©2010 STUDIOCANAL & STRIKE ENTERTAINMENT
©2010 STUDIOCANAL & STRIKE ENTERTAINMENT

‘悪魔祓い’(エクソシズム)を主題にしたモキュメンタリーのホラー作品。聖書には、悪魔の存在が記されているのだから、この種の映画を見るまでもないと考える向きもあるだろう。これまで、エクソシズムとキリスト教を描くとカトリック系の神父がエクソシストで登場することが多いのだが、この作品ではバプテスト系の牧師。しかも、悪魔の実在を信じていないというこの牧師が、どう変わっていくのか、その決断と行為はなど見方によっては興味深い作品に仕上げられている。実在するドキュメンタリーフィルムがモチーフになっていることもあり、リアルな’怖さ’も評判になっている。

ルイジアナ州バトンルージュで牧会するコットン・マーカス牧師(パトリック・ファビアン)は、牧師家庭に生まれ8歳の頃から日曜日に礼拝説教を語ってきた。しかもエクソシズムを行う牧師として地域では知名度もある。だが、コットンは悪魔の存在を信じていない。近隣で’悪魔祓い’を行なっているとき事故で窒息死したニュースを読み、そういう事故が起こらないうちにもう終わりにしようと思い、自分が行ってきたエクソシズムの裏側、いわば種明かしをドキュメントで撮影することを許可したコットン。
取材に来たディレクターのアイリスとカメラマンのダニエルに、コットンは「悪魔は実在しない。ただそう思い込んでいるだけだ。その思い込んでいる心の苦しみから解放してあげることが目的」と語り、十字架から煙が出る装置や壁に掛かっている絵が動き出す仕掛けなどを披露していく。そして、最後のエクソシズムに選んだのは都市から遠く離れたアイヴァンウッドという小さな町に住むルイス・スウィーツァー(ルイス・ハーサム)からの依頼だ。16歳になる娘のネル(アシュレイ・ベル)に悪魔がとり憑き、家畜が殺されているという。

ルイスの家を訪ね、ネルと対面するコットンたち。アイリスが履いていたブーツが気に入りプレゼントされて無邪気に喜ぶネル。だが、夜になるとネルの様子は一変する。いつものように’悪魔祓い’の儀式を始めるコットン。功が奏して、治まり寝入っているネル。ルイスに神のご加護と祝福があるように祈り、その夜のうちに帰途につくコットンたち。

©2010 STUDIOCANAL & STRIKE ENTERTAINMENT
©2010 STUDIOCANAL & STRIKE ENTERTAINMENT

だが、それでは終わりではなかった。泊まったモーテルで、血相を変えて来たアイリスにコットンは呼び出される。考えられないことにネルがアイリスの部屋に座っているのだ。とりあえず病院にネルを連れて行き、ルイスに連絡する。病院ではルイスの承諾がないと診察を続けることができないが、コンサバティブな信仰を持つルイスは医者を信頼せず、エクソシズムを強く希望する。しかたなく、ルイスの家に戻り’悪魔祓い’を続けるコットン。今度はコットンの仕掛けではない、さまざまな現象が起こり真剣に’悪魔祓い’を行なっていくコットン。ついには「悪魔は間違いなく、実在する」と確信し、神に祈りながら立ち向かっていくのだが。。。

ドキュメンタリー風に仕上げられたことに関して、ダニエル・スタム監督は「この作品をとおして、これは超自然現象なのか? それとも人的な悪なのか? ネルは精神分裂者なのか? とれとも悪魔憑きなのか? ということに疑問を持ってほしい」と語っている。そして「それが、私にとっては興味深い問題だ。映画が追うのは信仰についてであり、人生において何を信じるか、そしてそれがどう人生に影響するか、どのように人を助けるのか、または崩壊してしまうのかを問いかけている」という。パトリック・ファビアン、アシュレイ・ベルの演技は、そのリアルな問いかけを十分に感じさせてくれる。
キリスト教界の中でも、奇跡や’霊の戦い’などについて様々な捉え方と意見がある。スタム監督がこの作品で投げかけている問に、どうレスポンスしていくのか興味深い。   【遠山清一】

監督:ダニエル・スタム 2010年/アメリカ/87分/原題:The Last Exorcism 配給:コムストックグループ/クロックワークス 2011年10月8日(土)より新宿バルト9、TOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国ロードショー
公式サイト http://www.lastexorcism.jp/top.php