©2010 Vers til Cinema, Globomedia & Antena 3 Films. Exclusive Distributor: IMAGINA INTERNATIONAL SALES. All Rights Reserve
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国を二分したスペイン内戦(1936―39年)末期から終結直後のあたりを時代設定に置いている。家族内、隣近所、親しい友達・知人同士が敵味方に別れて戦う内戦の深い傷。一方で、心からの信頼と肉親に対する思慕を深め、求め続ける切なさ哀しさ。不安定な世相と同じ国民同士が殺し合う内戦の中でも、生きるため、人々の心から失われてほしくないものを生み出し、演じ続ける芸人たち。そんな30年代を生きた芸人たちの魂への敬意と賛歌が哀しくも温かく伝わってくる作品だ。

ピカソの「ゲルニカ」でも知られるように、この内戦から戦車や空からの爆撃が攻撃方法の主要な位置を占めた。この物語の冒頭でも、その無差別的な攻撃の悲劇から語り始まられる。

喜劇役者のホルヘ(イマノル・アリアス)が興行を終えてマドリードの自宅へ帰る途中、空襲警報が鳴る。戦火の中を急いで家に向かうが、その空襲でアパートは崩れ落ち妻と一人息子を亡くした。傷心のまま町を離れ一年ほど各地を転々としたホルヘだが、内戦が終結したマドリードの劇団に帰ってきた。

芸人たちが集まるカフェテリアで仕事の斡旋が行われていた。そこで、腹話術師で相棒を組んでいたエンリケ(ルイス・オマール)と再会するホルヘ。エンリケは、芸人だった両親と内戦で離れ離れになり、二人は死んだと聞かされ孤児となった少年ミゲル(ロジェール・プリンセプ)を引き取り、いっしょに暮らしていた。

寂しくなると母親から教わった鳥を紙で折るミゲル。3人の共同生活が始まると、自分と同い年の息子を亡くしているホルヘを’師匠’、’パパ’と呼んで慕い、芸のネタを教えてほしいとせがむ。だがホルヘは、そんなミゲルに厳しく、時には辛く当たる。

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女性歌手のロシオや踊り子のメルセデスらが加わり、ホルヘたちの劇団は馬車を連ねて地方巡業へ旅立つ。だが、ホルヘには当局の監視がついているようだ。内戦が終結するとフランコ軍事独裁政権が樹立し、激しい反対勢力への弾圧が始まった。5万人を超える政治思想犯などへの死刑判決。知識人や芸術家への思想統制や芸人たちの表現の自由も厳しく制限されるようになり、国外へ亡命する者たちが後を絶たない。

旅を続ける劇団にも、当局の官憲があからさまに尋問を行うようになってきた。それでも、ホルヘは民衆の抑圧されたうっぷんを晴らすかのように「フランコとは暮らせない」を舞台で歌い、喝さいを浴びる。そんなホルヘを誇らしく見るミルゲ。だが、エンリケは危機感を強くし、アメリカへの亡命を決意してホルヘを説得する。そして、自由の国への旅立ちの列車が出発するとき、官憲がホルヘに近づいてきた。。。

戦火と思想統制・弾圧の暗く厳しい時代を見つめながら、芸人たちが得意の芸で人々の心にひとときの安らぎと幸福感を贈りつつづける。時には、体制への不満と批判を子どものにも分かる言葉やジェスチャーと笑いに包み込んで。そのエンターテイメントの豊かさに、心が温まり勇気づけられてくる。第34回モントリオール世界映画祭で観客賞を受けるなど数々の映画祭で高い評価を得ているのもうなづける。

監督:エミリオ・アラゴン 2010年/スペイン/123分/原題:Pajaros de papel 配給:アルシネテラン 8月13日(土)より銀座テアトルシネマほかにて全国順次公開。

公式サイト http://www.alcine-terran.com/paperbird/