塩谷達也著、ヤマハミュージックメディア刊、1,785円税込

巻頭にイラストと「ゴスペルって、いったい何だろう」の詩が数葉綴られるおしゃれなアプローチ。その入口の扉を開くと「ゴスペルはGOOD NEWS!」と、問いかけた答えを一言で表現する小気味よさ。そして「ゴスペルはGOOD NEWSです。GOOD NEWSを自分だけのものにしておいたらいけません。GOOD NEWSはみんなに伝えたい。そんな気持ちを込めました。そしてゴスペルは、神様へのラブソングであり、神様からのラブソングです」とのメッセージに、シンガー・ソングライターで音楽プロデューサーとしても活躍する著者の暖かさが伝わり読み手の気持ちを解きほぐす。

米国ニュージャージーにある黒人教会での礼拝ルポから始まる本編。黒沢薫(ゴルペラーズ)、VERBAL(ヒップホップ)との対談、ラニー・ラッカー(クワイア・ディレクター)、JAY公山(マス・クワイア主宰者)、アーサー・ホーランド(伝道者)らのゴスペル論。それらの合間に挿入されているゴスペル・ミュージックの歴史と人物伝、名盤・名作や日本のアーティスト紹介などがテンポよくまとめられている。専門的な表現や用語には脚注や解説ページが小まめに記載されていて、読み手の関心度にも心配りが感じられて愉しい。

コーヒーなど飲みながら、著者と共にアーティととの談話に聴き入り、ライフタイルとしてのゴスペルにまで関心をそそられるひと時がもてる。「ゴスペル」という表現が多様に用いられ、時には混乱を生じかねない今日、ゴスペルの多様さと深さを一冊の書作の世界に凝縮した本書が、新版としてリニューアルされたことを喜びたい。   【遠山清一】