12月16日投開票の衆議院総選挙で自民党が単独過半数の294議席を獲得し圧勝、政権を奪還した自公連立与党は憲法改正の発議ができる3分の2を超える議席を確保した。今回の選挙では原発の存廃、TPP参加や消費税増税の是非、景気対策をめぐる経済政策などが争点の前面に出たが、憲法「改正」はこの国のあり方の根本に関わる重要問題だ。日本バプテスト連盟の奥村敏夫理事長は投票日を前に12月7日、「全日本にキリストの光を」と題する異例の呼びかけを連盟加盟の諸教会に発信した。

 連盟定期総会が過去の信仰宣言で、かつて天皇制のもとで遂行された侵略戦争に加担した教会の罪責を明らかにし、教会は主イエス以外のものを断念し、主イエスにのみ従うことを告白したこと、また「憲法9条を守る声明」など、平和憲法を改悪し「戦争のできる国」に向かう動きへの反対を表明してきたことを想起。国会の憲法審査会では「改憲派」が圧倒的多数を占め、着実に「改正」案が準備されつつあるとし、特に危険な次の諸要素を警告した。

 ▽9条(戦争の放棄)改変で「自衛軍」を持ち集団的自衛権の行使が可能になる。▽20条(信教の自由)は「社会的儀礼又は習俗的行為」の範囲内であれば「宗教ではない」と判断され、例えば公立学校で神社の拝礼の作法などが教えられる可能性がある。▽89条(公の財産の支出及び利用の制限)では、私学助成金を受けているミッションスクールでのチャペル礼拝が制限される可能性もある。国家主義的な価値観が教育の現場で押し付けられ、それに反対する宗教は弾圧されていくことになるとして、「私たちは平和の主が示される道(いのちと人権)を選び取る者でありたい」と表明した。(根田祥一)