記者会見ではユーモア豊かに質問に答えていたアロノフスキー監督

全長133メートル、幅22メートル、高さ13メートルで箱舟内は3層構造。創世記6章に記述されているノアの箱舟を6か月かけて原寸大で建造し、大地を覆う大洪水による神の裁きを描いた映画「ノア 約束の舟」(ダーレン・アロノフスキー監督)が、6月13日より全国公開される。激しい大雨と大地が裂け、吹き上がる大水によって地上のすべてのものをのみ込んでいく。ほぼ1年間荒波を漂流する箱舟のなかで生活するノアたちが、壮大なスケールとリアリティで描かれている。

たしかに、聖書の記述とは明らかに異なる設定はいくつか見受けられる。たとえば、罪に満ちた人間の象徴としてノアよりもはるかに前の世代のトバルカインが登場し、箱舟を奪おうとしてノアと闘う。また、箱舟に乗ったのはノアと3人の息子と妻たちが聖書の記述だが、本作での女性はノアの妻とセムの妻の2人だけになっている。息子ハムがノアに呪われたのは、酔ったノアを辱しめる行為が聖書の記述だが、本作ではハムが父ノアとの確執をを生む物語が創作されている。

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「ノアの箱舟と洪水の物語は、観客をはるかに超えた壮大なスペクタル映像体験となることを願っている」というアロノフスキー監督は、共同脚本を書いたストーリーテラーとして「(聖書にはないセムの妻イラの物語などを挿入することで)正義と慈悲、善と悪など相対するものの中で登場人物が悩み、葛藤するエモーショナルな物語にしたかった。イラは’善’の象徴であり未来への希望でもある。イラとノアが対立する物語によってドラマを生み出すことができた」と答え、「私は、娯楽映画を提供しているのです」と来日記者会見で語っていた。

神の裁きを、どのように完成させるべきか、また乗船した妻と子どもたちと動物・植物の未来について葛藤するノア。神の愛について指摘する家族。行間を豊かなイマジネーションで新たな解釈と物語を挿入しているが、天地万物を創造した神の存在は明確に提示している。ユダヤ教・キリスト教・イスラム教の基底にある旧約聖書を実写化した娯楽大作映画としては、完成度の高い作品といえる。

ハリウッドでは、旧約聖書の「Exodus」(リドリー・スコット監督)、スピルバーグ監督でモーセを描く「GODs and Kings」など聖書を題材にした作品の製作がいくつも進行している。それらが日本でも公開されれば、多くの観客動員と聖書への関心が喚起されることだろう。ポストモダンの現代の状況、クリスチャンは’聖書的ではない’という理由で拒否反応を示すよりも、批評的に観る見識と感性をもって応答する時代に生きているといえるだろう。 【遠山清一】

映画「ノア 約束の舟」:監督:ダーレン・アロノフスキー 2014年/アメリカ/132分/英語/原題:Noah 配給:パラマウント・ピクチャーズ・ジャパン 2014年6月13日(金)より全国公開。
公式サイト:http://www.noah-movie.jp
Facebook:https://www.facebook.com/movieNOAHjp

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