[CSD]2011年2月13日号《ヘッドライン》

[CSD]2011年2月13日号《ヘッドライン》

 = 1面 ニュース=
◎東京高裁で「予防訴訟」逆転敗訴——「君が代強制」通達の違憲性 門前払い
★イラン:キリスト者70人逮捕——ケープタウン会議参加者も

 = 2 面 ニュース =
◎自殺者3万人超 13年連続——偏見・差別から尊厳回復へ向け宗教者の役割に期待
★がんで逝ったホスピス医の夫——遺志継ぎ出版記念会で伝道
★書籍:『玲子が笑っていると僕はうれしい』喜久里 玲子著(イーグレープ刊)
★朝祷会が50年——若返りへ他団体と連携模索
★<落ち穂>状況の変化に動じない信仰

 = 3 面 教界ニュース =
★<竜馬をめぐる人々>[40]今井信郎の章:5——盟友・結城無二三の回心 記・守部喜雅
★ケープタウン2001報告[9]——和解の福音が全人格化しているか 記・鎌野直人
★<オピニオン>他者の信教の自由にも敏感 記・渡部敬直

 = 4 面 ビジネスパーソン=
★川本可奈子さん[上]([株]エレガンス東京代表取締役社長)——2年連続セールス世界一に
★<『もしドラ』教会編>[2]使命の共有?——使命とビジョンがやる気を引き出す 記・千葉雄志

 = 5 面 牧会/神学/社会=
★講演から:これからの牧会者に望むもの——同労者と協働で荷を担う(牧会塾プレスクールで山口陽一氏)
★国際:クエーカー350周年——平和を世界への証言に
★<精神障害と教会>[90]働く(2)ケアの現場で当事者が助けに  記・向谷地 生良

 = 6・7 面 宣教の課題を追う/九州北部=
★「誰でも一人では生きていけへん」——「無縁社会」でつながり続ける NPO北九州ホームレス支援機構
★問題見ずに平和は語れない——「原発 がばい危なか」鳥栖キリスト教会の取り組み
★痛む者と居る神 素通りできなかった——筑豊の人々とともに45年 福吉伝道所
★「なぜ生まれてきたのか」に答えたい——子どもの痛みに寄り添う 長崎バプテスト教会

 = 8 面 結婚特集=
★パーティーで出会いの場を<その1>——敷居を低く 同信の相手探し 談・田代智子
★パーティ婚活のアドバイス 談・田代智子

 = 9 面 情報=
★<情報クリップ>催し情報・放送伝道ハイライトほか
★BOOK:『世界中で語り継がれている希望物語』平野耕一著(鳥影社、1,575円税込)
★BOOK:『ヨハネの黙示録』加藤常昭著(日本キリスト教団出版局、1,260円税込)
★CD:「Heaven's meal」ピアノ・赤津ストヤーノフ樹里亜(Avec Plaisir、2,500円税込)
★REVIEW:『韓国強制併合から100年』信州夏期宣教講座編(いのちのことば社、1,890円税込)評・桜井圀郎

 = 10 面 関西だより =
★人に寄り添う賛美歌CD——故露の五郎兵衛
★イエス様と安心して笑顔で行こう——森裕理さん講演会10周年新年会
★関西イベント情報

 = 11 面 クリスチャンライフ =
◎どんな場所もミニストリーに——大ヒット『あたらしい みかんのむきかた』(岡田好弘著、小学館)の著者は牧師!?
★<また行きたい! 教会の魅力>[5]キーワード「リーダー」?——誰でもリーダーになれるんだ

 = 12 面 ひと=
★道下 豪さん(クリエイティブデザイナー)——ファッションでミッション




◎東京高裁で「予防訴訟」逆転敗訴−−「君が代強制」通達の違憲性 門前払い=1102130101

 東京都教委が03年10月に出した「国旗に向かって起立し、国歌を斉唱する」こと等を規定した通達の無効確認などを、都立学校の教職員ら約400人が求めていた「国歌斉唱義務不存在確認等請求訴訟(通称「予防訴訟」)で、東京高裁(都築弘裁判長=定年退職、代読)は1月28日、教員らの主張を全面的に認めた06年9月の東京地裁判決を取り消す逆転敗訴の判決を言い渡した。学校への「日の丸・君が代」強制をめぐる裁判で唯一、その不当性を認定していた原判決が覆され、原告教員・弁護団は、最高裁大法廷で司法判断を変えさせるしかないと、上告して闘う決意を新たにした。

