日本福音主義神学会西部部会の2023年度春季研究会議が5月22日、関西聖書学院(奈良県生駒市)を会場に開催された。今回のテーマは「宣教と教会」。春秋の年2回、活発な意見交換がなされてきた研究会議も、この3年間はコロナ禍により、開催延期や規模の縮小など、制約下での開催を余儀なくされてきた。今回は会場に約100人の参加者が集まり、以前の活気をほぼ取り戻した形での開催となった。【いのちのことば社出版部関西編集室山口暁生】

 

恵みにあずかる礼拝が教会の本質

開会礼拝では、コーディネーターの一人である岸本大樹氏(大阪聖書学院学院長)が、小泉八雲の短編小説『お大の場合』を紹介しつつ、「今日の研究会議を、この時代の社会の中で、教会が宣教にどのように取り組んでいくかを考える機会としたい」と述べた。

主題講演の一つ目は、西岡義行氏(東京ミッション研究所総主事、東京聖書学院教授)による「教会と宣教を捉え直す新たな視座」。今までのキリスト教界における宣教についての理解は、教会を生み出すことを中心とするものと神の派遣(ミッシオ・デイ)を中心とするものに分けて考えられることが多く、そのことによって発展した一方で、混乱した面もあったとした上で、それらは本来分離できないものであり、本来の関係性を捉え直し、より包括的にこの課題に向き合うためには新たな視座が不可欠となると指摘。その可能性をレスリー・ニュービギンの宣教の神学に見、特に、三位一体の神による、選ばれた民の派遣と、その民の証しの重要性に焦点を当てて考察した。

二つ目は、正木牧人氏(神戸ルーテル神学校教授・前校長)による「宣教と教会」。速度を増す世の変化に教会はどのように対応して宣教を進めるかを主題に、福音主義諸教会がどのような対応をしてきたかをローザンヌ運動の変遷を軸として歴史的に探った。そのうえで、「神の恵みに参与し、恵みにあずかる礼拝こそが教会の本質であり、またそのこと自体が証しとなって神が人々を仲間に加えてくださり、さらに仲間たちは互いに持ち物を共有し必要を補い合い仕え合っていた。このモデルで教会と宣教を見ると、『礼拝が伝道であり、そこから社会的責任が生まれてくる』となるのではないだろうか」と強調した。

午後の研究発表では、井草晋一氏(ピヨバイブルミニストリーズ代表)「日本発の『第二の宗教改革』~南原繁の挑戦を受けて~」、川端達哉氏(松原聖書教会副牧師)「聖書的〝熱心〟とは何か~ユダヤ教的熱心とキリスト教的熱心の連続性・非連続性~」、味谷美代子氏(チャペルこひつじ教会員)「まことの勝利を得るための礼拝と証しへの招き~黙示録の構成から紐解く今を生きる教会への預言~」の3本の発表がなされた。

最後に、主題講演についての活発な質疑応答がなされた後、南野浩則氏(福音聖書神学校教務)が総括。「教会の内に向けての働きと外に向けての宣教を、二元論で分けるのではなく、教会に与えられた使命として統合していく」と訴えかけて締めくくった。

岸本大樹氏
西岡義行氏
正木牧人氏
南野浩則氏

2023年06月11日号 01面掲載記事)

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