[CSD]2012年4月29日号《ヘッドライン》

[CSD]2012年4月29日号《ヘッドライン》

 = 1面 ニュース=
★「震災前の音色 復活した」——釜石の津波被害のオルガンを青森の牧師が修復
◎本郷台キリスト教会:被災した子らの心のケアを——5月にカンンセラー養成講座を開催

 = 2 面 ニュース =
★教会の危機管理と法律問題——チャーチリーダーズ・フォーラムで重要な焦点に
★暗い世に復活の希望伝え続け——首都圏イースターのつどい半世紀
★韓国基督教総連合会が分裂——WEA総会誘致などで執行部不信
★VIP関西:さくらソングとイースターソングを開催
★気仙沼市の被災印刷所で「復興トラクト」印刷開始
★<落ち穂>為政者が反キリストになった国

 = 3 面 教界ニュース =
★<いのちへのまなざし>[8]気づきと行動 記・柏木哲夫
★宗教は公共的役割を果たせるか——震災復興から持続可能な福祉社会へ
★<オピニオン>全欧州に散らされた次世代リーダーの育成 記・内村 伸之
★<情報クリップ>催し情報・放送伝道ハイライトほか

 = 4 面 聖句書道展=
☆聖句書道紙上展

 = 5 面 憲法特集=
◎3・11大震災に乗じて進む改憲の動き——憲法審査会で改憲規定が成立 記・西川重則

 = 6 面 神学/歴史=
★東日本大震災 国際神学シンポジウムより——大災害時におけるキリスト教的応答:教会史から学ぶ[1]
★<竜馬をめぐる人々>[79]坂本直寛の章:38——頑なな監獄職員の信仰告白 記・守部喜雅

 = 7 面 伝道・牧会を考える=
★教会ルポ<ここも神の御国なれば>[8]同盟基督・川奈聖書教会?——教会員の賜物を生かし用いる
★ケープタウン決意表明(25)パート?解説——私たちが仕える世のために(8)

 = 8 面 レビュー=
★Book:『説教者としてのJ・S・バッハ』ロビン・A・ヴァー著(教文館、1,575円税込)
★Book:『ケープタウン決意表明』日本ローザンヌ委員会訳(いのちのことば社、945円税込)
★Booklet:「たいせつにしたいもの 平和憲法第9条」NCC平和憲法推進プロジェクト委員会著(20部500円、税込)
★Book:『くまのリッキーとにじいろのたまご』ジョナサン・ウィルソン原作(イーブックス、1,575円税込)
★Book:『告白録』S・A・クーパー著(教文館、5,040円税込)
★CD:「My Woeship」エイジア(ミクタムレコード、2,500円税込)
◎Mivie:「ムサン日記~白い犬」——脱北の暗鬱と心の重荷見つめる http://musan-nikki.com/




◎本郷台キリスト教会:被災した子らの心のケアを−−5月にカンンセラー養成講座を開催=12042901

 東日本大震災から1年を過ぎ、被災者の心のケアの重要性が言われてきている中、宮城県石巻市で支援活動を行っているJECA・本郷台キリスト教会(池田博牧師)は、当初から被災地支援に協力してくれた米ノース・コースト・カルバリーチャペルから講師を招き、被災した子どもの心をケアするための「子どもの心へ届くカウンセラー養成講座」を5月24日から27日まで開催。被災した子どもの心のケアに重荷がある、自分もカウンセラーとして仕えたいと願う人の参加を呼びかけている。
   ◇  ◇
 講師は米ノース・コースト・カルバリーチャペル会員でマリッジ&ファミリーセラピストのパム・ダウティさん。テキストはダウティさんが著した「子どもたちのために:人生のさまざまな時期(感情)を通して成長する」を使う。
 このテキストは、最初に心の傷(トラウマ)と癒しについて考察し、絵を描くことによって悲しみ、怒り、不安などの感情を解放しストレスを軽減するアートの効果などを説明。その後、「悲しみの時」「怒りの時」「罪の時」「信仰の人生」「希望の人生」「愛の人生」など、10のレッスンを通し、いかにして傷ついた子どもの心に神様の愛を伝え、癒し、回復の業を導いていくかを学ぶ。聖書物語や御言葉の引用も多く、この講座を受けると、聖書や絵を描くことを通してカウンセリングを行えるようになる。
 このテキストによるカウンセリングは、実際にカンボジア大洪水の時に子どものトラウマカウンセリングに使用され、大変効果があったものだ。
 会場は、神奈川県横浜市栄区飯島町の本郷台キリスト教会ダイヤモンドチャペルで。参加費全日1万円。定員12人(全日程参加のみ受け付け、被災地からの参加は補助あり)。宿泊費は別途。問い合わせはTel.045・894・3311(担当・大野)まで。

