第四回ローザンヌ世界宣教会議(昨年、9月)の参加者から。

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福音の共同体で実験 ローザンヌ世界宣教会議からの共同の旅⑩

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ホアン・ナバーロさん(IT企業AI技術者)は、会議で示された世界人口の増加と宣教活動の進捗に関するデータに新たな視点を与えられたと話す。「宣教師や聖書発行の数は増加しているにもかかわらず、世界人口の増加がそれを上回っているという事実に、改めて世界宣教の課題の大きさを認識しました」

連日開催された「共同アクション」では、「AIとトランスヒューマニズム」のグループに参加。「最近のAI進捗の話が中心だった。技術に救いを求めるトランスヒューマニズムもAIとの向き合い方の議論につながるはずだったので残念だった。リーダーもそれほどAIに詳しいわけではなく、話されたのは一般ニュースで紹介されている程度のこと。確かにAIに取り組むクリスチャンは少ない。専門的な内容については、参加者の背景は異なるので、プログラムとして共通の定義を確認した上で進められれば良かった」と振り返った。

一方「個別には良い交わりが出来た。隣り合った人と思わぬ共通点があった。あるメディア宣教のリーダーとは、AIをどう宣教に用いるかについて真剣に話しあえた」とも語る。

デジタル宣教に取り組む団体らによる「デジタルディスカバリーセンター」のブースにも注目した。「ビットコインやNFTなど、高度なイノベーションのあるミニストリーや企業がありました。AI国際学会並みのようでした」さらに、「職場」に関する連日の集会にも参加。「信仰をもって働く人々の事例に励まされた。仕事と信仰は別の事ではなく、仕事を通して神の栄光を表せる。私の会社でもクリスチャンの集まりがあるが、現在は月一回ランチをして会議室で祈るくらい。より聖書を読み、互いの成長を励まし合いたいと思わされた。大宣教命令の視点で教会、仕事で協力していきたい」と語った。

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小川真さん(同盟基督・国立キリスト教会牧師)は、聖書的環境コンソーシアム代表として、被造物ケアにかかわるテーマに注目した。「前回の世界宣教会議と比べ、全体での被造物ケアへの強調度は下がった印象だが、気象学者のキャサリン・ヘイホーさんの講演が、科学的で説得力があり、『恐れでなく愛』というメッセージが分かりやすかった」と話す。

「被造物ケアの『共同アクション』では、神学的なベースを作ることが大事と話された。行動だけでは分裂してしまう。教会で意識が広がるために、礼拝を見直すことが勧められた。説教の中で、被造世界への愛や、自然を傷めている現実を語ることができる。賛美にも山々や自然を描写するものがある。森林伐採のために洪水が起きている国がある。木材輸入国である日本は祈りを深める必要があると思わされました」

英国では、環境保護に取り組む「エコチャーチ」が8千ある。韓国でも自国の文化に合わせた「グリーンチャーチ」が広がっている。「日本でも同様なことをできればいい。聖書の観点で自然体験、植樹、栽培などをするネイチャーキャンプなどの取り組みにも興味を持ちました」

キリスト者学生会主事や、所属教団での青年担当などを歴任しており、青年の働きにも注目した。「世界でも62%の若者が18歳で教会を離れるという発表があった。教会が自分とは無関係で、本物ではないと思ってしまうのだという。教会はこの世界、社会に向き合っているだろうか。本物を求める若者たちを前に、自分の歩みを省みさせられた。『上の世代は知恵を、若者は炎を』とも話された。世代間の協働が必要だ。特に上の世代は、信頼して働きを下の世代に委ねたい」(つづく)【高橋良知】

(2025年03月02日号 07面掲載記事)