フランクはヘンリーに車のタイヤ交換の仕方を教え、母子に野球のバッティングを教える。アデルとヘンリーにはファミリーな安らぎのひとときがよみがえる ©MMXIII Paramount Pictures Corporation and Frank’s Pie Company LLC. All rights Reserved.

夫と離婚し、13歳の息子と暮らすシングルマザー。その母親の大きな悲しみは、父を失ったことではなく愛を失ったことと看破して寄り添う息子。その2人の前に現れた脱獄囚は、母子が忘れかけていたものを呼び覚ます。通常は起こりそうもない出来事だが、それだけに深く心に刻まれる。たんにラブロマンスを超えて、多感な少年の眼差しが、母親と脱獄囚のロマンスに揺れ動きながらも自己形成されていく物語は、母子に大きな転機をもたらし、深い喪失感から立ち直ろうとするものへの慰めと励ましに満ちている。

夏の終わりを告げる連休を前にした木曜日。アデル(ケイト・ウィンスレット)と息子のヘンリー(ガトリン・グリフィス)は、スーパーマーケットへ買い物に行く。広場恐怖症のあるアデルに、ヘンリーはいつも付き添う。フランク(ジョシュ・ブローリン)が、ヘンリーとアデルに「車に乗せてほしい」と少し強引に頼み込み、母子の家まで案内させる。

自分は、脱獄してきたばかりだ、と正直に話すフランク。TVニュースで、フランクの言うことが本当だと分かる。フランクは、怪我した足の痛みが和らげば数時間後には出ていく。乱暴なしないし、犯人隠匿罪にならないようアデルを椅子に縛り付けてカモフラージュさせてくれという。そして、手際よくチリコンカーンを作り、椅子に縛りつけたアデルにも口までもっていき食べさせる。言葉どおり危害を加えなかったフランクに少し警戒心を解いたアデルは、腹部の傷の手当ともう少し足の痛みがとれてからにしてはと引き留める。

自分は、脱獄してきたばかりだ、と正直に話すフランク。TVニュースで、フランクの言うことが本当だと分かる。フランクは、怪我した足の痛みが和らげば数時間後には出ていく。乱暴はしないし、犯人隠匿罪にならないようアデルを椅子に縛り付けてカモフラージュさせてくれという。そして、手際よくチリコンカーンを作り、椅子に縛りつけたアデルにも口までもっていき食べさせる。言葉どおり危害を加えなかったフランクに少し警戒心を解いたアデルは、腹部の傷の手当ともう少し足の痛みがとれてからにしてはと引き留める。

翌日、フランクは朝食を作り、車を修理し、家の故障している器具の修理や床のワックスかけなど男手がなくそのままになっているところを補修する。そこに隣家の主が、脱獄囚が近所を徘徊しているからと注意しに、熟れた桃をバケツに入れて持って来た。ヘンリーに応対させ急場をしのいだが、捜索の輪はしだいに迫ってくる。

隣家からお裾分けの熟れた桃でピーチパイ作りを手ほどきするフランク。緊迫した中での家族的な出来事がヘンリーにとっても大きな思い出となる ©MMXIII Paramount Pictures Corporation and Frank’s Pie Company LLC. All rights Reserved.

原題は’Labor Day’(労働者の日)。アメリカでは9月第一月曜日と定められている祝日で、翌日から学校では新学年(新学期)が始まる。そんな夏が終わり秋の始まりを感じさせる陽ざしと家の佇まいが美しくもあり、深い喪失感に囚われている者の寂寥感を醸している。

殺人罪で18年の刑を受けたフランクが、どんな罪を犯したのだろうか。母子の助け合う姿を見ながら彼の脳裏にフラッシュバックするシーンは、何の説明もないが彼の心の重荷を深く感じさせてくれる。フランクの優しい人柄に心を開いていくアデルは、愛情を抱き、愛されることで表情豊かになり、女性らしい装いへと変化していく。2人の変化を見つめながら、子どもの愛情と恋愛の違いを感じ取っていくヘンリー。的を得たキャスティングと演技に引き込まれていく。

脱獄囚をかくまっている緊迫感の中で、うたかたのことと分かりながらよみがえってくる父親と母親そして子どもが育つところが家庭という風景。シングルマザー、ヘンリーの実父も連れ子2人をもつ女性と再婚。アメリカ映画では、ごく普通になってきた家族関係だが、実父がヘンリーに詫びるひと言とその父の言葉を受け入れるヘンリー。赦す心をアデルとフランクから育まれたかのようで美しい。 【遠山清一】

監督:ジェイソン・ライトマン 2013年/アメリカ/111分/映倫:G/原題:Labor Day 配給:パラマウント 2014年5月1日(木)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国順次ロードショー。
公式サイト:http://www.torawarete.jp
Facebook:https://www.facebook.com/ParamountPicturesJP