映画「ネルソン・マンデラ釈放の真実」――無私の行動で歴史を動かしたビジネスマン
2013年12月5日(木)、南アフリカの人種隔離政策(アパルトヘイト)に非暴力抵抗で指導し、1990年2月に27年間の獄中生活から釈放されて後に初代大統領に就任したネルソン・マンデラが亡くなった。彼の釈放は、差別と暴力による圧政に非暴力の抗議が無力でないことを証明したエポックメイキングな出来事として歴史に残る。
では、彼の釈放はどのような政治的交渉を経て実現したのだろうか。長い間ベールに包まれていたマンデラの釈放作戦「平和への策略」。そのプロセスに’謎のフランス人ビジネスマン’が、アメリカやキューバまでも巻き込んで複雑なアフリカの政治状況を秘密裏に結び合わせていた。私利私欲なく、関わっている国の面子を保ちつつ奔走し、歴史的転換への道を開いた秘話が解き明かされている。
マンディ・ジェイコブソンとカルロス・アウヨの2人の監督は、ウィニー・マンデラ(マンデラ前夫人、アフリカ民族会議[ANC]活動家)はじめタボ・ムべキ(南ア第9代大統領)、チェスター・クロッカー(アメリカ国務省次官補)、ホルヘ・リスケ(キューバ共産党中央委員)など南ア周辺国の要人や関係国の政府要人たちを丁寧に取材する。
インタビューから浮かび上がってきた’謎のフランス人ビジネスマン’ことジャン=イヴ・オリヴィエ。石油事業の成功で財を成したオリヴィエは、アパルトヘイトがフランスによるアルジェリア政策と共通した危険性を内包していることを憂い、アパルトヘイト廃止のために動き出す。ビジネスで培ってきた幅広い交友関係を活かし、潤沢な私財に任せて世界を奔走しながら練り上げていく緻密な「平和への策略」。
私利私欲のないアリヴィエの行動は、魑魅魍魎とした政治の世界を生きている人たちの心を’新しい光と希望の世界’へと開いていく。闇の世界の危険も多く潜んでいたことだろう。その展開はまさに’ドキュメンタリー・サスペンス’のキャッチフレーズにふさわしい。
ネルソン・マンデラは、初代大統領に就任(1994年)した後にオリヴィエの存在と活躍を知らされた。イエス・キリストはガリラヤ湖畔の山の上で、「あなたは、施しをするとき、右の手のしていることを左の手に知られないようにしなさい。あなたの施しが隠れているためです。」(マタイの福音書6章3-4節)と群衆に語った。隠されていたよい働きは、人の口に上りよい効果を享受した人々の心に届いた。まさに、「そうすれば、隠れたところで見ておられる父(神)が、あなたに報いてくださいます」。 【遠山清一】
監督:マンディ・ジャイコブソン、カルロス・アウヨ 2013年/南アフリカ/84分/ドキュメンタリー・スリラー/原題:PLOT FOR PEACE 配給:アニープラネット 2014年4月12日(土)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開。
公式サイト:http://mandela-kaiho.com
Facebook:https://www.facebook.com/pages/ネルソンマンデラ釈放の真実/277049769119163
2014年パーム・スプリングス国際映画祭’国境なき映画’特別審査委員賞受賞。2013年ゴールウェイ国際ドキュメンタリー映画祭最優秀ドキュメンタリー賞受賞、サンパウロ国際映画祭国際審査委員賞・観客賞受賞、ハンプトンズ国際映画祭ブリッツォラーラ家映画基金賞受賞作品。