日本とポルトガルが近代的な外交関係を樹立した修好通商条約150周年を記念して、「ポルトガル映画祭2010」(主催:東京国立近代美術館フィルムセンター、一般社団法人コミュニティシネマセンター、ポルトガル大使館)が、9月17日(金)―10月3日(日)の東京国立近代美術館フィルムセンター大ホール(月曜休館)を皮切りに、金沢市、京都市、広島市など10数か所で巡回開催される。

映画祭のテーマとなっているマノエル・ド・オリヴェイラ監督(1908竏秩jは、20世紀のポルトガル映画を代表する監督で、70歳を超えてからも年に1作のペースで新作を撮り続けている。今回の映画祭には「アニキ・ボボ」(1942年)、「神曲」(1991年)など7作品が出展されている。中でもオリヴェイラ監督自身が「作品歴のターニングポイント」と述べた「春の劇」(1963年)は、16世紀に書かれたテキストに基づいて山村クラリャで上演されるキリスト受難劇の記録映画で、今回の上映が期待される。

‘巨匠たち’に連ねられているのは、ジョアン・セーザル・モンテイロ監督(「黄色い家の記憶」など3作品を出展)、パウロ・ローシャ監督(「青い年」「恋の浮島」など3作品を出展)ら「ノヴォ・シネマ」(新しい映画)のジャンルを確立した監督たちの作品を中心に、アントニオ・レイス/ナルガリーダ・コルデイロ監督の「トランス・オス・モンテス」(1976年)、ペドロ・コスタ監督の「骨」(1997年)、テレーザ・ヴィラヴェルデ監督の「トランス」(2006年)、ミゲル・ゴメス監督の「私たちの好きな八月」(2008年)など、1940年代から近年までの代表作・優秀作品が出展されている。

日本とポルトガルの修好通商条約が締結された1860年8月から36年後にリスボンでサイレント映画が上映された。新しい時代への息吹から1950年代に入り下火となった映画。60年代にフランスのヌーヴェルヴァーグなどと影響し合いながら「ノヴォ・シネマ」のアヴァンギャルドな作品に取って代わっていく。キリスト教文化への視座を探りながら、そのようなポルトガル映画の変遷を逍遥してみたい。

上映作品の紹介、巡回する各地の開催予定などは公式サイトを参照ください。  【遠山清一】

公式サイト→http://jc3.jp/portugal2010/