両親の離婚を阻止しようとするユキ(右)と自分のことのように相談に乗るニナ。写真提供 (C)Yoshi OMORI
両親の離婚を阻止しようとするユキ(右)と自分のことのように相談に乗るニナ。写真提供 (C)Yoshi OMORI

森には時空を超えた神秘さを感じさせられる。木漏れ日のきらめき、すべてを吸収するような静けさ、土と樹木の呼吸のような冷気や霧。そのような言いようのない二人の少女のナイーヴな心の揺らぎを、この映画の森は静かに深く包み込むように存在し表現している。

フランスに住むユキは、日本人の母親とフランス人の父親を持つ9歳の女の子。同い年で大の仲良しのニナは、両親が離婚し母親と一緒に暮らしている女の子。ユキの悩みは、両親が離婚を考えていること。懸命に考えたユキとニナは、「愛の妖精」からの手紙を書きユキのママに郵送する。だが、大人の心には届かない。両親を仲直りさせるためにユキとニナは家出をする。そして、身を隠した別荘の近くの森をユキは一人でさまよい歩きながら、心の中に何かが芽生えてくる。
近年、日本人の国際離婚は急増していると言う。親権をめぐる親たちの子どもの奪い合いも起こっている。先の苦しみよりも今の悲しみの方が大きいと捉える大人たちの心を、子どものナーヴな心はしなやかに健気に見つめ、感じ取っている。ユキが森の中を彷徨いながら得たものを、いま一度大人たちも森の中を彷徨い、心の耳をそばだてることで、聴こうとしなかった心の声が聴こえてくるのかもしれない。 【遠山清一】
1月23日(土)より恵比寿ガーデンシネマほか全国ロードショー。諏訪敦彦、イポリット・ジラルド共同監督作品。配給:ビターズエンド。
公式サイトはこちら→http://www.bitters.co.jp/yukinina/