(C)TETSUO THE BULLET MAN GROUP 2009
(C)TETSUO THE BULLET MAN GROUP 2009

人間の身体を金属細胞が浸食していくというモチーフを、新たなストーリーと実験的映像で作り上げていく「鉄男」シリーズの第3作。重金属を打ちたたく爆音とメタルが擦れるような高周波音の絶叫。館内の音響レベルもめいっぱいに上げるよう指示されているという、まさに’爆圧体感映画’。

今作品では、アンドロイド(人造人間)の研究をしていた父ステファンと母の美津枝から生まれたアンソニーが主人公。ある日突然、彼の息子が殺害されることから物語がはじまる。理不尽な息子の死に接し、怒りと苦痛に取り乱す妻・ゆり子。妻を冷静になだめるアンソニーだが、内面の葛藤に身体が徐々に変調していく。アンソニーの父が、息子を殺害した犯人に殺され、ゆり子の命も危機に瀕する時、その怒りは激高し、身体は鋼鉄の銃器へと変貌していく。

聖書には「神は人をご自身のかたちとして創造された。神のかたちとして彼を創造し、男と女とに彼らを創造された」(創世記1:27)と、人間存在の根源が語られている。怒りを起因として鋼鉄の塊へとトランスフォームし、都市をも破壊できるパワーを持つ銃器に化していくアンソニーの身体。だが、その内面には、トランスフォームのエネルギーとされる憎しみや怒りに抗う、確かな人間の心と魂の熱き鼓動が脈打っている。

アンソニーの心に希望と愛の深さをつなぎ続けるゆり子と母・美津枝の存在。ラストのシーンに、’都会’にひそむ鋼鉄の呻きと暴力的な鋭い叫びような圧迫感にも克己する愛の光を感じさせられる。 【遠山清一】

本晋也監督作品。配給:アスミック・エース。5月22日(土)よりシネマライズほか全国ロードショー。
公式サイト http://tetsuo-project.jp