東日本大震災から10年を迎えます。この災害を教会、個人はどのように迎え、痛みを覚え、祈り、考え、行動したか。

いのちのことば社で刊行された手記について、クリスチャン新聞の当時の記事から振り返ります。

 

「エマオ エマオ こころがあつくなる…おおきなしごとは できないけれど ちいさなことから コツコツと…」
これは日本基督教団東北教区被災者支援センターとなった同教区センター・エマオに向けて書かれた応援ソング「エマオのおまえ」(インターネット上で子どもたちが元気に歌う動画を見つけられる)の歌詞の一部だ。本書は震災直後からエマオでの支援に奔走した著者による支援活動と心の軌跡を著す。

日本基督教団学生・青年センター「学生キリスト教友愛会(SCF)」の牧師。自身の成長の経験も踏まえて教育の視点で支援を考えるのが本書の特徴だ。震災をただ失った経験だけに留めず、「信仰者として、人としての『再生・連帯・教育』をする」機会としてとらえる。

18年前の阪神大震災を経験していた。当時関西で大学生だった著者は震災後にボランティアをして、「多くを学び、感じ、『成長』できたと思っていた。良い友だちに会い、ボランティア立ち上げに立ち会った」。東日本大震災後はエマオでボランティアのコーディネートをすることになる。

現場では、傷ついた人々と熱心なワーカー(ボランティア)の間ですれ違い、傷つき合うこともある。ワーカーのフォローのために、ワーク(支援)の後にはシェアリングの時間があり、学んだことを分かち合う。傷ついた涙や喜びの報告に「こころがあつくなる」のだ。

重視したのは、「スローワーク」だ。巨大な機械で何十トンもの瓦礫を動かす合理的で大規模の支援ではなく、「ちいさなことからコツコツと」し、被災した人々と寄り添う時間を持つ。

本書で支援者、牧師として被災地と向き合った著者の祈りと試行錯誤の過程を追体験できるだろう。

だが本書は終わった出来事の記念誌ではない。現在もなおエマオの支援活動は続く。「『今だから』かかわってほしい」「今こそ、静的な継続的支援が求められている」と言う。

多くの被災地支援の働きの報告とともに、本書を手にし、これからの支援への合流に備えたい。

2013年3月3日号から

『希望をつむぐ 被災者支援センター「エマオ」の取り組み』
野田沢
発売日:2012/12/25

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