Movie「地球にやさしい生活」――大都会NYでの実験エコ生活
原題の’No Impact’とは’地球に影響を与えない’との意。大自然豊かな農村部などに転居して、井戸水や風力発電、無農薬栽培で暮らすのなら分からなくはない。だが、世界中から高級食材や生活を便利に過ごすためのあらゆる商品と機能がそろっている大都会ニューヨークで省エネでエコロージーライフを1年間実践したところに、様々な泣き笑いと人生観を転換するような知恵の創出に刺激されるドラマのようなホントの話。真面目に楽しめる作品だ。
作家でブロガーのコリン・ビーヴァンは、ジャーナリストの妻ミッシェル、2歳のイザベラとの3人家族でニューヨーク市5番街のアパートで暮らしている。06年11月にビーヴァンは、ミッシェルの同意と協力を得て「ノー・インパクト・プロジェクト」を立ち上げた。大都市ニューヨークの真ん中で、できるだけ環境にやさしい省エネ・エコライフを1年間続けるというプロジェクト。ノー・インパクト・マンのウェブサイトを立ち上げて、このプロジェクトの進捗状況をブログにも公表する。この映画の撮影も、そのプロジェクトを記録する一環なのだ。
アメリカはもちろん世界中のマスコミも、コリンのノー・インパクト・プロジェクトの成り行きに注目した。まずゴミを出さない生活の実験。新しく物は買わない。使い捨て容器や商品は使わない。CO2削減のため自動車は乗らずにどこへ行くのにも自転車移動。さらには、地産地消のため、ファーマーズマーケットで食品は調達。ついには自宅の電気も使わずキャンドルライドで生活へ。
言うは易し行うは難し。イザベラは健気に面白がるが、消費好きコーヒー好きテレビ好きなミッシェルは、次第にストレスがたまってくる。また、2人が抱く’夢’と協力し合う生活への意識のずれも生じてくる。
我慢、工夫、それまでの生活で必要と思っていたものが、要らないものであったことの発見。テレビがなくクーラーも使えない真夏の部屋は、とても居られるものではなく3人で公園へ行って遊ぶ生活へ。電気のブレーカーを切ったはいいが、冷蔵庫が使えなければ食糧品を冷やすこともできない。しかたなくソーラーパネルを借りてきてくる。そうまでして、1年間の実験生活からビーヴァン一家が学んで得たものは?
今年3月に起きた東日本大震災による被災者救済と復興事業および半年を経過したいまも収束していない福島原発の事故は、日本の様々な構造・機構の再検討を迫っている。電力を大消費し、ゴミを大量生産する大都会。この実験生活の記録とドラマは、日本に住む私たちへもやさしくチャレンジしているかのようだ。 【遠山清一】
監督:ローラ・ギャバート、ジャスティン・シャイン 2009年/アメリカ/92分/原題:NO IMPACT MAN 配給:アンプラグド 10月8日(土)より新宿武蔵野館・ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開。