[CSD]2003年4月27日《ヘッドライン》

[CSD]2003年4月27日《ヘッドライン》
 = 1面 =
◎キリスト者意志の功績たたえ顕彰碑設立計画——山間の町で温泉医療に尽くした故・草地敏治氏
★バチカン:イラク戦後、各国の和解めざす
★ロシア:福音同盟発足——伝道強化に大きな一歩
★ラオス:教会への迫害続く——教会堂を政府庁舎に
★新連載<復活——中嶋常幸プロ>[2]神様は見捨てて「孤児とはしない」
★<落穂抄>ヒトの設計図を書いたのは誰か

 = 2 面 =
★イムマヌエル:新総理に竿代信和氏——就任説教で「狂った時代こそ聖の使命」
★同盟基督:伝道への機構改革基本方針を決議
◎聖書に基づき「反戦」——各教派総会で声明採択
★<提言>人間関係の癒しに至る福音理解 記・井草 晋一
★<神のかたち>[38]女たちは…語ることを許されていません 記・稲垣緋紗子
★<今週の本棚>『呂運亨評伝1 朝鮮三・一独立運動』姜徳相著(新幹社、4,500円) 評・野寺博文
★<今週の本棚>『こころ いやされ やしなわれて』斉藤由治著(イーグレープ、1,800円)
★<今週の本棚>『詩編23編講解』佐藤 順著(アンカークロス出版、600円)
<情報クリップ>催し情報ほか

 = 3 面 =
◎米国クリスチャンはなぜ戦争支持?——アンケート調査結果に見る反戦派との違い

 = 4 面 アーティスティッククリスチャン=
★社長は墨彩画家、歌や演劇にも朝鮮——井上浩郷さん
★撮るだけでなく歌う——カメラマン・酒井羊一さん
★神学生はハードロッカー——関野和寛さん

 = 5 面 =
★NPOサッカースクール・エスペランサ5月開講——ヘッドコーチにオルテガ氏(元アルゼンチン代表)
★亡き娘の思いつづた曲も収録——CD「鳥の歌——Songs of the Birds」
★難民医療に日本人ワーカー来てほしい——パキスタン医療宣教・田中久美子さん
★青少年、教会学校の親睦にヨットをプレゼント
★映画「ふうけもん」:韓国クリスチャン議員らも発起人に
★<恵みのどんでん返し>私は忘れても、神はすべてを見て最善を 記・松村 喜代子(大阪キリスト教会中宮チャペル牧師)

 = 6 面 =
★イエス様中心の神の家族——ナザレン・大阪桃谷教会「お泊り会」
★<先生☆キラッ>教会は楽しくないとアカン 西山 哲穂さん
★年1度の夏季キャンプ——大好評そうめん流し
★<ゆっくり行こう!CS教師>[8]長く長く祈り続ける 記・福井 誠
★<オッフーのあすすめこの1冊>[2]『子どもを育てる心理学 憎しみの残らない兄弟げんか』アデル・フェイバ、エレイン・マズリッシュ共著(きこ書房、1400円) 記・藤田 桂子
★<CSでできること できないこと>[8]地域社会で問われるCSの存在意義 記・杉谷 乃百合


