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2011年の今年の漢字に「絆」が選ばれた。東日本大震災後、被災地・被災者の援助に人々の心が結び合わされていった思いは、年が明けても、まだ心のどこかに刻まれている。震災当日、地震の直後に飼い犬が騒ぎ出し、首輪にリーシュを着けたままいつもの散歩道とは反対の山の方へ駆けて行く。飼い主の老婦人が追いつくとまた走りだし、飼い主を津波から守ったエピソードがある。生きものと人間にも、何か絆のようなものが感じられる。

マイケル・モーパーゴの児童文学『戦火の馬』を原作にS・スピルバーグが監督したこの作品には、馬と人間とのあいだに生まれた強い信頼と希望をめざしていく姿が描かれている。

舞台は、第1次世界大戦前夜。英国デヴォンの小さな牧場でサラブレッド系の仔馬が生まれた。誕生する瞬間を見た少年アルバートは、鹿毛の美しいその仔馬に魅了される。

ある日、農耕馬を買いに行った父テッドは、地主との対抗心から勢いでその仔馬を競り落して帰ってきた。仔馬に「ジョーイ」と名付けて喜ぶアルバートとは反対に母ローズは、大金をはたいて農耕には向かない馬を買ってしまったテッドに憤りを隠せない。馬具を付けようとすると暴れるジョーイにアルバートは、いつものように訳を話しなだめながら馬具を付け、開墾に成功する。だが、戦争が始まると父はジョーイを陸軍中尉ニコルズに売ってしまう。アルバートは引き渡されるとき、「絶対に、もう一度会えるからね」と約束し、祖父の形見の表彰旗をくつわに着けてジョーイを送り出すが。。。

20世紀初頭の美しい田園風景とそこを戦場に展開される戦闘をリアルに描いていく映像。悲惨な状況の中で人間と馬との生への渇望と情熱。原作者モーパーゴは、当時英国から外国へ送られた馬が100万頭に及び、生還できたのは6万2000頭に過ぎなかったことを調べ上げたといわれる。戦争や経済的効果など人間の都合で生命が奪われていく牛馬や生きものたち。人間に名前を付ける特権が付与されているのは、愛情を持って信頼し、生かすための責任でもあるのだろう。人間と生きものとの信頼と希望への絆。様々な生命が息吹く春に、生きるものへの信頼と希望を語り合いたい。 【遠山清一】

監督:スティーブン・スピルバーグ 2011年/アメリカ/147分/原題:WAR HORSE 配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン 2012年3月2日(金)より全国ロードショー。

公式サイト:http://disney-studio.jp/movies/warhorse/