映画「ストラッター」――オフビートなロックにのって楽しめる心のロードムービー
音楽とアメリカ西部の空気感がマッチしたモノクロームの質感。グランジロックやカントリープレイズのセッションなど生活感あふれる音楽シーン。だが、曲名やロックのジャンルを知らなくても、溶け込める。
ストーリーは、失恋話からはじまる。青春映画としてはオーソドックスなロードムービーの仕上りだが、ロックミュージシャンたちの気ままなストーリー展開で、脚本と演出のくすぐりを存分に楽しめる。
憧れの’ミューズ(女神)’と思い半年も付き合ていたジャスティーンから突然別れを告げられたロッカーのブレッド(フラナリー・ランスフォード)。失意のうちに自宅に戻るしかない。だが、ジャスティーンは、ブレッドがリスペクトしているロッカーでレコード店を持っているデイモン(ダンテ・ホワイト=アリアーノ)と付き合っているという噂が耳に入る。頭に来て、デイモンの店に文句を言いに行くが、いざ面と向かうと何も言えず、逆に入荷したばかりの高値のアルバムを買ってしまう。だがジャスティーンへの心残りは後を引き、いつまでもぐずっている情けなさ。しかも、バンド仲間はそれぞれ自分の生き方を探すために解散。
自宅では、母親ルー(ルアナ・アンダース)の恋人でミュージシャンのフランク(クレイグ・スターク)が仕事もせずにごろごろしている。だが、ブレッドとフランクはなぜか気があう。ルーは、「ミューズなんかじゃなく本物の女を愛しなさい」と粋な言葉で励まし、いつもつるんでいる女友達のクレオ(エリーズ・ホランダー)と付き合えと勧めるが、ブレッドにはピンとこない。
周囲の励ましもあって、次第に立ちなりつつあるブレッド。しかもデイモンは、「タイプじゃなかった」と早々と別れ、ブレッドに自分の仕事を手伝えと誘ってくる。フランクは、そんな二人をグラム・パーソンが命を絶ったヨシュア・ツリーへと「砂漠の旅へ」と誘う。
ブレッドは、’ミューズ’がみつからないと、まったく前を向いて進めない。だが、母親はそんなブレッドに「’ミューズ’ではなくほんものの女を愛しなさい」と諭す。ブレッドにとってほんものの女とは?。
愛し愛されたい人を探す。それは、結局自分探し。どこか時代が止まっているようなオフビートの音楽と雰囲気。自分の心のなかを見つめるには、ちょうどよいテンポとムードが流れている。 【遠山清一】
監督・脚本・製作:アリソン・アンダース、カート・ボス 2012年/アメリカ/87分/B&W/原題:Strutter 配給:フルモテルモ、コピアポア・フィルム 2013年9月14日(土)より東京・ヒューマントラストシネマ渋谷、大阪・シネリーブル梅田ほか全国順次公開。
公式サイト:http://strutter-the-movie.com
Facebook:https://www.facebook.com/pages/ストラッター/158343917682329?fref=ts