 この日、東京高裁には原告・支援者ら250人余りが詰めかけた。開廷から数分後の午前10時20分過ぎ、「不当判決」が知らされると、裁判所前では「えーっ、どうして?」と落胆の声が漏れた。5年前全面勝訴に沸いた裁判所前は、一転して「天国から地獄だ」と嘆く重い空気に包まれた。06年の地裁判決後、「日の丸・君が代」強制への不服従を貫き処分された教員らの裁判では、軒並み敗訴の判決が言い渡されている。
 今回の東京高裁判決は・都教委通達が教育の自由を侵害して憲法26条、23条に違反し、また旧教育基本法10条1項、新教基法16条1項の禁止する「不当な支配」に当たり、思想・良心の自由及び信教の自由を害して憲法19条、20条に違反し違法であり、国旗に向かって起立し、国歌を斉唱する義務のないこと及びピアノ伴奏義務のないこと、・それらをしないことを理由とする処分の事前差し止めについて、いずれも判断せず、訴訟要件を欠くとして却下。・損害賠償請求(国家賠償)については、教育の自由、思想・良心・信教の自由を害するものではなく、「不当な支配」には当たらないとして棄却した。
 これに対し原告・弁護団は「予想しうる中で最悪の判決」と強く反発。「通達発令後、教職員に対する大量処分が行われ、生徒、教職員の自由が奪われ、厳しい管理のもとに置かれている実態を無視するもの」などと批判する声明を出した。原告にはキリスト者らも含まれ、信仰の良心をかけて通達には従えないことを法廷で証言してきた。
 判決後の報告集会で弁護団は「今の裁判所は最高裁に逆らえない。07年に最高裁小法廷で出たピアノ伴奏拒否による処分取消請求棄却の判断を大法廷で覆すしかない」と上告の方針を確認した。
 近年、東京の学校では卒業・入学式などで不服従を繰り返して減給、出勤停止、再雇用拒否など処分が重くなり、心ならずも起立したり、担任を外れ式典に列席しない業務に就くなど、教員たちは追い詰められている。そのため通達後は年に200人を超えていた処分者は数人に激減したが、職員会議では挙手による決定が禁止され、発言すると人事考課に響くなど、「物言えぬ学校」になっていると、多くの教員が閉塞感を訴えている。

キリスト者原告の話
 都立高校教諭・岡田明さん 世間の批判やタブーに触れることに裁判官がいかにおびえているかを、今さらながら痛感した。しかしそれはキリスト者を含め、この国の多くの人が歴史から教訓を学ばず、ホンネを封印し、まわりの空気に合わせる体質を続けてきたから。教会、キリスト者は危機感と地の塩としての自覚をもってほしい。
 元都立高校教諭・木村葉子さん 行政の暴挙を憲法と良識をもって裁けない司法に、日本の深い闇を感じた。東京の学校では職員会議で挙手も禁止され、命令と処分の苦しみにさらされている。大阪市教委が「君が代をピアノか吹奏楽で、児童・生徒が大きな声で斉唱するよう」通知するなど、全国への拡大が心配。教員が自由に意見も言えない学校で、子どもたちがのびのびと考え学ぶことはできません。
 
 

◎自殺者3万人超 13年連続−−偏見・差別から尊厳回復へ向け宗教者の役割に期待=1102130201

 自死者が13年連続3万人を超える中、自死者とその遺族に対する偏見と差別の是正を目指して活動を続けるNPO法人「グリーフケア・サポートプラザ」(東京都港区)が1月19日、「『自死』&『自死者』、『自死遺族』の尊厳回復へ向けた講演・シンポジウム」を開催した。会場は東京都新宿区のニコラ・バレ。自死遺族や支援者、行政、宗教関係者等約150人が参加し、意見交換を行った。
 「封印された死とその解除」と題して基調講演した清水新二氏(奈良女子大学名誉教授)は、自死を「語りたくても語れない、封印された死」と表現。「封印がとけないと、遺族の回復はないだろう。世間の自死は悪いことだという意識が、遺族に対する偏見・差別をつくり出している。そのような社会の自死に対する偏見のまなざしにより、多くの遺族は自死の悲嘆を語ることを避ける傾向がある」と問題提起した。「ではなぜ、自死が他の病死や事故死と区別して扱われているのか。それは、自分で選んだとみなされるため。しかし実態は追い詰められ、孤立した結果の死、どうにも防げない自死もあるのではないか」と訴えた。
 基調講演を受けて行われたシンポジウムでは、斎藤友紀雄(日本いのちの電話連盟常務理事)、田中幸子(自死遺族当事者、全国自死遺族連絡会代表)、藤丸智雄(浄土真宗西本願寺僧侶)、森一弘(カトリック司教)、平山正実(精神科医)の各氏がシンポジストとして発言した。斉藤氏は「いのちの電話の働きは40年前に始まり誤解と偏見の中で活動を続けてきた。行政や企業の中にも、自死に対する無理解と差別が根付いていると感じている」。田中氏は05年、警官をしていた長男を自死で亡くした。「偏見を強く感じたのは、遺族支援の会を立ち上げたとき。『何も知らないでしょう』などのさげすみの言葉を、『遺族を支援します』とうたっている団体などから受けた」。宗教者の役割にも言及し、「プロの言葉は影響が大きい。宗教者の言葉で、変えていっていただきたいと思う」と語った。
 藤丸氏は、西本願寺の僧侶間で、自死に対する意識調査を行った結果から発言。「『自死は命を粗末にする行為である』が約70%、『自死は罪悪である』が約74%、『弱い人がするものである』が約10%という結果が得られた。大きな偏見が僧侶間にある現実が明らかになった」。そもそも仏教では自死はほぼ罪悪とは見なされていないが、不殺生戒や、個別の状況に触れずに「命は大切だ」という視点から権威的に発言することで、偏見が起きているのでは、と語った。森氏は、「教会を代表する立場で話すのでない」と前置きした上で、「命を絶つことは神への反逆というのは、本当の神理解でないように思う。人間が苦しんでいるとき、共に苦しむのが神という存在。裁くのではなく、親として寄り添っていこうとされるのではないか。この『神理解の転換』と『人間同士の強いつながり』が大切であり、他者の苦しみを共に考えることが、自分自身の宝にもなる」と指摘した。
 平山氏は挨拶に立ち、「自死は封印された死と言われるが、身近で起きたことに一つひとつ向き合っていくべきではないか。遺族ケアのために、ネットワークを広げていかなければ」と語った。

