河野 優 石神井福音教会協力教師、前日本同盟基督教団法人事務主事

宗教法人を設立するためには、宗教法人法の規定に沿って「規則(法人規則)」を作成し、「所轄庁の認証」(「認可」ではない)を受け、法務局で設立登記をすることが必要である。しかし、多くの教会では法人の有無にかかわらず、規則、規約、教憲、教規、政治規準などといった「教会の規則」をすでにもっているのではないかと思う。
その場合、法人設立に伴い、すでに持っている「教会の規則」が「法人規則」に切り替わると思われるかもしれないが、そうではない。宗教法人をもつ教会は、基本的に「教会の規則」と「法人規則」という二つの規則をもって活動をすることになる。なぜ宗教法人をもつ教会は二つの規則が必要なのか。それを理解するためには、戦時中に施行された宗教団体法と、戦後に施行された宗教法人法の規定とを比較することが有益であろう。
宗教団体法において宗教団体を設立するためには、教義の内容やその宣教、儀式、教職者の任免などを含めた規則を作成し、「主務大臣の認可」を受けなければならないことが定められていた。さらに、公益を害する行為を行ったときには、主務大臣は当該宗教団体や教職者の活動停止、団体の認可取り消し、教職者の改任などを命じることができると規定されていた。このことは、国家が宗教団体を統制し、信仰の本質に関わる事柄に深く介入できることを示している。事実、戦時下にあって教会を含めた宗教団体は国家の統制下に置かれ、教会は戦争協力という大きな罪を犯してしまった。

 

教会を世の法の下に置かないために

このような歴史の過ちを繰り返さないために、宗教法人法は作られている。宗教団体を設立するのは自由で、行政への届出も無用である。宗教団体が宗教法人を設立するには、冒頭の手続きを要する。法人規則に定めるべき内容は、宗教法人法第12条に列挙されているが、そこにはかつての宗教団体法にあったような宗教的事柄は含まれていない。あくまで、財産管理や法人としての事業を運営するために必要な事項に限られている、、、、、

クリスチャン新聞2022年10月2日号掲載記事)