ピエロ・デル・ポッライウォーロ 《貴婦人の肖像》 1470年頃 テンペラ、油彩・キャンヴァス

イタリア・ミラノにあるポルディ・ペッツォーリ美術館は、貴族の家に代々受け継がれてきた中世イタリアの古典絵画を中心に、甲冑から礼拝用美術工芸品などを所蔵する白眉な邸宅美術館として知られている。同美術館から日本初公開作品が多数展示される「ミラノ ポルディ・ペッツォーリ美術館――華麗なる貴族コレクション」展(Bunkamura、TBS、朝日新聞社主催)が、4月4日から5月25日まで東京・渋谷のBunkamura ザ・ミュージアムで開催中。

<絢爛と静謐な空間に醸すキリストの贖罪>

同展は、6つのセクションから構成されている。

19世紀に収集家としても知られたジャン・ジャコモ・ポルディ・ペッツォーリが、初めに手掛けた武器甲冑を中心に展示されている「第1章ポルディ・ペッツォーリコレクション」。

「第2章ロンバルディア・コレクション」には、ミラノないしロンバルディア地方の美術作品が展示されている。このセクションでは、アンドレア・ソラーリオ作「洗礼者聖ヨハネ」と「アレクサンドリアの聖カタリナ」の殉教者2聖人の宗教画。ベルナルディーノ・ルイーニ作「カルヴァリオへの道」(二連祭壇画)に迎られる。同展の工芸美術品の豪華絢爛な芸術品が並ぶなか、イースターの春にキリストの贖罪による静謐な空間へと導かれていくことを予感させられる。

それは、「第3章タペストリーと14・15世紀イタリア絵画コレクション」での前期ルネサンスの華麗な色彩で描かれる宗教画から、「第4章黄金の間コレクション」でのルネサンス黄金期の絵画からも醸し出されている。

ここに展示されているピエロ・デル・ポッライウォーロ作「貴婦人の肖像」は15世紀イタリア肖像画の最高傑作として同美術館を象徴する作品として知られている。また、「ヴィーナスの誕生」など異教的なテーマと官能的に描くことで知られるサンドロ・ボッティチェッリが十字架刑直後にアリマタヤのヨセフの墓に葬られる情景をドラマティックに描いた「死せるキリストへの哀悼」は、絢爛と静謐な空間に醸し出されるキリストの贖罪の内観へと導いてくれる。

サンドロ・ボッティチェッリ 《死せるキリストへの哀悼》 1500年頃 テンペラ・板

サンドロ・ボッティチェッリ 《死せるキリストへの哀悼》 1500年頃 テンペラ・板 「5章 15・16世紀の美術と時計コレクション」そして「ヴェネツィア美術および17世紀以降の美術コレクション」へと、収集家ジャン・ジャコモ・ポルディ・ペッツォーリの時代に下りてきて、約80点に及ぶ芸術作品の旅路は終幕を迎える。

ラファエッロ・サンツィオの作に帰属すると評価されている「フランチェスコ会派聖人たちが描かれた宗教行列用十字架」など美術史的にも話題の作品が本邦初公開されている同展覧会。東京展に引き続き5月31日から7月21日まで大阪市阿倍野区あべのハルカス美術館にて大阪展が開催される。 【遠山清一】

「ミラノ ポルディ・ペッツォーリ美術館展 華麗なる貴族コレクション」展
公式サイト:http://www.poldi2014.com/

ラファエッロ・サンツィオに帰属 《フランチェスコ会派聖人たちが描かれた宗教行列用十字架》 1500年頃 テンペラ・板