東日本大震災から10年を迎えます。この災害を教会、個人はどのように迎え、痛みを覚え、祈り、考え、行動したか。

いのちのことば社で刊行された手記について、クリスチャン新聞の当時の記事から振り返ります。

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災害で次々ニュースが入ってくると一刻も早く駆けつけたくなる。が、その行動が被災地の迷惑になることもある。ある地域には救援物資が殺到するが、実際には大量に余り処理に困った実態も……東日本大震災で多くのボランティアを送ったクラッシュジャパンのジョナサン・ウィルソン代表が、その経験から学んだことを語っている。

それを1冊にまとめた『震災ボランティアは何ができるのか―3・11「希望の絆」の記録』(いのちのことば社、千600円+税)の出版記念セミナーが7月26日、東京・千代田区のtギャラリーで開かれた。次に災害が起きたとき、知っておけば役にたつヒントが満載だ。【根田祥一】

震災から3年が過ぎた今もまだ学んでいる、とウィルソンさんは言う。「私たちはプロの救援隊じゃない、政府じゃない。できることは何か、何をするべきか、考えておくことが大事です」

東日本大震災直後、ボランティアを希望するメールなど問い合わせが殺到した。早く被災地に行きたい、どこへ行けばいいのか―はやる気持ちを抑え、クラッシュは現地の情報を集め、支援活動の拠点となるベースキャンプをどこに置くか、支援の必要な地域と支援拠点となり得る教会はどこにあるか、といった地域査定を先行させた。

「ボランティアが被災地に行くのは最初の48時間じゃない。それはレスキュー隊の役目。ボランティアが効果的で安全な働きをするためには待つべきです」
安全に心身を休めることができるベースキャンプを確保せず勝手に現地に行くと、ただでさえ大変な中にある地元の教会や牧師に余計な負担をかけてしまう。そうした災害が招く「災害」やボランティア自身に心のケアが必要なことなど、同書は経験に根ざした実際的な示唆を投げかける。初期には指令系統が錯綜し混乱に陥ったことなど、失敗を正直に書いているところも役に立つ。

ウィルソンさんは、災害支援における教会の重要性を強調する。「外から支援に入るとその町のことはよく分からないが、地域教会は自分の町の状態を知っている。資源があり支援を願っている世界の教会や関係団体に対し、現地教会は、どこで何が必要かを知らせる窓口になれます」

行政は常に費用対最大効果を目指すのに対し、それではカバーしきれない人たちが必ず取り残される。そうした情報をこまめに拾い、きめの細かいケアができるのはボランティアの利点だ。キリスト教団体と地域教会が協力し、次の災害が起きる前に備える地域防災ネットワークを広げていきたいという。また、支援ボランティアの心のケアができるチャプレンを養成する必要を訴える。

災害支援は体を使う活動だけではない。クリスチャンはキリストを信じて心に持っている希望を届けることができる。同書には、被災した人に寄り添い話を聴いた高齢者のボランティア経験談なども収められている。
また、ウィルソンさんの妻利恵さんは、「被災した最も小さい者たちへのケア」と題し、災害時にトラウマを抱えながら取り残されがちな子どもたちの心のケア「オペレーションセイフ」の働きを報告した。

2014年8月10日号から

『震災ボランティアは何ができるのか 3.11「希望の絆」の記録』
ジョナサン・ウィルソン著
発売日:2014/06/01

 

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