インタビュー:映画「幸せなひとりぼっち」のハンネス・ホルム監督
スウェーデン映画「幸せなひとりぼっち」(原題:オーヴェという男)は、片田舎に暮らす定年を間際の気むずかしい老人オーヴェの物語だが、各国の国際映画祭で数多くの観客賞を受賞している話題作品。日本では12月17日(土)より新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開される。寡黙で気むずかしい老人と隣家の外国人移民家族との交流を描いた作品が、各国で幅広い年齢層の心を動かしているものは何か。本作の紹介とともに、来日したハンネス・ホルム監督に話しを聞いた。 <12月3日再編集版)
**映画の紹介は下記URLへ**
http://クリスチャン新聞.com/?p=13429
両親のラブストーリーを
描いてみたいと要請受諾
映画「幸せなひとりぼっち」には、原作がある。コラムニストのフレドリック・バックマンが、気むずかしい父親と買い物に行ったときのエピソードをブログに書いたことが評判になったのをきっかけに小説『オーヴェという男』が生まれ、瞬く間に評判になった。その映画化の話が来たとき、「最初はお断りしました。頑固な年寄りの男性が、外国の若い女性の家族と交流していくうちに頑なな心が解き放たれていくというのは、ありふれた物語ですからね」。だが原作を読んで「主人公と亡くなった妻の若いときの愛の物語が中心にあって、それがとてもおもしろかったのです。私は、自分の両親のラブストリーもこの作品に作り込めるのではないかと思い、映画にしてみたい決断しました」。
父親世代が若いカップルの頃のラブストーリーと懐かしい時代のムードや価値観が表現されている原作の映画化。「観客層としては40~50代とその上の世代が対象になるかなと考えていました」。ところが、15年のクリスマスシーズンに公開上映されると、5週連続1位を記録した。「観客の年齢層も子どもからお年寄りまで見てくださいました。ただ、子どもの世代には、オーヴェが何度も自殺を試みるので心配しましたが大丈夫でした」。
離婚率が高い国だが愛情
を互いに尊ぶ物語に好感
何度も自殺を試みるシーンでは、オーヴェと父親の思い出や妻ソーニャとの幸せだった結婚生活を回想するシーンへと展開していく。「幅広い年齢層の観客に支持されのは、オーヴェとソーニャの若い時代のラブストリーが魅力的な物語として若い世代にも受け入れられたのではないかと思います。私個人としても、バイオレンス映画が多く作られているので、本作のようなラブストーリーの作品がもっと作られ、観られるべきではないかと思います。
スウェーデンは、依然として高い離婚率ですが、それだけに、お互いの価値観や人間関係の難しさを経験しても、すぐに離婚するようなことは考えずに、長く添い遂げたオーヴェとソーニャの物語に魅力を感じたのでしょう。SNSに寄せられたたくさんのコメントのなかに『この作品が大事なものを想い起させてくれた』という内容のものを受け取りました。とてもうれしかったです」。
ソーニャ以外の他人に心を開かなかったオーヴェだが、ソーニャの教え子や隣家のパルネヴァネの家族など関わらざるを得ないつながりが徐々に広がる。ルター派教会に通うクリスチャン監督は、「デジタル・ネットワーク社会で、人々は教会のように集い合うような場所を忘れがちなのでしょうか。でも、どのような宗教でも、人々が共に集う場所は必要だと思います」と語っていた。 【遠山清一】
監督:ハンネス・ホルム 2015年/スウェーデン/116分/原題:En man som heter Ove 配給:アンプラグド 2016年12月17日(土)より新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷、名古屋・名演小劇場ほか全国順次公開。
公式サイト http://hitori-movie.com
Facebook https://www.facebook.com/hitori.movie/
*AWARD*
2016年:ゴールデン・ビートル賞(スウェーデン・アカデミー賞)主演男優賞・メイクアップ賞・観客賞受賞。シアトル国際映画祭主演男優賞(ロルフ・ラスゴード)受賞。カブール・ロマンチック映画祭観客賞受賞。トラバースシティ映画祭観客賞受賞作品。