村岡氏

「第8回戦争に関する証言集会」(日韓教会協議会主催)が、11月12日オンラインにより行われた。講師は、オランダ・ライデン大学名誉教授の村岡崇光氏。聖書言語学者の村岡氏は、先の戦争における日本の加害者性の自覚から、その贖罪として、2003年にライデン大学を退職後は、アジア各国の神学校や教会で無償の講義を行っている。今回は「韓国、遠くて近い国」の講演題で、特に15年に交わされた慰安婦問題の日韓合意をもとに、日本の戦争責任について語った。
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村岡氏は講演の冒頭、現在懸案となっている元徴用工の問題や、韓国で会った元慰安婦のハルモニの言葉「お金はいらない。天皇に直接謝ってもらいたい」を紹介するとともに、15年の「日韓合意」の際、当時の安倍首相が謝罪の手紙を出すことを拒否した事実に触れ、「合意の中では日本政府による10億円の拠金がうたわれているが、まず大事なのは謝罪し、その謝罪を相手に受け入れてもらうこと。その後で初めて金銭を受け取ってもらうようお願いするのが筋だ」と語り、「この合意は問題の解決からはほど遠い」として、その問題点を挙げた。

 ①誠意の問題

この合意に至るまで韓国側と接触した外務省の誰一人として、犠牲者本人、その支援者に会っていない。合意が「心身にわたり癒しがたい傷を負われた全ての方々に対し、心からおわびと反省の気持ちを表明する」と述べる一方で、拠金で全ての元慰安婦の方の心の傷を癒やす措置を講ずるとしているのは単に語句表現の錯誤以上のものが根底にある。この合意が人間の尊厳の破壊という問題の根源に迫るものであって、単に政治的難題の処理以上のものであるなら、韓国以外の犠牲者にも対処しなければならない。そしてこの合意には「謝罪」は書かれていない。「お詫びと反省」は謝罪ではない。

 ②責任の所在の問題

「日本政府は責任を痛感」とあるが、本来責任を表明するのは、政府の母体、日本国民の代表からなる国会であるべき。その国会議員が、戦争犯罪者が祀られている靖国神社を参拝している。そして、日本兵はみな昭和天皇を指揮者といただいていたのだから、合意に際しては、天皇からも何か言葉があってよかったのではないか。

 ③法的責任

日本は、1922年に国際連盟によって採択された「婦人及児童ノ売買禁止ニ関スル国際条約」を、32年には国際労働機関が採択した「強制労働ニ関スル条約」を批准した。慰安婦制度はこれらの条約に違反し、多くの女性を苦しめた。法治国家としてこういう過去を無視したのでは、問題が最終的に解決したと主張することはできない。政府は、65年の「日韓請求権並びに経済協力協定」によって、解決済みの姿勢だが、そこでは、強制連行のことは一切審議されなかったし、元慰安婦が初めて犠牲者として自らを公にしたのは91年のこと。

以上の問題点を指摘した上で、総括的に次のように言及した。
「合意が釘を刺す“不可逆的”が、加害の歴史を封じようとする、歴史修正主義を容認するものであってはならない」、「この問題は、日本の戦争犯罪の問題であり、韓国との間だけでなく、今後も植民地支配戦争責任の処理に取り組まなければならない」、「日本の教会から出された戦争責任に関する告白は、その後どうなっているのか。日本国民である限り、自分の国の歴史は自分の歴史でもあることを記憶し、キリスト者が今後何をなすべきか考えるべき」

クリスチャン新聞web版掲載記事)