【書籍で振り返る3・11⑦】『フクシマを共に生きる』
東日本大震災から10年を迎えます。この災害を教会、個人はどのように迎え、痛みを覚え、祈り、考え、行動したか。
いのちのことば社で刊行された手記について、クリスチャン新聞の当時の記事から振り返ります。
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原発事故の影響を受け続ける福島を覚えて祈ろうという集会が、5月24日、都心のお茶の水クリスチャン・センターであった。
昨年、郡山市で日本福音同盟(JEA)宣教委員会と福島県キリスト教連絡会(FCC)が共催した「宣教フォーラム・福島」の内容をまとめた『フクシマを共に生きる』(いのちのことば社)の出版を記念する「祈りのフォーラム」。同県で復興に取り組む4人が講演や証しをし、参加した約60人が共に祈った。
会津放射能情報センター代表の片岡輝美氏は「子ども・女性たちと放射能」について報告し、情報が飛び交う中で「安全かどうかは私が決める。政府が決めるのではない」を方針に、不安を抱えるお母さんたちと協力して食品・空間線量・土壌のほか、子どもの着衣や持ち物なども測定し、情報提供してきた。
「経済中心でなくいのちを中心とした復興を」と子どもの健康診断を毎月実施。片岡氏は、「元気がない、集中力がない、口内炎ができるなど、子どもの様子が何か変だとお母さんたちは感じている。不安によるものと言われるがそうではないと思う」といい、何が安全かを明らかにすることで寄り添おうとしている。
「美味しんぼ」行政対応に抗議も
5月19日、県民健康調査検討会が小児甲状腺がん調査で悪性および悪性の疑い89人と発表した。原発事故とは関係ないと県はいうが、事故前は100万人に1人か2人だったのが、37万人に89人見つかる異常さを指摘。漫画「美味しんぼ」が原発事故後に鼻血を出す現象や「福島に住むべきではない」との発言を描いたことに福島県が抗議したことに対し、市民団体が県に抗議したと明かした。「親や子どもたちの口封じをしようとすることが大きな問題。県が抗議する相手は日本政府です」
片岡氏は、「キリストの復活は希望。でも原発サイトを見ると絶望的。子どもたちに申し訳ない。こんな世界をつくってしまってごめんなさい、でも、こんな世界をつくり直すためにパートナーになってくださいと言いたい」と結び、祈りの課題として、①原発労働者の心と生命、家族の日々が守られるように、②安倍首相と政府に原発再稼働と海外輸出をあきらめさせるために、知恵と勇気が与えられるように、③小児甲状腺がんの強い疑いとされた子どもたちと家族の心が支えられるように、を挙げた。
FCC代表の木田惠嗣氏は「福島が直面していることとこれからの課題」を報告。「福島を表すキーワードは不安と分断。大丈夫という空気が支配し、危ない、不安だと言えない雰囲気が生まれてきている」として、線量の公式発表が低く出される、生活弱者が取り残されていく、震災関連死が多い、などの問題を挙げた。祈りの課題は①復興という看板の影で、心を痛めたり、困窮したりしている人々のために、②廃炉作業の安全が確保されるように、③教会ネットワークの働きが祝福されるように。
「子ども保養プロジェクト」などに関わる2人の現地スタッフが証し。林雄司氏は「その場所に行って、目の前にいる人を見て聞くことが支援であり、フクシマを共に生きること」。塩津氏は住民として感じた不安や戸惑いを明かし、「一人で暮らす私がこれだけいろいろ感じる。お母さん方はどれだけ悩んでいるか」などと話した。
祈りの課題は①福島県の子どもたちが健康に希望を持って成長できるように、②福島県に住む人々が置かれた場所で平安を見つけていけるように、③健康と生活が守られるように、④共に歩んでくれる人が多く与えられるように。
『フクシマを共に生きる』
福島県キリスト教連絡会・日本福音同盟宣教委員会編
発売日:2014/03/11