ドイツのドイツ・ラインフンスリュック郡の丘陵地の風力発電所 (C)Kプロジェクト
ドイツのドイツ・ラインフンスリュック郡の丘陵地の風力発電所 (C)Kプロジェクト

脱原発訴訟弁護士であり映画監督・河合弘之として「日本と原発 私たちは原発で幸せですか」「日本と原発 4年後」に続く第3作目。前2作品は原子力発電の危険性を訴え続け、本作ではポスト原発のエネルギー対策としての「再生可能エネルギー」(自然エネルギー)をテーマに、活況著しい世界の“いま”をルポルタージュしている。

原発1機の電力生産量1ギガw(100万キロw)
風力発電機150基での電力生産量30万キロw

河合監督は、原発の危険性を訴える度に「やめて、エネルギーはどうするのか」との問いを受けてっきた。その問いへの回答が、「自然エネルギーと省エネしかない」ことを、実際に取り組んで著しい実績を上げている世界の国々・地域を訪ねてその実態をルポし、実証的に本作で描いている。

河合監督と企画の飯田哲也(環境学者)は、150基の風力発電機が立ち並ぶドイツ・ラインフンスリュック郡の丘陵地を訪ねる。原発1機の電力生産量の目安は1ギガw(100万キロw=ワット=)、150基の風力発電機の電力生産量は30万キロw。安全性の高い自然エネルギーで危険性が高く問題が多い原発一機分の30%の電力を生産している。また、ドイツでは、6ギガwの自然エネルギーを生産(2015年)し、世界の自然エネルギー工場の実験場として「安全で、楽しくて、儲かる」産業に成長している。

日本での進展を阻む3つの壁

日本でも自然エネルギーによる電力生産に真剣に取り組んでいる自治体はある。長野県上田市は、自然エネルギーでの電力自給100%を2017年度の目標に置いている。兵庫県宝塚市は、地熱・バイオ・太陽光など発電システムへの取り組みが紹介される。だが、政府は原発一辺倒のエネルギー政策を再開しようとする。日本では何が自然エネルギーへの転換を阻んでいるのか。本作では、・各大手電力会社、・各地の空き容量ゼロ、・連携負担金など3つの壁を分かりやすく解説している。

巨大な風力発電用プロペラの前に立つ河合弘之監督(弁護士) (C)Kプロジェクト
巨大な風力発電用プロペラの前に立つ河合弘之監督(弁護士) (C)Kプロジェクト

デンマーク、中国での自然エネルギーへの方向転換や米軍の省エネ・自然エネルギー発電への取り組みは、フクシマ原発事故が明確な転換をもたらした。一方で逆走する日本。原発とは異なり、リスク分散型の自然エネルギーシステムは、世界の技術促進と著しい業績向上によって投下資本を急速に減少させている。

日本でも昨年末に公開された化石燃料からの脱却を説いた映画「TOMORROW パーマネントライフを探して」( http://www.cetera.co.jp/tomorrow/ )や、ドイツ人監督カール・A・フェヒナーによる映画「第4の革命」(2010年)での自然エネルギーへの転換と足跡の再検証など本作の明確な論旨と実証はタイトルどおり「日本の再生」への一指標を記している。 【遠山清一】

監督:河合弘之 2017年/日本/ドキュメンタリー/ 配給:Kプロジェクト 2017年2月25日(土)より渋谷ユーロスペース、横浜シネマリンほか全国順次公開。
公式サイト http://www.nihontogenpatsu.com