映画「神は死んだのか」――教授に神の存在証明を求められた大学生の真摯な挑戦
2014年末は、キリスト教系映画会社の作品が日本でも劇場公開され注目されている。日本でのキリスト教界大手ミニストリ会社では、’映画館を伝道所に’のキャッチフレーズでアピールしているが、リストアップされているなかの1本だ。確かに、キリスト教の神を真摯に弁証しようとしている点では、小気味よいまでの’伝道映画’と言える作品。ストーリーの展開に、アメリカ社会で中国系アメリカ人の割合が上昇していることを反映してか、中国人実業家の息子がキリスト教への関心を示したり、クリスチャンバンド’ニュースボーイズ’の劇中ライブを盛り込むなどエンターテイメント性にも富んでいる構成が心憎い。
大学に入学したジョシュ(ショーン・ハーパー)。哲学の最初のクラスでラディソン教授(ケビン・ソーボ)は、「無神論を前提に講義するため、『神は死んだ』と書くように」と学生たちの要求する。単位を取得するための授業とばかりに、学生は次々と誓約の文字を書きサインしていく。
だが、ジョシュは「クリスチャンなので神を否定することは書けない」と拒否した。教授は「では、神が存在することを証明してもらわなければならなくなる」と、3回の授業の終わりの20分間を弁証のため時間としてジュシュに与えた。
ジョシュは、神を被告とし、ラディソン教授を検察、自分を弁護人、そしてクラスの学生たちは陪審員としてジャッジ役にしてこのディベートを受けて立った。ニーチェの哲学やホーキンスのビッグバーン理論への反証など、ジュシュは真剣に弁証の準備を始め、ラディソン教授と対抗する。
教授の心証が悪くなるのを心配したガールフレンドとはケンカ別れ、ほかの授業にも身が入らず牧師にも相談する。やはり、神を否定できないジョシュは、迷いを振り切り’神は死んでいない’ことの弁証に再びチャレンジしていく。
米国のいくつかの大学で実際に起きた論争をベースにしている作品で、論議の内容はまじめだ。一方で、教授の彼女はクリスチャンだが、その兄は神を信じないドライな実業家。多数派になりつつある中国系アメリカ人社会を反映するように中国人学生が求道するシークエンスなどが盛り込まれている。
また、クリスチャンバンド’ニュースボーイズ’の劇中ライブが、思わぬ展開への重要なシーンに設定されておりエンターテイメント性も十分に脚色されていて楽しめる作品に仕上げられている。 【遠山清一】
監督:ハロルド・クロンク 2014年/アメリカ/114分/原題:God’s Not Dead 配給:シンカ 2014年12月13日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町&渋谷ほか全国ロードショー。
公式サイト:http://www.godsnotdead.jp
Twitter:https://www.facebook.com/godsnotdead.jp