木村氏「天皇制と政教分離」テーマに講演 「曖昧なまま危険な現実作られる」 「政教分離の会」2021年オンライン公開学習会

政教分離の侵害を監視する全国会議主催の「『政教分離の会』2021年オンライン公開学習会」が21年12月4日に開かれ、講師の木村草太氏(東京都立大学教授)が「天皇制と政教分離」と題して講演した。
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木村氏は、日本国憲法には、第20条1項後段、第20条3項、第89条と、三つの政教分離条項があることを説明し、「日本の場合、第20条3項『国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない』が裁判所で問題になり、20条3項が禁止する活動かどうか検討することになる」と語る。

木村草太氏

政教分離原則の保障根拠には①信教の自由の間接保障=国家と宗教が結び付くと信教の自由が害されやすくなる、②国家の世俗性原理の確保=国家を非公共的な宗教から守る、③宗教の自律の確保=宗教を国家介入から守る、の三つがあるとし、「どこが強調されるかは国による。日本の場合、戦前の宗教と国家の結び付きが非常に重要だったので①が強調される」
その上で、日本国憲法に天皇制がなぜ存在するのかについて二つ挙げた。「一つは消極的機能で、天皇の歴史的権威を封じ込めるため。天皇の権威が政治的に利用されないよう、国民全体でコントロールする。他方、積極的機能として天皇自身による正統化の補完がある。例えば、国民主権原理による正統化では不十分で、国民主権原理以外の形で天皇制というものを正統化するという観点から見る見方もある。その場合、天皇は権威と品位を持ち、国事行為だけでなく、積極的に象徴行為をする。国民の尊敬を集めるほど、天皇の正統化は機能する」
「天皇の権威を日本統治に積極的に使おうという立場は、天皇の祭儀を援助していく必要がある。しかし、天皇の権威保持のために大嘗祭に公金支出するのは、危険な選択肢だ。大嘗祭の宗教性は否定できないし、社会的儀礼にしてはかなりお金が出ている。すっきりした議論は難しい」

(木村氏はさらにその「難しさ」について語ります。2022年1月2・9日号掲載記事)