6月20日は「世界難民の日」。国際NGОワールド・ビジョン(WV)は、世界難民の日を前に、難民・避難民の子どもたちが置かれている状況について調査を行い、報告書「顧みられず、忘れられて:避難民の子どもたちは、かつてないほど飢え、リスクにさらされている」を発表。難民の子どもたちが直面する飢餓と暴力のレベルが高まり続けており、一方、必要な資金拠出が追いついていないことを警告している。

報告書表紙(写真提供=WVJ)

調査は、2023年3月から4月にかけ、アフガニスタン、ブラジル、ブルキナファソ、コロンビア、コンゴ民主共和国、エクアドル、エルサルバドル、エチオピア、グアテマラ、ホンジュラス、ヨルダン(同国で避難生活を送るシリア難民の家族・子どもたちを含む)、マリ、ニカラグア、ニジェール、ペルー、南スーダン、ウガンダ、ベネズエラの18か国で実施。この調査では、サンプリング方法(ランダム・目的・便宜的サンプリング)を組み合わせ、18か国847世帯を対象とする。世帯当たりの平均人数は6人。
調査結果の内容は以下の通り。▽移住を強いられている家庭の85%は、日々に必要な栄養を摂取するだけの十分な食料を買うことができない。▽25%の家庭は、悪化する家計ひっ迫に対応するために子どもを学校に通わせていない。19%の家庭は子どもを働かせている。▽アフガニスタンとニジェールでは、かなりの数の家庭─それぞれ12%と7%─が収入減少への対処方法として児童婚を利用していると報告している。
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報告書では、「新型コロナウイルス(COVID-19)の世界的なまん延が最も激しかった2021年のデータに照らしても、子どもが直面する飢餓と暴力が急増していることが明らかになった。日々の生活必需品を手に入れるために他人から借金をしている家庭は22年から倍増し、82%の家庭が低所得に対応するため食事の質と量を減らしている」と伝える。

スーダンから南スーダンに逃れてきた避難民家族(写真提供=WVJ)

WVで災害対応シニアディレクターを務めるアマンダ・ライブズ氏は、こう語る。「シリア、ニジェール、コンゴ民主共和国、アフガニスタンなどでは、子どもたちのニーズがここ数年より高まっているが、対応するための十分な資金がなく、子どもたちは忘れ去られつつある。今日、何百万人もの子どもたちが難民キャンプで厳しい生活を送っている。あまりに多くの子どもたちが、生きるために結婚を強要され、生き残るために働かされている。子どもたちは飢え、学校に行けず、子どもらしく過ごすこともできない。そして、世界はこの子どもたちのことを忘れようとしている」
子どもが暴力を受ける危険性が高まっていることを、親が非常に心配していることも明らかにする。ライブズ氏は続けてこう語る。「WVは、移住を強いられた人々を3年連続調査してきたが、子どもが暴力を受けるリスクが高いと答えた家庭はこれまででいちばん多く、41%に上る。避難民キャンプに住む子どもたちは、他の場所に住む子どもたちに比べ、強制労働を強いられるリスクが2倍も高い。アフガニスタンとニジェールにおける児童婚率が特に高いことを懸念している。多くの家庭では収入も食料も得られず、そんな家庭が迫られる究極の選択は想像を絶する。それは、子どもを餓死させるか、あるいは一人の子を結婚させることで食事にありつけるようにし、結婚に伴う持参金で残りの家族を養えるようにするか、の選択だ。このような選択を親が迫られるべきではないが、多くの家庭にとって事実そうなのだ」

アフガニスタンの国内避難民家族(写真提供=WVJ)

その上で、ライブズ氏は世界に向けてこう訴える。「世界には十分な資金と資源がある。飢餓のレベル、児童労働や児童婚の数字が増加するようなことがあってはならない。世界の難民や国内避難民の数は今日、圧倒される規模だ。しかし、難民は彼ら自身の未来の担い手であることを忘れてはならない。難民、避難民が今必要な支援を受けられれば、命をつなぎ、コミュニティーを再建し、繁栄することができるだろう。私たちは、忘れ去られた難民や国内避難民の家庭のために今、優先的に資金を準備する必要がある。彼らは自らの家族を養う手段を手に入れられるべきだ。子どもたちは子どもらしく生活を送るべきだ。彼らの尊厳が守られ、世界から覚えられるべきだ」
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ワールド・ビジョン・ジャパン(WVJ)では、難民・避難民の子ども達の支援活動のための「難民支援募金」の支援を受け付けている。募金はURLhttps://www.worldvision.jp/donate/refugee.htmlから。【中田 朗】