◎3・11大震災に乗じて進む改憲の動き−−憲法審査会で改憲規定が成立 記・西川重則=12042905



菅首相発言を機に「国家緊急権」条文化当然視
 戦後67年の2012年にあって、最も重大かつ緊急課題は何かと問われれば、昨年の〈3・11〉東日本大震災をめぐる重要問題と共に、憲法審査会・自民党新憲法制定推進運動であると言って、決して過言ではない。
 それでは、〈3・11〉の文脈の下で何が具体的な問題なのかと言われれば、昨年の〈3・11〉直後の〈5・3〉憲法記念日を中心に、改憲をめざす運動として従来遠慮がちであった改憲推進運動に拍車がかかったことを挙げることができよう。菅首相が〈3・11〉の解決に手間どった理由として、日本国憲法に緊急権の規定がないことを指摘し、その条文化を主張した。彼らが〈3・11〉を奇貨として、国家緊急権その他を主張している国会議員を招き、集会に参加している人々に向かって公然と、有事に際して国家緊急権が不可欠であることを発言させ、参加者の拍手を期待し、改憲を当然視する機運を作り出したことを、私は忘れていない。

戦後改憲運動の歴史
 ここで戦後の改憲運動の略史を報告したい。1955年11月15日、自民党が結成されたが、結成の目的の一つは「現行憲法の自主的改正」にあったことは重大である。自民党の議員が、委員会などで現在、結成の日の「自主憲法」の制定をくり返し主張していることは決して小さな問題ではない。
 自民党による新憲法制定運動は、結党50年の2005年10月29日(朝日新聞参照)における新憲法草案の表明を含め、その後、新憲法制定推進運動本部長の名の下に、改憲草案の原案が産経新聞(2012・1・23)、朝日新聞(2012・2・28)その他で報道されていることも、知られているとおりである。
 しかし、私にとって改憲運動が動かぬ証拠となった戦後史最重大な出来事は、昨年の5月18日、憲法審査会で改憲のための規定案が可決・成立したことである。私の著書の中で『有事法制下の靖国神社 国会傍聴10年、わたしが見たこと聞いたこと』、『わたしたちの憲法 前文から第一〇三条まで』は、長らく休むことなく国会を傍聴しての出版である。読まれた方々には納得されているはずだが、私が?はだかの国会?と呼んでいる国会の現状は、日本国憲法の原則・適用の首尾一貫した議論ではなく、政局中心、つまり悪しき多数決によって法案を可決・成立させる、まさに悪習が慣例化しており、主権者・有権者の厳しい警告がないことをよしとして、改憲(改悪)の道を開く審議が平然となされている。

憲法の原則論議によらぬ
政局中心のはだかの国会
 その典型的事例として昨年の5月18日、改憲に法的な道を開く憲法審査会の規定案が圧倒的多数で可決・成立したことを挙げることができる。投票総数229、賛成218、反対11、民主党の採決棄権5、反対は共産党、社民党という結果となった。ここから第96条憲法改正の第一項の国民投票の場合を予想すれば、圧倒的多数の主権者・有権者を反映している政党(民主、自民、公明、みんな、国民新、たちあがれ日本、新党改革)の賛成多数を如実に反映する結末、すなわち改憲を要望する政党即主権者・有権者の圧倒的多数による早期改憲に道を開いたと言えよう。
 より具体的に言えば、日本国憲法を今改憲することを望まない私たちにとって、憲法審査会や民主党、自民党など改憲派多数の現状を直視する時、改憲(改悪)を促進する憲法審査会の組織論に無関心たり得ないことに、注意を喚起しなければならない。

