クリスマス祝展」実現--教派超えて昼餐会で祝い
★「スーパーブック」クリスマス放送に向けプレ集会
★「教会で過ごすクリスマス」--造園家 三井宣太郎さん
= 20 面 =
★福島・川内村の人々に寄り添い続けて
--瀬谷キリスト教会 NPO法人せやふれあいの庭
★韓国・浦項でM5・4の地震
--九キ災視察チーム被災教会慰問
= 21 面 日本CGNTV SNS企画/クリスチャン新聞でこの1年を振り
返る =
★久遠キリスト教会牧師 三浦 真信
★東京キリスト宣教教会牧師 福澤 牧人
★ダイヤモンド電気代表取締役 金山 梨花
= 22・23 面 読書特集 =
★読書特集1:時代に迫る想像力ー世界、日本の話題作から
「葬られた」国家・民族・家族の「記憶」 カズオ・イシグロ『忘れられた巨人』
評・正木うらら=神戸ルーテル神学校・関西聖書神学校ギリシア語講師
「全体主義」暴く“良き緊張関係”を 中村文則『R帝国』
評・青木義紀=日本同盟基督教団和泉福音教会牧師、東京基督教大学 非常勤講師
★読書特集2:歴史・宗教改革、クリスマス絵本、霊想・デボーション、文学
= 24 面 ひと◇証し =
★「いなかったお父さん見つかった」
--歌手 ギタリスト アントニオ古賀さん
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