11月22日号紙面:TCU30周年記念式典開催
TCU30周年記念式典開催 「破れ口」の使命受け現場に
写真=下川氏
東京基督教大学(TCU)は創立30周年記念イベントを新型コロナ感染拡大に対応し、オンラインで11月3日に開催した。前半の式典はYouTubeで配信、後半の同窓会はZoomで開いた。
式典の説教で下川友也氏(元東京基督神学校校長・五十嵐キリスト教会代務牧師)は「未完成交響曲」と題し語った。
詩篇119篇を基調に、聖書の人物たちを振り返り、へブル11章13~16節を引用して、「まことに人生は未完成のまま終わる。しかし私たち自身で何かを完成させるのではなく、神様が私たちの人生を完成することに望みを置きたい」と勧めた。「一人ひとり、各個教会、東京キリスト教学園(TCUの学校法人)はどこまでも未完成。しかしそれぞれが響き合い、神様の指揮のもと、天上で見事に調和することを信じる」と祈った。
写真=湊氏
記念講演は湊晶子氏(東京基督教大学名誉教授・広島女学院大学学長)。「日本のキリスト教主義大学が必要とする『人格教育』の担い手」と題し、東京キリスト教短期大学の設立、同短期大学と日本クリスチャン・カレッヂ、共立女子聖書学院との三校合同による東京基督教大学設立のために奔走した経験を語った。
続いて日本のキリスト教学校全般の課題について述べ、「日本のすべてのキリスト教主義学校が、創立時には明確に信仰に立った標語を掲げた。しかし、現代社会で具体的に守られているか疑問」として、理事長、学長のクリスチャンコードの課題を挙げた。「99%がクリスチャンではない学生にキリスト教教育をするのは大変だが、大きな恵み。ぜひキリスト教大学で聖書的人格論を発信する指導者が育ってほしい」と語った。
現在広島女学院では、キリスト教学の授業で、「一人称で明確に自分の意見を述べる個を生み出す使命」を語っている。卒業生会と共催の聖書研究会にはのべ900人が参加。キリスト教講演会にも500人が参加するなどして、地域の人々の関心も集めた。「聖書の真理を現代に敏感に生かし続けたい」と述べた。
30周年のテーマ「Stand in the Gap 破れ口にキリストの平和を」に沿って、卒業生たちが証しした。中西殉子氏(結婚支援ミニストリー「リベカ」代表)は、少子高齢化で、弱体化する教会の現状の中で、結婚が「破れ口」で祝福が漏れていると指摘。コロナ禍の影響を受けたが、オンラインでの働きが可能となり、全国視野での働きを展望。「聖書的土台に立つ、正しい結婚観は、クリスチャンでないと発信できない」と語った。
高木誠一氏(株式会社教文館編集者)は、「教派はキリスト教会の多様性を表すが、同時に痛みをともなう破れ口」と述べた。教文館の働きを通し、福音派、主流派、カトリック、正教会ともかかわる。「幅広い視野や深い知識。キリストと教会を愛する確かな信仰をもって歩んでほしい」と勧めた。
クリスティアン・トリーベル氏(関西学院大学キャンパス宣教師)は、ドイツ人宣教師の子に生まれ、「国と国の間のアイデンティティーに生きる『第三の子』だ」と自己紹介。その視点から「間にいる人達の神学」を研究する。神、イエス、聖霊が相互に仲介者であることを示し、キリスト者もまた仲介人として自己犠牲を伴う人と人との愛の使命がある、と語った。
林義亜氏(NPO法人 ホッとスペース中原 職員)は、高齢者デイサービス、訪問介護、障がい者グループホームにかかわる教会の福祉施設で、利用者と共同生活する。「『あなたは無条件で愛されている大切な存在である』ことを体験できる場。コロナ禍で、全世界で生きづらさを抱えた人が明らかになった。神様の愛がすべての人に例外なく注がれている。それを分かち合う共生社会をつくっていきたい」と話した。
浜岡みのり氏(高校生聖書伝道協会 hi-b.a.スタッフ)は「高校生一人一人が“Gap”を抱え、ひとくくりにできない。高校生が今どんな世界で生きているかを知ること。できれば同じ世界に入っていくことが大事。そうでないと、彼らは私たちを別世界、別の時代の人と思う。寄り添うだけでは不十分で、やはり御言葉を伝えることが重要。御言葉が最終的に彼らを変える」と述べた。
卒業生の賛美グループLyreがTCU創立30周年記念ソングを披露した。録画をホームページから視聴できる。東京基督教大学「創立 30 周年宣言」 では、「すべての前 身 校 の 伝 統 と『建 学 の 精 神 』 を 尊 び 、 絶 え ず こ れ を 発 展 」させることを誓い、諸教会とと共に「神の国」の前進のために歩む抱負を述べた。【高橋良知】