CD「アローン・バット・ネヴァー・アローン」(全8曲 1,800円税込)。
CD「アローン・バット・ネヴァー・アローン」(全8曲 1,800円税込)。

今年2月、B’zの松本孝弘がラリー・カールトンとの共同アルバムでグラミー賞を受賞して話題になった。そのラリー・カールトンの1986年発表のアルバム。カールトンとしても大きな転換点となったアルバムだと思われるが、彼がクリスチャンになって最初のアルバムということで、当時、日本のクリスチャンミュージック界でも話題になった。

カールトンと言えば、ジャズ・フュージョン(当時はクロスオーバーとも呼ばれた)屈指のギタリストで、ギブソン社のES335というエレキギターがトレードマークだった。それが、本作では全編アコースティックギターでの演奏になっている。一般の音楽雑誌でも、その変化の大きさの理由として、クリスチャンになったことを取り上げることが多かった。「独りだけども独りでない」という意味のタイトル曲をはじめ、クリスチャンなら「なるほどね」と信仰的な意味ととれる曲目が並ぶほか、ソロで演奏される「主の祈り」など、信仰的な内容が前面に出ている。

もっとも、カールトンはその後、クリスチャンミュージック界を活動の舞台としたわけではないので、本作は、彼の唯一の信仰的なアルバムといえるだろう。

日本のフュージョングループのTスクエアが、カールトンの演奏を目の当たりにしたときに、「なんて歌うギターなんだ!」と言っていたのが、カールトンのギターをよくいい表している。今ならスムースジャズと呼ばれるサウンドの中、ピュアなアコースティックギターが救われた喜びや、導きの感謝や賛美を優しく歌っている。TVの天気予報のバックにかかっていそうな音楽だが、環境音楽のように聞き流すにはもったいない。じっくりと聴いていただきたい。  【柳 聖生】

http://www.universal-music.co.jp/jazz/artist/larry_carlton/uccu6135.html