◎どんな場所もミニストリーに−−大ヒット『あたらしい みかんのむきかた』(岡田好弘著、小学館)の著者

 みかんを工夫してむくと、芸術的な作品も作れちゃう! そんなアイデアが一冊の本にまとまり、『あたらしいみかんのむきかた』(岡田好弘著・小学館)が出版された。著者の岡田さんは北海道札幌市の札幌クリスチャングループの牧師だ。うわさがうわさを呼び、本は5万6千部以上出ており、ちょっとしたブームになっている。。東京・渋谷区のタワーレコードで開かれたワークショップにも立ち見が出るほどの大盛況。みかんのむきかたに秘められた牧師ならではのメッセージとは。 【奥山みどり】

 「今日は白鷺を作ります」。岡田さんのその言葉に一瞬、会場の息が止まる。皆の頭に浮かんだ言葉は「そんな難しいの作れない」だっただろう。続けて「実は、完成の形をみると難しそうですが、けっこう簡単。成功しやすいですよ」と語る。
 むく前に、ボールペンでみかんに線を引き、その線に合わせてカッターあるいは専用のナイフで切っていく。手順を口で説明されても、実際にやってみないと始まらない。「どうしたらいいの?」と戸惑っていた参加者も、作業が進むにつれ無口に。20分ほど経過すると、完成した人もちらほら出てきた。「けっこううまくできた!」「羽がやけに大きいな」。大人も子どもも自分の出来栄えに満足げ。
 岡田さんは参加者にこう話しかけた。「丸いみかんが、本当に白鷺の形になるのか、完図では見ていても、切る前は想像もつかなかったと思います。しかも、この工作のおもしろさは、やっていてもわからないところです。料理でもプラモデルでも、普通は完成間近になるとゴールが見えます。でも、このみかんの工作は完成するまでわからない。それがこのおもしろさです。どれが上手ということはなく、それぞれが良いものです」
 参加者はその言葉にうなずき、「いびつでも自分の作ったものが一番いい」「楽しかった。もっとほかのも挑戦したい」との感想が多くあった。

 岡田さんが「みかんのむき方」に凝り始めたのは06年の冬のこと。「たまたまむいたみかんがサソリに見えたんです」。自分以外の人が見てもわかるようになるために2週間ほどを費やした。もともと工作が好きで、家族は「また何かやってる」程度の反応だったという。サソリ、うさぎ、馬…。少しずつレパートリーを増やし、40種ほどに増えた。「それまで人には教えなかったし、ブログなどにも載せませんでした」。まとまって作品ができた時点で、小学館に持ち込んだ。「企画はなかなか通りませんでしたが、編集者の機転で児童書の前提でありながらサブカルチャージャンルという奇妙な組み合わせにより、企画を持ち込んでから1年以上かけてやっと出版できました」
 「会社ではまさかこれが売れるとは思っていなかったようです」。ツイッター、ブログ、口コミなどを通して人気に火がつき、テレビや雑誌にも取り上げられるように。「むきおくん」という主人公をたて、ストーリー仕立ての中でみかんの工作が描かれているところもこの本の魅力だ。
 本を出すこと、ワークショップを開くことについて、岡田さんは「マーケットプレイスミニストリーです」と断言する。「人類は、神様からこの世界の管理を委ねられています。教会は、人の中に入った罪からもう一度神様のもとに帰る救いを説き、導く重要な役割もありますが、神様による権威をこの世界に正しく用いていく役割もあります。その意味で、このみかん工作もミニストリーからかけ離れたものではありません」
 「ただの丸いみかんがこんなに芸術的な作品になる可能性が秘められている。人も神様によって生かされ、それぞれが世界にふたつとない、すばらしいものになっていく。そんな福音のもつメッセージということと似ていますね」