キリスト者意志の功績たたえ顕彰碑設立計画−−山間の町で温泉医療に尽くした故・草地敏治氏0304270

岡山県のちょうど中心に位置する山間の町、御津郡加茂川町。人口約6千5百人の過疎の進むこの町で、26年間にわたって故郷の地域医療に尽くしたクリスチャンの医師がいた。その人は、昨年3月に天に召された草地敏治氏=基督兄弟団河内教会員=。今年の3月8日、隣町真庭郡落合町のホテルで草地氏の召天1周年記念会が開かれた。町では、草地氏の功績を記憶に残そうと町長が発起人となり、多くの地域住民の寄付によって顕彰碑の建設が進んでいる。また草地氏が故郷に開業した小森温泉診療所の後継者を求めている。
 草地氏は、1921年に加茂川町に生まれる。2歳の時、赤痢によって家族を失う。1人だけ奇跡的に助かった。その後、村の助役だった草地家に養子として迎えられ、医学の道を志す。東京医学専門学校(現東京医科大学)に入学。卒業後、立川市の川野病院、同大学医局の研修と学位取得後、61年に故郷の隣町落合町にあるクリスチャンの経営する河本病院に勤務。70年から、病気で閉鎖する96年まで故郷の地で開設した小森温泉診療所で地域医療に尽くした。「自分を生かし育ててくれた故郷に尽くしたい」という思いが50歳にして草地氏を開業に踏み出させた。同地には岡山藩の領主が使用した秘境の温泉があり、草地氏はここで温泉医療を考えたという。銀行からお金が借りられないなど病院運営は困難を極めたが、草地氏は一つずつ解決していった。最後の13年間は自身も病気と闘いながらの診療だった。遺体は本人の意思により献体された。
 記念式は、同教会牧師の馬場利夫氏の司式で執り行われ、町長、親族、教会員など関係者が同氏をしのんだ。草地氏の妻、喜代子さんを信仰に導いた同教会の前任牧師高橋養二氏(単立・札幌めぐみキリスト教会牧師)は、「献身と報恩」という言葉で同氏を表し、「地域医療への献身と、故郷への報恩、人として最も大切なものを、言葉よりもその生き方によって示された。質素倹約、富、名誉、地位を求めず、神から与えられた人生に誠実に生きようとされた」と思い出を語った。
 同地域では夜間に診療できる病院が近くにはないため、小森温泉診療所を再開して欲しいという要望は強い。しかし、僻地医療は採算、子どもの進学の問題などで後継者の医師を迎えることが難しい状況にある。

聖書に基づき「反戦」−−各教派総会で声明採択0304270203

東京地区メノナイト教会連合は3月21日、さいたま市の見沼キリスト教会で開いた2003年度総会で、東條隆進議長から緊急提案された「ブッシュ大統領への要請文」を採択した。平和を求めるクリスチャンとして、「熱心なクリスチャン」とされるブッシュ米大統領が世界の反戦の声を無視してイラク攻撃の命令を下したことに「落胆の思い」を表明。主キリストが「剣を取る者は皆、剣で滅びる」と戦いを厳しく戒め、使徒パウロが「自分で復讐せず、神の怒りに任せなさい」と教えていることを引用し、対テロ戦争が復讐とテロの悪循環を起こすことを指摘し、中止を訴えた。
 日本キリスト教会九州中会(田辺晃二議長)は3月20日、21日、福岡市の福岡城南教会で開いた第51回九州中会の冒頭、中会ヤスクニ委員会が提案した、小泉首相あての「イラク侵攻反対および日本支持撤回要求に関する声明」と、ブッシュ大統領あての「イラク侵攻反対および即時停戦要求に関する声明」を満場一致で採択した。武力侵攻撤回を求める基盤として聖書「殺してはならない」(出エジプト20・13)、「だれに対しても悪をもって悪に報いず」(ローマ12・17)を挙げた。
 同教会東京中会(久野真一郎議長)は3月20日、21日、浦和教会で開いた第52回定期中会で、小泉首相、石破防衛庁長官、森山法相、川口外相にあてた「『有事法案』の法制化に反対する声明」を採択した。使徒5・29に基づき、「将来、この『有事法案』の法制化により、イエス・キリストを主と信じ告白する自由が不当に制限されるに至った場合には、わたしたちは人に従うよりも神に従う方を選ぶ」と表明。同法案が、戦争放棄を定めた日本国憲法の諸原則と相容れない「法秩序を破壊する暴挙」であり、同法案に基づく活動の犠牲者が新たな「英霊」として靖国神社に祀られる恐れがあると警戒。ローマ3・23~24、マタイ28・19~20、?コリント5・18~19、エフェソ2・14~18に基づき、和解の福音を全世界の人に宣べ伝えるつとめを委ねられたキリスト者として、「特定の国々を『悪の枢軸』と断定し、武力による先制攻撃をするような思想は、キリストの福音の本質に反する」と断じ、反福音的な思想に基づく米国のイラク攻撃と同じような思想に基づいて戦争に協力する用意のある「有事法案」の法制化に強く反対した。
 日本バプテスト連盟関西地方連合社会委員会も、米、英、豪、日の大統領・首相に、「戦争」反対の声明を送った。

