映画「ぼくと魔法の言葉たち」--自閉症の子が言葉を取り戻させた家族の愛とアートの力
2月27日に授賞式が開催された第89回アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞ノミネート作品。2歳のときに突然言葉を失ってしまい自閉症の障害を背負ったオーウェンが、ディズニーのアニメ映画の物語と家族の愛で言葉を取り戻し、大学を卒業して念願の自立生活へ踏み出す。自閉症というと、人格性までも特別な違いがあるようなイメージをもつかもしれない。だが、言葉を取り戻したオーウェンの回復の記録と彼の心情を聞けば、私たちと変わらない悩み、寂しさ悲しさを乗り越えようとし、望みをもって前に向かっていることを教えられる。同じ感性をもち、こころに物語をもって人生に夢を描いて生きていく。障害は何かの欠落ではなく、個性の違いのようなものと思う。
【あらすじ】
青年の名前はオーウェン・サスカインド。ジャーナリストの父親ロンと母親コーネリア、2歳年上の兄ウォルトの4人家族。3歳になるころ、自閉症で言葉を失ったオーウェンをコーネリアは「強く抱きしめました。“何が起きても愛し抜き守ってみせる”」と、そのときのショックと決意を思い起こす。ロンは、オーウェンが6歳のころ、もしかしたら毎日ディズニーアニメを見ながらセリフをしゃべっているのではないかと気づかされた。「リトル・マーメイド」のあるシーンで、ロンがセリフで話しかけると、オーウェンはセリフで応答した。ロンは、「我々は気づいた。“ディズニー映画が息子を変えるかも”と」。家族の会話がディズニーアニメを介して戻ってきた。
オーウェンは、ディズニーアニメの物語の世界と現実の生活との大きなギャップを経験する。オーウェンは、主宰しているディズニークラブで出会ったエミリーに恋をした。ディズニーアニメの物語では、恋する二人がキスするハッピーエンドで終わる。オーウェンが知らないそれから先の結婚と社会生活。オーウェンは、アパートを借りて自立へと歩み始める。その近くにエミリーも部屋を借りてやはり自立への一歩を踏み出す。大喜びするオーウェンは、感情過多なほどストレートに愛情を表現してしまい、エミリーは引いていく。オーウェンは失恋を受け止められるだろうか…。
【みどころ・エピソード】
ウィリアムズ監督は、オーウェンがスケッチブックに描き続けてきたストーリーを製作スタッフらといっしょにアニメ動画に作り上げ本作に挿入している。オーウェンが創作したストーリーのタイトルは『迷子のわき役たちの国』。オーウェン自身、この物語について「脇役は誰ひとり置いていかない」と言っている。その言葉どおり、ディズニーアニメのアートが持つ潜在的な能力を引き出すこと。そして、家族の絆とあきらめない愛がオーウェンの心を癒し自立心を奮い起こしていることユーモラスで感動の日々をとおして教えてくれる。 【遠山清一】
監督:ロジャー・ロス・ウィリアムズ 2016年/アメリカ/英語/91分/映倫:G/原題:Life, Animated 配給:トランスフォーマー 2017年4月8日(土)よりシネスイッチ銀座ほか全国ロードショー。
公式サイト http://www.transformer.co.jp/m/bokutomahou/
Facebook https://www.facebook.com/bokutomahou/
*AWARD*
2017年:第89回アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞ノミネート作品。シネマ・アイ・オナーズ賞アンフォゲッタブル賞受賞。アニー賞特別業績賞受賞 2016年:サンダンス映画祭監督賞受賞。ラテライド・マウンテン映画祭観客賞受賞。バークシャー国際映画祭観客賞、その他多数受賞作品。