第四回ローザンヌ世界宣教会議(以下L4、昨年9月開催)の参加者に聞く。前回に続き、宣教団体アジアンアクセス・ジャパン(A2J)全国大会から、篠原基章さん(東京基督教大学学長)の講演、秦真道果さん(JECA・夙川聖書教会副牧師)の報告をへて後半の内容から。

前回
個人主義でなく協働で ローザンヌ世界宣教会議からの共同の旅⑨

L4参加報告で大友幸証(保守バプ・塩釜聖書バプテスト教会牧師)さんは、「日本の福音派は、かつて言葉のみの宣教を重視して、社会活動にかかわらなかった」と自身の体験も交えて振り返った。しかし東日本大震災の支援活動を通して、「人々のために汗をかいて働くと、心を開いてもらえる」と実感した。震災支援活動はNPOフードバンク「いのちのパン」として継承している。

「様々な宣教的な会議でも『包括的宣教』が当たり前のように語られている。L4でも国際的な災害支援ネットワークができるのではないかと期待して参加した。ところが全体集会や分科会に該当する集会はなかった。『大宣教命令の現状報告』の一部の言及(東アジア地域報告)にとどまっていた。これから日本の教会が貢献できる分野なのだろう」と話した。「教会が制度化すると内向きになる。変化が必要だ。派遣する側も自分の資源・財産を分配する覚悟が必要。制度化に満足せず、初代教会をモデルにした宣教を真剣に取り組みたい」

後半は、陣内俊さん(「『声なき者の友』の輪」カタリスト)が司会をし、L4参加者でもある播義也さん(A2Jナショナルディレクター)も加え全体討論。

教会論、社会的責任、協働、日本の可能性などに話題は展開。20代や非教職者からも宣教に参加する方法が質問された。以下それぞれの発言から。

篠原さん:20世紀の宣教論は教会理解を深めていく側面をもっていた。その流れは、『ローザンヌ誓約』にも見られる。教会は日曜礼拝だけではなく、福音の全体をもたらすために召された神の民の共同体であり、福音を共に生きる共同体だ。教会は制度的な側面を持ちやすいため、有機的な側面を意識していくことが重要だと考えている。[協働について]牧師と信徒の協働が今後の教会と宣教の鍵であり、「信徒の神学」を深めていくことは重要である。

播さん:[L4の感想]世界の広がりを目の前で実感した。見解が分かれる問題については成熟した大人の対応が求められると思った。[協働について]教会員の働きをまず知ることが大事だ。礼拝の中でもぜひ分かち合い、感謝して励ましたい。組織の中で活躍する人はいるが、これからは組織をこえてつながるリーダーが必要。[教会論について]教会の伝統も重要だが、刷新も必要。実験をしないと未来はない。実験は失敗の連続だが、その積み重ねで未来がある。

大友さん:[社会的責任について]人は自分を愛してくれる人に耳を傾ける。支援活動で、犠牲を払って奉仕をするとイエス様のことが伝わるというサイクルが何度もあった。[協働について]若い世代が安心して活躍できる場があれば自分が教会の一部だと思える。フードバンクの働きには、改革派からペンテコステ派まで多様な教会が参加している。教理ではなく、横のつながりが期待できる。

秦さん:[日本の可能性について]高齢化や世俗化について、日本は答えを持たいないが、ずっと取り組んできた。[教会論について]スモールグループ、一教会一牧師でいいのか、など様々なあり方があるが、大事なことは、その人が救われ、成長するために何が必要かではないか。人が来ないなら、私の方から出かけていきたい。教会として無くてならないもの以外は、縛られずに様々な方法を試していいと思う。
(つづく)【高橋良知】

2025年02月23日号 07面掲載記事)