内閣総理大臣 安倍晋三 殿

私たちは、現在開催中の第185回国会(臨時会)に上程予定の「特定秘密保護法案」に、以下の理由から反対します。

1)本法案「第一章総則(目的)」には、なぜ既存の自衛隊法などでは秘密漏えいを防ぎえないのかなど、客観的理由が一切明記されておらず、本法案の目的からして賛成できる根拠が見つかりません。

2)本法案の「特定秘密」の指定に関する「別表」各項目は一義性に欠け、「拡張解釈」の余地が含まれています。したがってある情報がこの項目に該当するか否かは、時の「行政機関の長又は警察庁長官」の恣意性に委ねられることになり、国民の基本的人権(日本国憲法第三章)を不当に侵害する危険性を帯びています。

3)本法案の規定する「特定秘密を取扱う業務を行う者」及びその関係者に対する「適性評価」の内容・方法は、国民の基本的人権を不当に侵害する危険性を帯びています。

4)本法案には、ある情報が「特定秘密」と指定された後、その秘密事項が行政機関によって適正に取り扱われているかを審査する機能(特定秘密事項保存義務、秘密解除期限設置、第三者審査機関設置など)が欠落しています。

5)本法案には、国民の「知る権利」「取材・報道の自由」について「十分に配慮しなければならない」という主旨の文言が盛り込まれるとされていますが、これはあくまでも「努力規定」でしかありません。しかも本法案に抵触する者に対する厳罰は不変更であり、実質的に本法案全体が国民の「知る権利」「取材・報道の自由」を著しく制限していることに変わりはありません。

6)本法案(とくに第九条)が「日本国憲法改正草案」(自由民主党、平成24年)、「集団的自衛権」行使容認の動き、「日本版国家安全保障会議」設立の動きなどと連動しており、実質的に米国と共に外国で戦争をなしうるための備えであることは明白です。これらの一連の動きは日本国憲法第九条に抵触する危険性があり、憲法改正の国民的議論を待たずして本法案を先に通すことは許されません。
7)総じて本法案は、次にうたわれる日本国憲法前文の精神に著しく反したものと考えられます。

「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである」。

 したがって、私たちはこれに続く宣言に声を合わせます。

「われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する」。

以上の理由から、私たちは特定秘密