日韓のキリスト教関係史などを専門とする徐正敏(ソ・ジョンミン)氏(明治学院大学キリスト教研究所長)によるエッセイ集『東京からの通信』=写真上=が、かんよう出版から昨年12月に刊行された。

 

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タイトルは韓国民主化運動を日本に伝えた政治学者で、今年1月に逝去した池明観氏の著書『韓国からの通信』に由来する。徐氏のエッセイ集では、政治問題のみならず、交友関係や大学生活、幼少期や家族との思い出、東京での日常生活について、日韓両方を知る立場で書いている。

 

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同書の出版記念会が1月22日、オンラインで開催された。発起人に李省展(恵泉女子学園大学名誉教授)、大西晴樹(東北学院大学学長)、金丸裕一(立命館大学教授)、小檜山ルイ(東京女子大学教授)、嶋田彩司(明治学院大学教授)、飛田雄一(神戸学生青年センター理事長)、渡辺祐子(明治学院大学教授)の7氏が立ち、様々な研究者、関係者らが参加し、日韓の今後を語り合った。

特別ゲストで韓国語学研究者の野間秀樹氏(元東京外国語大学教授)は韓国語学とキリスト教の関係を述べ、徐氏の著書について、「人文学的思考形成、凛(りん)とした歴史思想がある。頭だけで書かれたのでなく、心と体、存在の深いところを打つ」と述べた。

李氏は「詩的な表現に富み、日常生活と学問のつながりが分かり、観察の目が鋭い」と評価した。また「最近の政治状況は、嫌韓、反日など二項対立となり、人間が持つ豊かな可能性、広がりが損なわれている。徐氏は、若い人たちと向き合い、今こそ人文学的思考が大切と訴えている」と述べた。

 

小檜山氏は、「徐氏は、学問のみならず歌や絵や木彫りなど多彩。小さいころの病気、苦しみの上に立った才能が光っている」と人柄に触れた。

金丸氏は本書を通して「徐氏のさらに前の先達を知った。日韓における苦難の現場どうしの交流の背景も分かった」と話した。

徐氏と同僚の渡辺氏は、「多様性、少数者への配慮がキャンパスに反映された」と話した。「コンテキストを大事にする歴史観から影響を受けた。日本基督教団の戦争責任告白の歴史的意味について励まされた。しかし、それに日本の教会は甘えずしっかり向き合いたい」と述べた。

嶋田氏は、「個人が、国家、民族といった大きなカテゴリ―で書き消される時代だが、徐氏には、個人が自由に生きる権利への強い信念がある」と語った。

徐氏が日本留学した直後から交流がある飛田氏は思い出とともに、アジアキリスト教交流史研究会のかかわりを話した。

 

池明観氏の遺志受けつぎ

写真=徐正敏氏

諸氏に応答して徐氏は、「日韓の境界線に生きている者としての生活・実存を伝えることが、使命ではないか」とエッセイを書いた動機を語った。

「マイノリティーこそ、両方を知っているという意味で広い存在です」
池氏が自身の活動を「日韓の友情の上に乗っただけ」と話したエピソードを話し、「どんな厳しい状況でもこの友情の流れはある。私もこの上に小さな船として乗っていることを皆さんに伝えたい」と結んだ。

最後に大西氏は、池氏との長年の交友を紹介しつつ、自身が明治学院大学学長時代に、徐氏を招いた際、「池先生のような役割を果たしてほしい」と話したと明かした。「徐氏は、弱者、民衆の視点で権威に対する自由を求める。日韓の架け橋として私たちの目を覚ましてくれる」と語った。【高橋良知】