紐付きの愛ではなく地域に仕える 基督聖協団 練馬グレースチャペル
並木通りに面して教会堂の一室を開放したマルシェの様子
並木通りに教会堂が大きく開かれる。マルシェや様々なイベントで人々が行きかう。ルーバー式の外装もカジュアルな町並みと調和する。「一見教会には見えない」。東京・練馬区の江古田エリアにあるキリスト聖協団練馬グレースチャペルは、教会の中にとどまらず地域に「流れ出す」ビジョンも掲げている。横田義弥牧師に同教会の取り組みを聞いた。【高橋良知】
「愛は相手から始まる」に学ぶ
「お兄ちゃん、いい話ありがとう。でもな、おれたちには毎日のおまんまが必要なんだ」
横田さんが神学生時代、ホームレス支援にかかわって返ってきた言葉だ。説教をして、福音を語ると、ホームレスの人々はほほ笑んで聞いてくれるが、「まったく届いていない」。そんな実感がした。1999年に現教会に副牧師として就任してからも、「伝道とは何か。福音とは何か」と自問が続いた。
そんな中、2003年に聞いた、シンガポールのローレンス・コン牧師の講演がすっと心に入ってきた。「『キリストの愛は紐(ひも)付きではない』『伝道の思いは大切だが、愛は相手から始まる』と。相手の必要に対して、自らを横に置き、仕えるのが愛だと教えられました」
イースターイベント(上)やジャズダンス集会開催など、地域の求めに協力した
まず地域の必要を知ろうと、町内会に連絡を取り、前江古田銀座商店会会長の酒井勅さんと出会った。「江古田を愛し、人々の必要を聴いて仕え続ける、まるで牧師のような人」だった。横田牧師らは行事や清掃など様々な手伝いを始めた。
当時から商店街は店主の高齢化が進み、消滅の危機にあった。一方、新しく来た店の人たちは地域とつながりがない。そこで交流のための音楽イベントを立ち上げ、協力した。04、05年に教会のゴスペルサークルがイースターに路上ライブをした。06年から江古田イースターフェスティバルとして、近隣の日本大学芸術学部や武蔵野音楽大学などの学生サークル、アーティストも出演するイベントとなった(16年まで開催)。
日常的な奉仕も大事にする。毎月第三日曜の朝は、地域の清掃活動に合わせて、「清掃礼拝」としての取り組みをしている。「遠方から通う教会員もいるので少人数だが、これはやめてはいけないと思う。牧師が清掃していることを地域の人も見ています」
教会でも、地域のニーズに応え、子育て世代の親子の集会、中高生集会、シニアカフェ、歌声喫茶、教会マルシェ、など様々なサークルやボランティア活動が始まった。黙想や聖書の学びの機会もある。近隣の教会と協力しNPO法人ホサナで精神障害者福祉事業もする。
「結果として前商店会会長や奥さん、またその親友がイエス様を信じるようになった。紐付きの愛ではなく、地域に仕えることを大切にした。そのことへの神様からの励ましと受け止めています」
「神の愛」を止めず流すビジョン
何事も‶イエス様抜き〟は危険
教会の中での奉仕だけではなく、地域に仕える文化、価値観が根付いてきた。これは最初から教会全体で共有できたのではない。「追い風だったのは、仲間を得たこと」と言う。
「愛知県の街頭で傾聴ボランティア『聞き屋』をしていた陣内俊さんは、元々知人だったが、国際NGO『「声なき者の友」の輪』の働きで上京し、教会で奉仕してくれた。セミナーやワークショップで、神の国の働きの霊的、社会的、身体的、知的な側面を学び、宣教の視野が広がりました」
同教会は1955年に設立。セルチャーチ運動に取り組んできた。その学びの中でセルグループやリーダーも育った。東日本大震災後は、支援活動を通して、4人が岩手県に移住し、現地でNPOや開拓宣教に従事する。海外宣教にも送り出した。「あるリーダーは学びの中で、『教会に来るな、教会であれ』という言葉を心にとめて、『自らが教会』の意識で、派遣された」と話す、、、、、、
(2024年04月14日号 08面掲載記事)
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