米国クリスチャンはなぜ戦争支持?−−アンケート調査結果に見る反戦派との違い0304270301

今回のイラク戦争では、「熱心なクリスチャン」とされるブッシュ大統領を米国の多くの保守的なクリスチャンが支持したことが注目された。彼らはどんな理由でブッシュの戦争を肯定したのか——米・ケンタッキー州ルイビルにある南部バプテスト神学校博士課程で宗教社会学を専攻した渡辺聡氏が、戦争直前に賛成派と反対派の声を調査した。
  (渡辺氏による分析記事を週刊クリスチャン 新聞4月27日号に掲載)
・ケンタッキー州の人々の見解
・サウス イースト意識調査報告書
  
  2月27日から3月20日、ケンタッキー州ルイビルとレキシントンに住む187人に対し、有意抽出によるアンケート調査を行い、戦争に関する意見を聞いた。
 戦争を支持する人々の意見は、3月5日にルイビル市郊外にあるサウスイースト・クリスチャン教会で行われていた中東問題のクラス(写真左)から多くを集めた。同教会は、現在ルイビルで急成長中の、会員2万人を超えるメガチャーチであり、信仰的には保守的だ。参加していた167人全員に調査票を配り、127人分の意見を集めた(男性55人、女性70、無回答2人)。回答者の全員がクリスチャンであり、95パーセントが戦争を支持すると答えた。彼らは88パーセントが1週間に2回以上教会に行っていると答え、宗教的にはかなり熱心な人たちである。  テロへの不安  戦争を支持する理由の中には、いくつかの顕著な特徴が見いだされた。第1に、テロリズムに対する不安の感情が強く出ていた。彼らの回答からは「9月11日」が、彼らの心に癒しがたい傷をつくり、テロリズムに対してパラノイア(妄想)とも受け取れる不安と拒絶感をもっていることが伝わってくる。「われわれはテロリズムの悪に立ち向かい、倒さなくてはならない。それは国の生き方を破壊しようとしている」(40代、男性)や「もしサダムが核兵器を持ったらアメリカと同盟国のイスラエルに対して使うだろうと確信する」(40代、男性)に表れているように、回答者の多くは、イラクが大量破壊兵器を所有しており、それを自分たちに行使してくるという強い確信をもっていた。  楽観的な正義感  第2に、戦争を支持する意見は神学的な深い洞察によって裏付けられていない。「私たちは自由のために戦わなければならない」(50代、女性)の中に見られるように、自由と正義のために戦うという、アメリカ文化の中に一般的に根ざした価値観を擁護しているにすぎなかった。「サダムは恐ろしい男だ。彼はイスラエルを守るために、排除されねばならない」(70代、男性)のように、悪は単に力をもって排除すればよいという価値観も強く出ている。また「もし、私がイラクの人々のように独裁下に生きているなら、どこかの国が自分を救い出すことを望むだろう」(50代、女性)のように、自分たちの引き起こす戦争を他国の人々が喜んでくれるという、独りよがりな世界観も見いだされた。同時に、「(フセイン政権を倒すことによって)イラクの人々に彼らの未来を選ばせよう。サダムによって殺される人より、戦争によって死ぬ人のほうが少ないだろう」(50代、男性)のように、戦争に対する楽観論とも取れる意見もあった。このような楽観論は、彼らの「アメリカは正しいのだ」という信念によって支えられている。「戦争は、悪を抑えるための先制攻撃なら『Just War Doctrine (正義の戦争理論)』によって支持される。わが国は、他の世界の人々がどう考えようと、自国民を守る権利と義務をもっている」(30代、男性)や「われわれは、世界の他の国々のためにリーダーシップを取る道徳的義務を負っている」(60代、男性)のような意見の中に、そのような考えをうかがい知ることができる。また自己の正当化に伴い、「イスラム原理主義は、サタンである」(50代、男性)や「サタンはこの世の君であり、国連などの中に働いている」(50代、女性)のような、サタンに関する言及も現れている。  大統領の信心
