映画「ゼロ・グラビティ」――宇宙の美しさと畏敬そして重力ゼロの怖さを体感
1994年と98年にNASA搭乗科学技術者としてスペースシャトルで日本人女性として初めて宇宙飛行した向井千秋さん。2010年に山崎直子さんがNASA搭乗運用技術者として2人目の日本人女性宇宙飛行士になったニュースは、まだ記憶に新しい。
どこか、宇宙を身近に感じさせてくれた女性宇宙飛行士だが、「ゼロ・グラビティ」の女性宇宙飛行士ライアン・ストーン(サンドラ・ブロック)の冒険は宇宙から見る地球の美しさとともに重力ゼロの世界での浮遊感の隔絶された恐怖感を文字通りリアルに体感させてくれる。大型スクリーンの3D映画でなければ、この地球の外にある世界を無意識に体験することはできない作品だ。
スペースシャトル「エクスプローラ」の船外でミッションを実行している3人。ベテラン飛行士のマット・コワルスキー(マット・コワルスキー)が、軟着陸用の小型ジェット初飛行のライアンの作業場所に来て地球の地表から上る太陽と朝焼けの美しさを讃える。それからほどなく、ヒューストンのNASAコントロールセンターから作業を中止して船内に戻るよう指令が来る。地上からミサイルで破壊された廃棄宇宙船の残骸(スペースデブリ=宇宙ゴミ)が、爆発時の猛スピードでスペースシャトルに向かっているという。だが、船内に避難する前に無数の残骸が飛んできてアームを破壊し、ライアンは無重力空間へと回転しながら放り出されて行く。
マットが危機一髪で追いつき、損傷の大きい「エクスプローラ」やら廃棄されたソ連のソユーズの船体へ避難しようと努力する。だが、宇宙を浮遊している二人に、またスペースデブリの飛来が迫っていた。
地球の地表から6000Kmの宇宙は、酸素のない無重力空間。宇宙服の中の人間は物体同様、ある方向に回転すると自力で回転を修正したり止めることはできない。同じ回転で離脱した時の方向とスピードで飛んでいくだけ。その浮遊感覚は、映画を見ていることを失念させる。
3度の宇宙飛行で宇宙遊泳を経験しているギャレット・リーズマン氏は、雑誌へのレビューで、本作での宇宙遊泳や無重力空間での人間やモノの動き正確さ、宇宙船や国際宇宙ステーションも正確に再現されていることに驚きを示している。また、宇宙空間でヘルメットごしに見える地球の姿も本物そっくりという。
音波が伝わらない宇宙空間、その暗闇の世界に酸素残量8%の宇宙服を着ただけで放り出された想像を絶する孤独感。宇宙服のヘルメットの中から見る地球の美しさを荘厳さは、絶望の淵から希望の大地へと振り返させる。人間は生きられる星は、地球しかないのだ。その地球を見ていると宇宙が創造されたことへの畏敬と、人間が地球の自然のなかでかけがえのない大切な創造物であることを覚えさせられる。 【遠山清一】
監督:アルフォンソ・キュアロン 2013年/アメリカ/91分/2D・3D/映倫:G/原題:Gravity 配給:ワーナー・ブラザース映画 2013年12月13日(金)より全国公開。
公式サイト:http://wwws.warnerbros.co.jp/gravity/
Facebook:https://www.facebook.com/zerogravitymovie/
2014年第86回アカデミー賞監督賞、視覚効果賞、撮影賞、編集賞、音響編集賞、録音賞、作曲賞受賞。第71回ゴールデン・グローブ賞監督賞受賞。2013年第39回ロサンゼルス映画批評家協会賞作品賞・監督賞・撮影賞・編集賞受賞。第17回ハリウッド映画祭主演女優賞(サンドラ・ブロック)受賞作品。