改憲手続、発議の整備
悪しき多数決で具体化
 なぜそのような改憲の動向を招いたのかを、次に報告しておきたい。自民党結成時の「現行憲法の自主的改正」を党の基本方針として今日に至っているが、改憲構想の具体化に特に熱心である安倍晋三議員が首相となり、持論である「戦後体制からの脱却」の一環として、早期改憲をめざし、国民投票法案を成立(2007・5・14、強行採決)させ、その条文に、改憲手続、発議の整備を行うなどと明記した。その具体化が先に記した昨年の5月18日の規定案の可決・成立となったというわけである。
 憲法審査会が参院の本会議で成立した時、圧倒的多数の賛成者が拍手した。早期改憲実現を願っての拍手であったと、私は傍聴席から考えざるを得なかった。早期改憲のために昨年11月17日から憲法審査会で審査を開始した。衆院は50名、参院は45名から成り、会長・幹事は同じ10名である。両院の審査会のうち、どちらも共産、社民のふたりだけが反対を表明しているに過ぎず、やがて、両院において、悪しき多数決による改憲原案が圧倒的多数の採決となることは避けられない。自民党が天皇の「元首」、「自衛軍」、「政教分離」の緩和その他の新草案を公表する4月28日を前に、この緊急・重大な課題を真剣に考えなければならない。
 (にしかわ・しげのり=「政教分離の侵害を監視する全国会議」事務局長)

◎Mivie:「ムサン日記〜白い犬」−−脱北の暗鬱と心の重荷見つめる=1204290807

 北朝鮮から脱北してきて、韓国で生活している人が現在2万人以上いる。だが、その生活の厳しさや就職問題などの差別的な実状はあまり知られていないという。脱北者の友人との交流と彼の死を通して製作に駆り立てられたパク・ジョンボム監督が、自ら脚本を書き主演した篤い思いがいたるところに描かれている。
 ソウルで暮らす脱北者のスンチョルは、やぼったいオカッパ頭に固執し、生真面目な性格だが不器用でポスター貼りのバイト先の社長にも疎んじられている。パク刑事の保護と指導を受けながら定職を捜すが、どこも断られる。脱北仲間のギンチョルは、北朝鮮に送金する闇ブローカー。スンチョルは、彼のアパートに同居させてもらっているが、どこか馴染めない。
 そんなスンチョルが安心していられる場所は、プロテスタント教会での礼拝と聖歌隊で歌う素敵な女性スギョンへの憧れ。そして、街に捨てられていたチンドン犬とプサン犬の混血の子犬ペック。ある日、スギョンの後をつけるとカラオケバーに入っていた。スギョンの父親が経営していて、スギョンは店のマネージャーで手伝っていたが教会ではそのことを隠していた。店のアルバイトになったが、不器用でお客ともいざこざを起こしたスンチョルは、スギョンに解雇され、教会にも来ないでほしいと一方的に突き放された。安らぎの場も憧れも失ったスンチョル。ポスター貼りのアルバイトも解雇され、暗澹としているとヤクザに因縁をつけられ、切れて初めて殴り返した。ある日、パク刑事はスンチョルが通っていた教会の祈祷会に連れて行く。そこで初めて自分が脱北者であり、脱北してきた自分の心の重荷を告白し祈ってもらう。それを聞いていたスギョンは、再びカラオケバーでのアルバイトに雇うのだが…。
 スンチョルの暗鬱さと心の重荷に、教会が一つの拠り所であり、現実を生きる転機への一歩を踏み出させていることに安堵感と複雑な距離感を深く考えさせられる。 
           【遠山清一】


監督:パク・ジョンボム 2010年/韓国/127分/原題:Musanilgi 配給:スターサンズ 2012年5月12日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開
http://musan-nikki.com/