 が支持の理由  第3に、今回の調査結果の中で、最も宗教的な側面が表出しているのは、彼らの大統領に対する姿勢であった。神という言葉が最も多く引き合いに出されるのは、彼らが大統領に言及する時であった。「ブッシュ大統領を信頼している。そして彼が日々祈りのうちに、神の指示を仰いでいると感じている」(70代、女性)のように、大統領支持の理由は政治的、論理的根拠によるものではなく、大統領の信心深い態度への共感によるものである。回答の中には、大統領を「神の人(a godly man)」(50代、女性)と同一化したり、大統領の決断に従っていれば、神に導かれて困難を乗り切ることができるという信仰的態度が強く表れているものもあった。
 このような傾向は、同教会以外で集めた29人分の戦争支持者の中にも同様に見いだされた。おそらくこのような意見は戦争を支持する保守的なアメリカ人の中に共通して見られるのだと思う。  世界情勢の複雑さ
 冷静に見極め反対  一方、戦争に反対する人たちの意見も集めた。ルイビルにあるウォルドルフ学校の教師と父兄、またウォルナットストリート・バプテスト教会で行われているインターナショナル・フレンドシップ集会に集まっていた人や、街角の人などから31の有効票を集めた(男性5人、女性26人)。
 戦争に反対する人たちの宗教的属性は多様であり、キリスト教以外の宗教も含まれる。無宗教と答えた人も6人いた。その意見には「戦争は、人間破壊だ。あまりに多くの罪なき人が死ぬ」(30代、女性、仏教)に見られるように、戦争によって失われる弱者の命への共感と同情が見られる。また、「戦争の開始はより大きな紛争を引き起こすだけだ。私たちの国が、不道徳的な行為をしていると感じている…わが国の政府は、戦争行為の複雑な波及について理解していない」(40代、女性、ユニテリアン)のように、戦争賛成の意見と比べてよりグローバルな視点に立っており、世界情勢の複雑さと戦争が引き起こす負の連鎖の可能性を冷静に見極めている。さらに、国連や他の諸外国と協力して問題を解決していきたいという願いが語られていて、それを無視するアメリカ政府を恥じ、傲慢であると感じている。「ブッシュ大統領によって作られたアメリカ人のイメージが世界に与えられることに、恥と当惑を感じる」(50代、女性、カトリック)や、「権力の問題だ。何をアメリカが優先しているかどうかだ。戦争は石油の企業とアメリカの寡頭政治を支えているだけだ」(30代、女性、無宗教)のように、大統領への否定的な感想や、政治権力に対する批判も強い。  宗教用語で相手を
 短絡的に否定せず  戦争によって、より深刻な事態が引き起こされてしまうという危惧も、多くの意見の中に見られた。戦争を支持する人たちと対照的に、宗教的な言葉がほとんど用いられていないのも特徴。31人中21人が、自分の信じる宗教を具体的に示したにもかかわらず、戦争支持者の回答の中にしばしば見られたような、宗教用語を用いて相手を否定したり、事態を短絡的に解決しようとする傾向は見られなかった。「国際紛争を平和に解決することは、進化して理性を持った人間の責任であると強く信じる」(50代、女性、カトリック)という意見のように、感情に流されることなく、理性的に解決していきたいという願いが強く感じられた。
 このような2つの対照的な見解を比べてみた時、アメリカの宗教社会学者ジェームズ・ハンターの用いる、「カルチャー戦争」という言葉が実感として感じられる。イラクとの戦争が開始される以前から、アメリカ国内にすでに目に見えない戦争が始まっているのだ。それは複雑な現代社会のもつ問題を解決するために理性で考え続けようとする人々と、考えることを拒絶して単純な「真理」を絶対化する人々との間に開始された戦争である。(レポート・渡辺 聡)