(C)Karine Arlot
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仕事場のパリから家族のいる郊外の別荘へ。車をひた走りするのは映画プロデューサーのグレゴワールだ。年頃の長女やあどけない次女、三女、そして妻にとっても家族5人で過ごす時間は特別だ。話したいことは山とあり、笑いは絶えない。仕事の携帯も手放せないグレゴワールだが。

グレゴワールが忙しいのは、経営する映画会社の資金繰りが行き詰まっているためだ。前から約束していた、家族とのイタリア小旅行は行ったが、頭の中は仕事のことばかり。パリに戻ってからも日々、資金集めに奔走するものの、銀行の融資も途切れる。追い詰められたグレゴワールが選んだ道は、「死」だった。

娘たちと一緒に遊び、歴史遺産の前でうんちくを語っていた大好きな父はいない。誇りに思い、信じていた夫が目の前にいない。喪失感と「なぜ私たちをおいて」「どうして」と錯綜する家族の思いをかき消すように、借金や契約中の映画撮影、会社の整理など次々と問題が押し寄せる。何よりも誰よりも、家族が大切だったことはグレゴワールとて同じだっただろう。しかし、現実に追い詰められてしまった。遺された家族がその仕事を片付けながら、少しずつ父の、夫の死を受け止めていく。

目の前の出来事よりも心に流れる思いが家族の絆を永遠のものにしていく。エンディングでかかる「ケ・セラセラ」は、現実を超えていく家族の強さと希望も感じさせる。

監督・ミア・ハンセン=ラブ 配給・クレストインターナショナル5月29日より恵比寿ガーデンシネマでロードーショー、他全国順次公開

公式サイト http://www.anonatsu.jp