「キリストのからだとして、日本もアジアの教会の一部」 アジア2022と参加者の声① 2022年11月13日号
韓国の賛美、絵画と日本舞踊のコラボレーション
迫害は最後の物語ではない
アジア福音同盟(AEA)、アジア・ローザンヌ委員会、アジア神学協議会共催の「アジア2022」(10月30日号、11月6日号で一部既報)では、多様なテーマの聖書講解や主題講演があった。全体の中で、苦難や迫害に言及する場面も多くあった。
2日目朝の聖書講解1では、パトリック・ファン氏(OMFインターナショナル総裁)が「迫害が教会を殺すのではなく、福音の妥協が教会を殺す」と警戒し、神が共にいる希望を語り励ました。
3日目は主題講演3で「教会と国家」について。宗教と政治が専門のシンガポールの国際政治学者ジョセフ・リャオ氏が講演し、国家と宗教の緊張関係、権力の在り方、教会と政治、多元主義や他宗教とのかかわりなどを議論した。
主題講演4では困難の中にある教会について、イラン、ネパールの教会から報告があった。イランでは1979年時点でのクリスチャン人口は500人だった。制限や迫害の状況下にありつつ、現在ではクリスチャンが100万人以上いると言われる。「迫害が最後の物語ではない。迫害の中でも主の主権が明らかにされる。宣教が一部の人ではなく、すべての教会メンバーでなされなければならない状況になる。教会の増加により、信徒の育成も急務」といった報告があった。
ネパールからは、福音の希望と宣教の必要が語られるとともに、ヒンドゥー教から他宗教への改宗を取り締まる「改宗禁止法」について説明された。このような状況の中で、祈りや個人、親族とのかかわり、メディアやビジネスの働きが進められ、忍耐とともに、行政や地域社会と良好な関係を築く努力がされている。
福音をどうアジアの文脈に
ヒップホップの表現に会場がわいた
マレーシアの賛美伴奏とカンボジアの代表(右)
高見澤栄子さん(前トーチトリニティ神学大学院宣教教授)は「アジア2022」プログラム委員「礼拝と文化」担当として、アジアの文化を取り入れる工夫をした。開会式は、参加国の国旗と景色の歓迎動画で始まり、大会への期待感を生み出した。
続いて開催国、タイの伝統舞踊が披露され、アジアの宗教状況を映す「Pray for Asia」が上映され、大会関係者らが太鼓で開会を宣言。午前の賛美はマレーシアのバンドが演奏しつつ、各日程ごとにカンボジア、インド、モンゴルの代表がリードした。高見澤さんは「カンボジアやモンゴルなど教会が若い地域でも人材が育っている状況がうかがえた」と言う。中国少数民族の賛美やスリランカの賛美、タイで活躍する韓国人グループ「HisHop」によるヒップホップの賛美と証しにも会場はわいた。最終夜には、韓国の賛美「使命(Mission)」に合わせて、宣教師の新門広美さんが日本舞踊を披露すると、司会者が韓日の関係に言及し、キリストにあって可能なことと紹介した。
閉会式の最後は、アジア各国語で賛美歌「The Blessing」を歌う映像が公開された。会衆の中にはスクリーンを見つめながら涙を拭く姿もあった。(YouTube配信https://www.youtube.com/watch?v=GgwuyJxHHm4)。
「西洋の支援を受けずに、アジアだけで成立させた大会として意義があったが、今後アジアがグローバルに貢献するためのステップとしてとらえることが重要。西洋からの代表者が、『アジアの教会の力、一致、神学的な深みを感じた』『西洋は「達成」を意識するが、東洋は「人間関係」を重視すると再確認した』など感想を述べた。先祖やイエ、名誉と恥を重視する東洋の文化脈に福音をどうのせていくか。東洋の文化を用いてどう世界に宣教していくか。従来から議論されてきたことだが、大会を通じて改めて考えさせられました」
AEA理事を務める田辺寿雄さん(インマヌエル聖宣神学院キリスト教会牧師)は「アジアの教会が動いている、ということを感じさせる集まりだった。ついつい目の前の教会、教団、日本社会にだけ目がいってしまうが、日本の教会も、アジアの中の教会の一部であると改めて思い起こさせる機会だった」と振り返った。
「AEAでのかかわりを通しても、日本がアジアにどのような貢献ができるか、日本はアジアからどんな助けが必要か、といった関係性を成熟させる必要を感じる。健全なパートナーシップが大事。ただ会議に出るだけでなく、さらに一歩踏み込んだパートナシップが大切になる」と話す。
さらに「情報交換が重要」と言う。「今回の会議でも、迫害の状況に心を痛めるとともに、そのような中での証しを聞き、心が燃やされた。それはこのような会議に来ないとなかなか知れないこと。キリストのからだとして日本の教会も、もっと積極的に祈る責任があると思う。11月6、13日は世界福音同盟信教の自由委員会により『迫害下にある教会のための国際祈祷日』(日本福音同盟ホームページ参照)が呼びかけられている。これもかかわる一つのきっかけになると思います」(つづく)【高橋良知】
(クリスチャン新聞web版掲載記事)