2018年09月23日号 08面

 民主化以降、著しい経済成長をとげるモンゴル。その一方で首都ウランバートルでは、ゴミ集積所のそばで多数の子どもたちが暮らすような貧困格差の状況がある。そのような貧しい家庭の子どもたのために無償で教育を提供する支援学校「ジョイハウス」に、宿舎が完成し、9月4日に開所式が開かれた。「ジョイハウス」は、モンゴルEHC(全国家庭文書伝道協会)総主事のバーサンドゥオーリ氏の伝道活動の中から生み出された学校。この宿舎設立支援の呼びかけに日本の教会が応答した。開所式には日本EHC総主事の岩本信一氏をはじめ、12人の日本人が出席し、子どもたちと共に祝った。(レポート・相澤直実=EHCスタッフ)

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写真=開所式でのテープカット。中央が岩本氏と子どもを挟んで 左がバーサンドゥオーリ氏。写真提供=江野尻卓也

モンゴルEHCに日本の教会が協力

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 子どもたちは「ジョイハウス」から1時間以上離れたゴミ集積場付近に住んでいた。この付近には子どもたちだけで約200人いるという。子どもたちは非常に貧しく、ゴミ集積場でお金になるゴミを探しに集まり、ゴミ集積場にトラックが来るとゴミの奪い合いになることもあるとのこと。働かないと食べることができないためなかなか学校に来ることができない。

 ゴミ集積場まで車で行ったが、学校からとても遠く、広大な場所一面にゴミが広がり、カラスがたくさん飛んでいた。

 雨の日は傘もなく、ぬれたまま1時間歩いて学校に来て、そして、授業が終わると帰っていく。

子どもたちが勉強することは、彼らのこの先の人生を大きく左右する。

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 「ジョイハウス」は現在までに200人の子どもたちが卒業していて、現在通うのは60人。10人の障がい児も受け入れているが、特に彼らについてはケア、精神的な支援も必要になっている。夕方からは150人がパソコンなどを習いに来ている。

 バーサンドゥオーリ氏は、日本EHCの招きで、今年1月に来日。「ジョイハウス」の子どもたちの遠距離通学の負担の軽減と通学途中の危険から守るための宿舎の必要を訴えて献金を募った。その結果、日本EHCに必要額が与えられ、モンゴルに送金。モンゴルEHC事務所の隣地を購入し、既存の建物を修繕して宿舎とした。

 開所式では、バーサンドゥオーリ氏が日本からこの開所式に来てくれた事や献金や祈りによる支援によってこの宿舎が与えられたことを感謝した。

 岩本氏は、「イエス様がみんなを愛しているから、その愛を伝えたくて献金を送った、ますますみんなが神さまのことを大好きになってほしい、また、周りのお友達ももっともっと大好きになってください」と子どもたちに挨拶をした。

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 その後、子どもたちは、歌や踊りなどを披露、また、日本出席者からも賛美歌が歌われ、日本から持ってきた衣類やお菓子、文房具や楽器などがプレゼントされた。最後に今回同行をしていた単立・亀有キリスト福音教会の於保治樹牧師がこの働きや子どものために祈った。

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 開所式後、宿舎に入ると、子どもたちはベッドに飛び乗り、大はしゃぎ。その後、食事や果物、ケーキや牛乳などでお祝いの時を持ったが、このような豪華な食事は普段できず、皆とても喜んでいた。

 宿舎には、3つの部屋に16のベッドがあり、女子生徒が利用する。同時に、ゲル(モンゴル遊牧民の移動可能な家)を2つ建て、16のベッドを置き、そこは男子生徒が利用する予定。

 9月中旬に国の監査があり、それを経て、宿舎を使うことができるようになるとのこと。モンゴルは9月中旬から急に寒くなるため、それまでに認可が下りるようにと願っている。

 今回、正式に日本EHCとして今後1年間、この働きの継続のための必要額、毎月19万円(年額228万円)をサポートする事を約束した。現在、昼間は60人、夕方からは150人以上の子どもたちが学校に通う。教師はボランティアだ。この「ジョイハウス」の働きの継続のため、子どもたちの未来のために、継続的な献金とお祈りをお願いしたい。

 ゲルへの訪問(2か所)

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◇1か所目

 トムルフ氏は前夫による暴力があり、離婚をして母子家庭になった。そこでバーサンドゥオーリ氏に出会って教会に通い、2007年にクリスチャンになった。バーサンドゥオーリ氏のトレーニングセンターで縫い物を習い、今は就職することができた。

 新しいゲルも与えられ、再婚して4番目の子どもも生まれた。神さまを信じてからお酒を飲むのもやめて、生活が変わったと話していた。

◇2か所目

 タファ氏はクリスチャンだが、ゴミ集積場で働く息子はシャーマン。ゲルに8〜9人が暮らしている。

 田舎から引っ越してきて大学も出てない、証明書もない、仕事もない。孫が5歳で交通事故にあった時、バーサンドゥオーリ氏が病院に連れて行った。事故を起こした相手は補償もしてくれなかった。許可を得ていない場所にゲルを建てて住んでいる様子だった。

 バーサンドゥオーリ氏は他にも、ゴミ集積所で働いている20人くらいの若い人に運転を教えて、就職の斡旋もしている。何か技術を身に着けることができれば、ゴミ集積場での生活から抜け出すことができる。

 草原を走っていて、遊牧民の若者が馬や羊の群れといるのを見つけるとすぐに引き返し、いつも車に積んでいる新約聖書を若者に手渡した。その後も進んでいくと遊牧民の家族に出会った。その家族は最近千キロ移動してこの場所に来たとのこと。彼らにも聖書を手渡し、それぞれ、祝福のために祈った。遊牧民は時期によって移動をするので、フォローアップをするのもとても大変な作業だという。ひとりに聖書を手渡すために何百キロも走り、伝道を続けている。

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 バーサンドゥオーリ氏が関わっている教会「愛のミッション教会」を訪問した。毎週教会には子どもが60〜70人、大人20人が集まる。ゲルの中は満杯状態。ここに集う子どもたちは、皆生活が困難な家庭の子どもたち。訪問すると子どもたちが集まり、皆で振付をしながら大きな声で賛美のプレゼントを贈ってくれた。子どもたちはお菓子をもらい、喜びながら帰って行った。

 支援の宛先は、郵便振替00130 ・5・68644、ゆうちょ銀行 019店 当座0068644 「モンゴルのために」と記載。