教会と社会における「腐敗」に取り組み、「誠実さ」に焦点を当てることが大宣教命令に応答する力強い働きとなる。ローザンヌ運動と世界福音同盟(WEA)が協力して進める「誠実さと腐敗防止についての世界的ネットワーク」(Global Integrityand Anti-Corruption Network=GIN)が世界中の知見を集め、その成果を広く公開している(URLglobalintegritynetwork.org)。6月1日には、各地の専門家や伝道者らが集う国際会議が「何としても誠実を 神の国を建てるために」のテーマで開かれた。9月の第4回ローザンヌ世界宣教会議においても「誠実」のテーマのセッションが連日開かれる予定だ。GINの働きを振り返り、知見を役立てたい。

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GINは「誠実さの価値と実践、および効果的な反腐敗キャンペーンを擁護できるよう神の民に力を与えること」を使命に、ガバナンスや説明責任構造、倫理的な弟子育成、腐敗防止のモデルなどの研究、実践などを進めている。

相次ぐ国家や企業の不正や汚職、教会指導者によるスキャンダルなど、教会と社会における「腐敗」と「誠実さ」の必要性は、2010年の第三回ローザンヌ世界宣教会議において強く認識された。これは「ケープタウン決意表明」でも「キリストの教会を謙遜と誠実と質素へと呼び戻す」という項目に反映されている。

これを受け、GINの働きが始まった。11年にはインド全土で教会の刷新と社会変革を求める「ネヘミヤ作戦」の立ち上げに貢献。論稿・資料の公開、国際カンファレンス開催をしてきた。

近年とりわけ問題となったのは、世界的な伝道者で弁証論者のラヴィ・ザカリアス氏の性的違法行為とその隠ぺいだ。同氏が20年に逝去した後、詳細な調査で明るみに出された。同氏はローザンヌ運動の若手リーダー大会(YLG2016)など各集会で講演してきたこともあり、ローザンヌ運動総裁マイケル・オー氏は「手紙」(21年2月)を公開し、リーダーの在り方の再考を促した。

今年の第4回世界宣教会議に向け一部公開された「大宣教命令の現状報告」(URLlausanne.org/report)でも教会と社会の「腐敗」問題を取り上げている。

「信頼の基盤とは何か」の項目では、GINの3人の共同代表者が連名で論考を発表。「クリスチャンの全生活とイエスの一貫性を示さないことは、福音の信頼性を低下させる」と問題提起した。WEA大使のエフライム・テンデロ氏は、大宣教命令を受けて、「世界中の国々で弟子育成の一環として誠実さと腐敗防止の原則を導入すべき」と強調。ラザロ・フィリ氏(ザンビア・福音大学学長代理)は、「信徒全員が証人となり、ライフスタイルで福音を伝えたい」と勧めた。神学教育の推進者のマンフレッド・コール氏は、「福音の省略と誤用」となる「繁栄の福音」や権威の私物化を戒めた。

「公平と正義とは何か」の項目では、各国の腐敗度をグラフで表示。腐敗が多くの国で「社会規範」となっており、腐敗に抗うクリスチャンの可能性を勧めた。

6月のカンファレンスでは聖書的な誠実さの基盤を確認し、キリスト教団体の倫理的再生、企業家の倫理的誘惑、国家の汚職との戦い、など具体的な証しがあった。【高橋良知】

2024年06月30日号 01面掲載記事)