参加者からの質問に答える。左から原氏、金尻氏、坂本氏、秦地氏

人身売買禁止ネットワーク(JNATIP)主催の院内集会「子どもを含む性的搾取の実態 ~搾取をなくすための迅速な行動を~」が4月17日、東京・千代田区永田町の衆議院第一議員会館会議室とオンライン併用で開催された。

JNATIPは、人身売買、暴力や搾取(特に女性に対する暴力)、滞日外国人の人権侵害などの問題に取り組む、全国のNGOや研究者・法律家などが連帯するネットワーク。一般社団法人ゾエ・ジャパン(秦地浩未リージョナルディレクター)、特定非営利活動法人レスキュー・ハブ(坂本新理事長)、ノット・フォー・セール・ジャパン(NFSJ)=山岡万里子代表=、日本キリスト教婦人矯風会、救世軍など、クリスチャンが代表を務める団体やキリスト教支援団体も名を連ねる。

最初に、JNATIP運営委員の原由利子氏が趣旨説明。「2003年の設立当初、人身売買は禁止されていなかった。各政党で勉強会を開催していただく中、05年にようやく刑法で人身売買罪が新設された。だが、私たちは、禁止と共に被害者保護と救済を求めていた。私たちは年に1回、政府意見交換会を持ってきたが、人身売買を構造的に変えるところまでいかない。その間、外国人・日本人女性の被害者が増え、子どもにも広がり、技能実習制度という形で男性の労働搾取も盛んになった」

「本日は性的搾取にしぼり、今起きている実態について聞きたい。2年前にAV出演被害防止救済法(AV法)ができたが、その網をくぐってさらに被害が続き、海外出稼ぎにもつながっている。議員の皆様にも聴いていただき、思いを同じくし、超えられなかった壁を超えていく出発点としたい」と挨拶した。

報告では、秦地氏が「性と人権:子どもを性搾取から守る」、金尻カズナ氏(特定非営利活動法人ぱっぷす理事長)が「ホスト商法からAV出演被害、海外出稼ぎまで」、坂本氏は「歌舞伎町に立つ女性たちの支援を受けて」と題して話した。

秦地浩未氏

秦地氏は、性的脅迫(セクストーション)の手口について説明。「出会い系アプリなどSNSで出会った相手とビデオ通話で性的な行為をする。すると、ネットの相手から『画像をフォロワーにさらすぞ』『口止め料を払え』と脅される。被害者は『周りに知られたらどうしよう』と恐怖、恥、後悔、怒りにさらされることになる」

性加害(支配)と性被害(従属)の関係についても触れた。「加害者は自分の欲望を満たすため、被害者をものとして扱う。被害者の尊厳が歪めて受け取られている。すなわち、認知のゆがみがある」

認知のゆがみの背景としては、▽ネットやSNSの使用に対する家庭内のルールがないこと、▽学校で、また親から性教育がなされていないこと、▽高校生までの70%がアダルトビデオを見ていること、などを挙げた。

特に、「マンガ、アニメ、ゲームから得る知識が常識になる」危険性を指摘。「現法律では、非実在人物は児童ポルノではないとする。少年・少女を暴力や性のはけ口として描くことで、性加害をすること、性被害を受けることが当然のように思わせる。生成AI、仮想空間の性暴力も脅威だ。子どもを加害者、被害者にしないための規制が緊急課題だ」と語った。

金尻氏は、ホストクラブ(ホスクラ)商法について説明。「相手の恋愛感情を利用し、高額な飲食代を請求する悪質商法。様々な搾取の仕組みがある、性的搾取、人身取引の一形態だ」

金尻カズナ氏

「ホストが『住まいと仕事の面倒を見る』などと言って、被害者を勧誘する。色恋を利用し、被害者に必要以上にお金を使わせ、借金漬けにする。返済のため、売春やAV出演をさせ、ホストに上納させる。そして海外に出稼ぎにも行かせられる」

AV法ができたことで「加害者のやりたい放題、被害者は泣き寝入りしかなかったのが、契約後1か月は撮影禁止、撮影後4か月は公表禁止などのルール規定により、考え直す時間・猶予ができ、被害者救済につながっている」と指摘。今後の課題としては、1か月4か月ルールの罰則化、報酬を得る目的での性交契約の無力化、などを挙げた。

坂本氏は、2018年から、歌舞伎町で夜回りを続ける。風俗や売春などに従事する女性を孤立や性的搾取、犯罪被害などから守り、困難を抱える女性を適切な社会資源につなぐハブ的な役割を果たすためだと言う。

具体的な相談例は、▽性感染症、▽ホストクラブ売掛金、▽違法カジノ店、▽闇金融での借金、▽検挙者の面会および身元引受人の依頼・対応、など。

坂本新氏

コロナ流行前、流行中、感染者減少時期と、当事者の変遷についても語った。「流行前は、経済的困窮等から、長らく売春を生業としていると思われる女性が多かった。だが、コロナによる失職者、生活困窮者が多数となり、減少時期には売春に従事する当事者の若年化と生活困窮者に併せ推し活女性の増加が観られた」

活動から見える気づきについては、▽制度はあるがつながれない、▽情報提供だけで動ける当事者は少ない、などを挙げ、「支援提供側が自分の立ち位置から当事者側に一歩踏み出す勇気、支援者ではなく一人の人間として、主訴解決までステージを降りずに関わり続ける覚悟、が求められる。官と民が連携し、当事者を支えるための真に機能する協働体制の構築が急務だ」と結んだ。

当日は報告の後に質疑応答が、またその合間に、この問題に関心を持ち、実際に取り組んでもいる各党議員8人ほどが入れ替わり立ち替わり挨拶。最後に、弁護士でJNATIP共同代表の吉田容子氏が閉会挨拶した。