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元検事のピョン・ジェウク(左)は、刑務所内で詐欺師ハン・チウォンを使って冤罪に陥れた者たちを追い詰める策を練る。 (C)2016 SHOWBOX, MOONLIGHT FILM AND SANAI PICTURES CO., LTD ALL RIGHTS RESERVED.

先輩・後輩、はっきりと上下関係を律する韓国社会の文化的背景を逆手に取り、落ちこぼれ検事ピョン・ジェウクが、イケメン詐欺師のハン・チウォンを使ってかつて悪徳上司に仇討の手を打ち込んでいく痛快リベンジドラマ。社会正義を振りかざして暴力的な取り調べに自負心をもっていたピョン・ジェウクだが、刑務所に収監されてからはほとんど笑みを見せず法知識を駆使して刑務所内での自己保身と秩序を作り上げていく。静的なピョン・ジェウクと、頭と顔はいいがお調子者のハン・チウォンとの軽妙なコンビネーションがストーリー展開をテンポよく進めていて飽きずに楽しめる。

【あらすじ】
水原(スウォン)地方検察庁のピョン・ジェウク(ファン・ジョンミン)検事は、強面の容疑者にも手荒い取り調べで検挙率の高い熱血検事として知られている。大学受験3浪、司法試験4浪を経て11年かけて検事になった雑草根性を支えているのは、社会生活を乱す悪事を見過ごしにできない正義感。だが、強すぎる正義感は、行き過ぎて暴力的な取り調べを招きマスコミからも非難されている。

国内最大のリゾート施設の建設予定地で、工事中止を求めて占拠している環境保護団体と、強制退去に出動した警察が衝突し環境保護団体の一部が暴徒化し多くの負傷が出て警察官1名が頭を殴打され意識不明にい陥る事態になった。容疑者としてイ・ジンソク(パク・ジョンファン)が逮捕された。担当検事には、暴力的な取り調べで問題になったばかりのピョン・ジェウクがあたった。だが、イ・ジンソクは容易には自白しない。間もなく、上司の次長検事ウ・ジョンギル(イ・ソンミン)は、議員に立候補して政界進出を狙っていることもあり、手荒な取り調べで悪事を暴こうとするピョン・ジェウクからソウル中央地検のエリート検察官ヤン・ミヌ(パク・ソンウン)への担当交代を命じる。だが、ピョン・ジェウクは承服せず、調査官を外して一晩イ・ジンソクを取り調べた。翌日、ソウルからやって来たヤン・ミヌ検察官といっしょに取調室へ向かうとイ・ジンソクは死亡していた。

取り調べ中の容疑者死亡事故は、一大センセーションを巻き起こし次長検事ウ・ジョンギルも謝罪会見をせざるを得ない。少し手荒い行為で取り調べたが、死亡するほどのことは行なっていないと容疑を否認するピョン・ジェウクに、ウ・ジョンギルは無罪を証明できない以上、容疑を認めれば情状酌量を勝ち取って減刑させると約束する。だが、裁判ではそのような様子も見られないまま検察の求刑どおり懲役15年の判決が下された。

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高校中退の詐欺師ハン・チウォンは大胆にも検事になりすまして黒幕の悪事を暴いていく。 (C)2016 SHOWBOX, MOONLIGHT FILM AND SANAI PICTURES CO., LTD ALL RIGHTS RESERVED.

服役して5年後。警察と検察の裏事情にも詳しいピョン・ジェウクは、服役囚の再審請求・減刑のためや、刑務官たちの生活トラブルの解決のためにも豊富な法律知識を駆使して助言し刑務所内でも幅を利かせていた。そこに前科9班のイケメン詐欺師ハン・チウォン(カン・ドンウォン)が服役してきた。ペンシルバニア大学卒との触れ込みで会話に時折り英語を交える気障な男だが、聡明で人当たりはいい。ハン・チウォンが、死亡したイ・ジンソクと同じ講釈を自慢げに語っているのを聞いてピョン・ジェウクは何かを感じた。ハン・チウォンを問い詰めると、案の定イ・ジンソクらといっしょに環境保護団体に成りすまして警官らを殴りつけたという。環境保護団体に紛れ込むための教育や報酬は、ウ・ジョンギルと親しい関係にある極東開発社長チャン・ヒョンソク(ハン・ジェヨン)が仕切っていたという。ピョン・ジェウクは、いまは選挙に立候補しているウ・ジョンギルに嵌められたことを確信した。再審申請をしようとしているハン・チウォンの弁護士に助言して詐欺罪の立証不十分を立証して出所させると、自らの冤罪を晴らすため刑務所内から携帯電話でハン・チウォンに指示を出し虚実混合の華麗な手段でウ・ジョンギルを追い詰めていく…。

【みどころ・エピソード】
先輩・後輩、はっきりと上下関係を律する韓国社会の文化的背景を逆手に取り、エリート育ちではないピョン・ジェウクが、ハン・チウォンを使って打ち込んでいく手段には味痛快さがある。社会正義を振りかざして暴力的な取り調べに自負心をもっていたピョン・ジェウクだが、刑務所に収監されてからはほとんど笑みを見せず法知識を駆使して刑務所内での自己保身と秩序を作り上げていく。静的なピョン・ジェウクと、頭と顔はいいがお調子者のハン・チウォンとの軽妙なコンビネーションがストーリー展開をテンポよく進めていて飽きずに楽しめる。

ピョン・ジェウクが、「重荷を負うものは私のもとに来なさい。あなたがたを休ませてあげよう」(マタイ福音書11章28節)と、ヨハネ福音書16章33節の聖書の言葉を語るシーンが2か所ある。それぞれに、重要なシーンで使われているので興味深い。 【遠山清一】

監督・脚本:イ・イルヒョン 2015年/韓国/126分/映倫:G/英題:A Violent Prosecutor/ 配給:ツイン 2016年11月12日(土)よりシネマート新宿、シネマート心斎橋ほか全国順次ロードショー。
公式サイト http://kareinaru-revenge.com
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