2018年10月14日号 01面

台風、停電、選挙が重なった9月末の沖縄。キリスト教会関係でも新しい取り組みが試みられていた。記者は9月30日から10月1日まで沖縄を訪問した。集会やインタビューの詳細は次号以降掲載するが、今号では取材概要とともに、2日間の沖縄の状況を記者の視点で書く。【高橋良知】

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写真=停電で信号機が 真っ黒な所も

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写真=台風の影響であちこちに倒木が見られた 糸満市摩文仁付近

信号機が真っ黒、倒木もあちこちに

沖縄の文脈と平和・和解を求める思い

 そもそも東京からの出発は9月29日を予定していた。台風24号接近にともない、航空便は28日から相次ぎ欠航。何度かの振替の後、30日始発便に乗ることができた。

 午前9時過ぎに那覇に到着すると、小雨だったが、市街地、郊外あちこちに倒木があった。道を隔てて信号機が消灯しているところ、点灯しているところがあるなど、停電個所はまばらだった。

 宜野湾市にある沖縄バプ連盟・普天間バプテスト教会の礼拝に出席した。この日、賛美歌、主の祈り、説教がみな琉球語。米国で長らく宣教活動をしていた座間味宗治さんが、「しまくとぅばと聖書」の題で、琉球語や文化と聖書の共通性を語った。会衆の大半は言葉を聞き取っていた。琉球語でのプログラムは同教会にとっても新しい取り組みだった。

 沖縄キリスト教学院での講演会取材のため、同キリスト教平和総合研究所所長の内間清晴さんと落ち合い、同学院へ向かった。午前中同学院は停電だったが、昼頃から復旧。内間さんらスタッフは準備や対応に奔走した。講師の中には、自宅が停電に見舞われ、ロウソクの灯りで準備した人もいた。

 講演会では沖縄で異なる教派背景をもちながら長年聖書教育、宣教研究に関わってきた3人の牧師が一堂に会した。「沖縄か、琉球か、日本か」などアイデンティティーを問う場面もあった。

 30日は沖縄県知事選投開票日。翁長雄志前知事の急逝にともなった緊急の日程だった。基地問題を問う前知事のラインを継承する玉城デニーさんと、政府与党を背景にした宜野湾市の前市長佐喜真淳さんが競り合った。

 投票終了の午後8時過ぎには、早くも出口調査による一部報道で、玉城さんの「当選確実」が報じられた。

 玉城陣営が開票速報を待つ会場へ駆けつけた。一般の人々も続々と会場に向かっていた。

 会場では椅子に座りきれないほどの大勢の人が押し寄せていた。報道陣を前にして玉城さんらが最前列に着席。背後には壮年層のみならず家族連れ、ダンサー風の若者グループ、スマホで動画撮影しながら実況する県外の若者、創価学会の三色旗を掲げている人もいた。辺野古基地建設地がある名護市の市長選(2月)では、政府与党が積極的に応援した候補者が当選した。県知事選でも同様の手法が展開されたため、玉城陣営でも不安の声がもれていた。

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 午後10時前に各報道で当選確実が報じられると会場は、口笛やカチャーシュー踊り、デニーコールなどで沸いた。玉城さんは、米軍人の父を持ちつつ、母子家庭で育った生い立ちから挨拶を始めて、福祉、経済など各問題について語り、基地問題については「ウチナーのことはウチナーンチュ(沖縄の人)が決める」と意志を示した。基地集中の沖縄の現実を踏まえ、基地移設先について「日本全体で考えてほしい」とも述べた。

 一方、午後10時過ぎには、同日に実施された宜野湾市長選の結果が出た。佐喜真前市長のラインを継承する松川正則さんが当選した。

 会場を後にし、市街地に行くと、観光客であろう中国系、欧米系と様々な外国人を見かけた。必死で客引きをする若者たちの姿もあった。行き交う人々の中には県知事選について様々な見解を持つ人、あるいは無関心層がいるだろう。

 午後にインタビューした金井創さん(日本基督教団佐敷教会牧師)の言葉を思い出した。辺野古基地建設現場で反対運動に加わっている。「立場の違いはあっても現場では人と人なんです。仲間との間でもそうですし、海上保安庁の人、米軍の人とも同じ人として接し、言葉を交わしています」

 一夜明けた10月1日朝、沖縄本島最南端糸満市にある平和祈念公園を訪ねた。停電のため平和祈念資料館などは休館。職員は倒木や落ち葉の清掃に追われていた。

 住民を巻き込んだ沖縄戦の「終焉(しゅうえん)の地」と言われる。公園内には戦後50年を記念し、1995年に建設された「平和の礎(いしじ)」の石碑千220面が並ぶ。建設の趣旨には「平和のこころ」が広がることを願って、住人だけではなく国籍、軍人、民間人の区別なく、沖縄戦などで亡くなったすべての犠牲者約25万人の名前が刻まれたとある。

 午後は米軍をめぐって様々な立場にいるクリスチャンたちを訪ねた。沖縄市のネイバーフッドチャーチ沖縄は米国のアッセンブリーズ・オブ・ゴッド教団を母体とし、英語礼拝をする。米軍関係者の出席が多いが日本人も出席する。福祉施設などでの地域奉仕も盛んだ。29日には初めての日本語礼拝(月1回)が始まる予定だったが、台風のため10月に延期になった。16年には米軍属女性遺棄事件を受けて、信徒ら約100人が「沖縄と共に悲しんでいます」などと書かれたボードを持って国道沿いに立ち、住民らからも共感を集めた。同教会では「和解」を1つのテーマにしている。

 夜は普天間バプテスト教会を訪ねた。同教会付属の緑ヶ丘保育園では、昨年12月に米軍ヘリからと思われる部品が屋根に落下した。保護者らは署名活動とともに、米軍、国、県、市に原因究明や再発防止、保育園上空への飛行禁止などを嘆願する活動を続けている。

 普天間米軍基地ゲート前では、オスプレイ配備への抗議をきっかけにゴスペルを歌う会が毎週続けられている。参加者の中には単なる抗議活動ではないという意識がある。米国人に親しみがあるゴスペルを通して、沖縄の人にも米国人にも、同じ神につくられ愛されている存在であることを訴えていると言う。それぞれの活動や思いについては改めて紙面で紹介していく。